マイニングの種類について
マイニングに関しては、マイニングとはで解説しました。
簡単に復習すると「暗号パズルに勝った人のブロックが正当化され、褒章金ももらえる」という仕組みがあり、その暗号パズルを解くことを「山を掘って金を見つける」行為に似ていることからマイニングと呼ばれてます。
この暗号パズルというのは、実際には所定の条件を満たす「ハッシュ値」を見つけることでしたね。
実際にはブロックヘッダ80バイトに対してハッシュ関数SHA256を2回計算しているだけのシンプルな計算です。
しかしハッシュ値の性質から、所定の値を見つけるのに運よく100回で見つかることもあるし、40億回以上計算することもあるのでマイナー同士で激しい競争が行われるわけです。
マイナーのモチベーション
マイニングに成功して作成したブロックが承認されるといくらぐらいもらえるのでしょうか?
ビットコインの場合、2021年11月の750万円/1BTCから暴落を続け、2022年2月時点で約400万円/1BTCとなってます。
マイナーへの報酬はこの間(2020年~2024年)6.25BTCなので2500万円~4688万円ということになります。
実際にはこの値に手数料(ガス代)が加算されます。
ブロックの生成は平均約10分に調整されてますので、結果的に10分ごとに上記の金額が支払われているというわけです。
1回の報酬が平均3500万円とすると、1日に支払われる報酬は3500X144回/日で、なんと50億4000万円ということになります。
これによってマイナーは一人で行うソロマイナーからグループや組織を作って膨大な投資をして演算能力を向上させて報酬を獲得しようとするわけですね。
2009年に初めてブロックが生成されてからしばらくは自分のPCで計算できたと聞いてますが、その後、汎用チップであるGPU(Graphics Processing Unit)を使用し、データセンターを組み上げ、ハッシュ値を高速に計算するための専用チップASIC(application specific integrated circuit)を開発し、更にはクラウドコンピュータを使うなどの工夫がなされてます。
一般論としてASICはGPUに比べチップ単価は安価ですが、マスク代(※)などの初期投資が数千万円~1億円かかるといわれてますがそれでもこの競争に勝てば元は取れるということですね。
(※)マスク代
半導体をシリコンウエハーに焼き付けるためのパターン原版の作成費用
これらのマイナーたちの発出演算能力をハッシュレートと呼びますがBlockchain.comのサイトで2022年2月24日時点のチャートを以下に示します。
2021年11日からビットコインは暴落しているにも拘らず、2021年7月からうなぎ上りに演算能力が向上しているのが分かりますね。
今やマイナーが使用するコンピュータパワーはGoogleが保有する全コンピュータを上回っていると言われてます。
マイニング手法の種類
マイニングには大きく3つの種類があり、それぞれ簡単に特徴を説明したいと思います。
ソロマイニング
ソロマイニングとは、単独でマイニングをする方法です。
ソロで行うのは難易度もリスクも高いですが、その代わり報酬は全て自分が受け取れます。他の手法のように仲介料などの手数料もかかりません。
良い手法のように見えますが、それは10年以上前の話で、少なくとも初心者には向いてません。
その理由は2つあります。
- 初期投資、ランニングコストが高い
- コンピュータに関する高度な知識が必要となる
❶ですが、高速に演算する必要があるため、高額なGPUボードを何百台も用意する必要があります。
まともに戦うには専用チップ(ASIC)が必要となりますが、これには数千万円~1億円程度の初期投資が必要となります。
また、マイニングをする際の電気代も忘れてはなりません。日本でマイニングする場合、電気代が安い海外の国と比べると、コストがはるかに高くつきます。
❷競争に勝つためには演算能力を向上させるための知識をはじめ、最終的にはデータセンターを立ち上げる時のような仮想環境を構築し運営する知識等が必要となります。
工場を所有し、高性能のコンピューターを多数そろえてマイニングを進める企業に、個人が勝つのは難しいのが現状です
プールマイニング
マイニングの種類の2つ目は、プールマイニングです。
これはチーム(複数人)でマイニングをして、仕事量に合わせて報酬が得られる方法です。
自分が失敗してもチームメンバーの誰かが成功すればそれぞれ個人の仕事量に合わせて報酬を受け取ることが可能です。
プールマイニングを行うには一般的に以下のものを用意する必要があります。
- GPUやASICなどを搭載したマイニングマシン
- ウォレット
- マイニングソフト
マイニングマシンをどうするかはチームメンバーと話し合う必要がありますが、レンタルサービスもあることから、ソロマイニングより手軽に始めることが可能です。
クラウドマイニング
クラウドマイニングとは自らマイニングは行わず、マイニングをする企業へ投資をして、企業がマイニングから得た報酬の一部を得る手法です。
この場合、
- 投資者を募っているマイナー(企業)を探し、
- 契約をしたうえで、
- 可能な範囲で投資を行い、
- そのマイナー(企業)がマイニングに成功した場合、その報酬から配当をもらう、
という形式です。
そのため、マイニングをする機材やパソコンの知識などは必要なく、演算装置を構築するための大規模投資も不要です。
しかし、これは一般的な投資案件と同じなので、マイニングをする企業がダミー会社で資金の持ち逃げをされたり、会社自体が倒産したりすること等のリスクがあるため、契約内容の確認や与信調査を十分に行うことが必要となります。
以上
ケニー狩野(中小企業診断士、PMP、ITコーディネータ)
キヤノン(株)でアーキテクト、プロマネとして多数のプロジェクトをリード。
現在、株式会社ベーネテック代表、株式会社アープ取締役、一般社団法人Society 5.0振興協会評議員ブロックチェーン導入評価委員長。
これまでの知見を活かしブロックチェーンや人工知能技術の推進に従事。趣味はダイビングと囲碁。
2018年「リアル・イノベーション・マインド」を出版。