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RAGシステム評価の最新動向と成功事例

RAGシステム評価の最新動向と成功事例

RAGシステムの評価手法とは、検索精度の向上や応答時間の短縮、ユーザー満足度の改善といった指標を用いて、業務効率やコスト削減を目的としています。 このブログでは、RAGの導入による具体的な効果を定量的に測定する方法を解説しています。これらの評価手法を活用することで、AI技術の有効性を実証し、業務プロセスの最適化や競争力の向上に貢献することが可能です。 効果的な評価が、成功するAI導入の鍵を握っています。

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RAGシステムの定量的評価方法

RAGシステムの活用効果を定量的に評価することは、その導入価値を明確に示すために非常に重要です。RAGにとって最も重要な評価対象は検索精度の向上であり、構造化データの整備とLLMからの応答性能ですが、その詳細は別稿に譲るとして、ここでは評価指標全般とその測定方法に関して概観します。

情報検索の精度向上

RAGシステムの核心部分である情報検索の精度を評価するために、適合率(Precision)、再現率(Recall)、そしてこれらを統合したF1スコアを用います。 適合率は検索結果の正確性を、再現率は関連情報の網羅性を示します。

適合率(Precision): 検索結果として返された項目のうち、実際に関連性のある項目の割合。正確性を示す指標で、不要な情報をどれだけ除外できているかを表します。 再現率(Recall): 関連性のある項目のうち、実際に検索結果として返された項目の割合。網羅性を示す指標で、必要な情報をどれだけ漏れなく取得できているかを表します。

F1スコアはこれらのバランスを1つの数値で表現します(後述のメモを参照)。 例えば、ピッツバーグとカーネギーメロン大学(CMU)に関する特定ドメインの質問応答のためのRAG(Retrieval-Augmented Generation)システムを設計し、以下の結果を報告しています。

  • 性能向上: RAGシステムは、非RAGベースラインと比較して大幅に性能が向上しました。
  • 複雑なクエリへの効果: 特に時間に敏感な複雑なクエリにおいて、RAGシステムの効果が顕著でした。
  • 評価指標の改善: F1スコアが5.45%から42.21%に改善され、リコール(再現率)が56.18%に達しました。
  • 最適な構成: 最も効果的な構成は、RAGにドキュメント再ランカー、フューショット学習、アンサンブル検索を組み合わせたもので、F1スコア42.21%、Exact Match(EM)20.25%、適合率47.29%、再現率56.18%を達成しました。

この研究は、RAGシステムが回答の精度と関連性を向上させる可能性を示すと同時に、文書検索とモデルトレーニングにおけるさらなる最適化の余地も明らかにしています。 ●出典:ピッツバーグとカーネギーメロン大学の取組みは、arXivに掲載されている論文「Retrieval-Augmented Generation for Domain-Specific Question Answering」をご参照ください。

F1スコアは、適合率(Precision)と再現率(Recall)の調和平均であり、情報検索システムの総合的な性能を評価するための重要な指標です。 F1スコアは0から1の間の値をとり、1に近いほど高性能であることを示します。 F1スコアの計算式は以下の通りです: F1 = 2 * (Precision * Recall) / (Precision + Recall) F1スコアは、適合率と再現率のバランスを取るため、どちらか一方に偏ったシステムよりも、両方がバランス良く高いシステムを高く評価します。 例えば、技術文書検索システムでF1スコアが5.45%から42.21%に改善したということは、システムが関連文書をより正確に、かつ漏れなく検索できるようになったことを意味します。 この改善により、ユーザーはより適切な情報を効率的に得られるようになり、業務効率の向上や意思決定の質の改善につながります。

応答時間の短縮

RAGシステムの導入により、情報検索と回答生成のプロセスが大幅に効率化されることが期待されます。この効果を測定するために、平均応答時間と90パーセンタイル応答時間という2つの指標を用います。 平均応答時間はシステム全体の一般的なパフォーマンスを示し、90パーセンタイル応答時間は極端に遅い応答を把握するのに役立ちます。 例えば、応答時間の短縮に関しては以下のような取り組みがされてます。

90パーセンタイル応答時間とは、全ての応答時間を短い順に並べた時、上位10%に位置する応答時間のことを指します。つまり、90%のユーザーがこの時間以内に応答を受け取っていることを意味します。 この指標は、システムの安定性や一貫性を評価する上で重要です。 90パーセンタイル応答時間を使用する利点は、極端に遅い応答(外れ値)の影響を受けにくく、ユーザーの大多数が経験する実際の応答時間をより正確に反映できることです。 例えば、90パーセンタイル応答時間が2秒であれば、90%のユーザーが2秒以内に応答を受け取っていることを意味します。 平均応答時間と90パーセンタイル応答時間を併用することで、システムの全体的なパフォーマンスと、極端に遅い応答の発生頻度を把握することができます。

ユーザー満足度の改善

RAGシステムの最終的な目標は、ユーザーの満足度を高めることです。 この効果を測定するために、Net Promoter Score (NPS®)顧客満足度調査スコアなどの指標を活用します。 NPS®は、システムを他者に推奨する可能性を数値化したもので、ユーザーのロイヤリティを示す指標として広く使用されています。 例えば、チューリッヒグループは、NPS®を主要な業績評価指標として採用し、顧客フィードバックの分析と改善施策の実施により、ある国でNPS®が20%向上しました。 また、ロイヤリティの高い顧客が、そうでない顧客に比べて27%高い利益をもたらし、12ヶ月以内の解約率が1/5になったことが報告されています。 ●出典: クリエイティブサーベイ URL: https://jp.creativesurvey.com/blog/posts/customer-loyalty-201908/

Net Promoter Score (NPS®)は、顧客ロイヤルティを測定するための指標です。以下にNPS®の主なポイントをご紹介します。 NPS®は、顧客に対して「この商品やサービスを友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」という質問を行い、0〜10点の11段階で評価してもらいます。

顧客の分類 回答に基づいて、顧客は以下の3つのグループに分類されます。

  • 推奨者 (9〜10点): 商品やサービスに強い愛着を持ち、積極的に他者に推奨する可能性が高い顧客
  • 中立者 (7〜8点): 満足はしているが、特に熱心ではない顧客
  • 批判者 (0〜6点): 不満を持っており、否定的な口コミを広める可能性がある顧客

NPS®の計算方法 NPS®は以下の式で計算されます。 NPS® = 推奨者の割合(%) – 批判者の割合(%) 結果は-100〜+100の範囲で表されます。

NPS®の特徴と利点

●業績との相関性: NPS®は企業の収益成長率と強い相関関係があるとされています。 ●シンプルで理解しやすい: 単一の質問で顧客ロイヤルティを測定できるため、導入が容易です。 ●比較可能性: 業界内や競合他社との比較が可能です。 ●改善の指針: 顧客の声を基に、商品やサービスの改善点を特定できます。

注意点

●業界によってスコア平均が異なるため絶対値よりも相対的な比較が重要です。 ●日本では文化的な要因により、スコアが低くなる傾向があります。 ●NPS®以外の指標と組み合わせて総合的に評価することが望ましいです。 NPS®は、顧客の声を数値化し、企業の成長につなげるための有効なツールとして、多くの企業で活用されています。

業務効率の向上

RAG(Retrieval-Augmented Generation)システムの導入は、企業の業務効率向上に大きく貢献することが実証されています。 以下に、具体的な事例とその効果を示します。

タスク完了時間の短縮

PingCAPの報告によると、ある製造業の企業でRAGシステムを導入した結果、顧客問い合わせ処理時間が大幅に短縮されました。商品情報の検索精度が75%から92%に向上し、これにより回答時間が短縮されました(PingCAP, 2024)。

処理件数の増加

同じくPingCAPの事例では、RAGシステム導入により1日あたりの顧客問い合わせ処理件数が平均100件から150件に増加し、50%の生産性向上が達成されました(PingCAP, 2024)。

総合的な効果

Coditudeの事例では、RAGシステム導入後、年間収益が20%増加し、約500万ドルの増収を達成しました。これにより、企業の競争力が強化されました(Coditude, 2024)。 出典: ❶PingCAP, “How RAG and Fine-Tuning Enhance LLM Performance: Case Studies“, ❷Coditude, “Retrieval Augmented Generation (RAG) Use Cases

エラー率低減の効果

RAG(Retrieval-Augmented Generation)システムの導入は、業務効率を向上させるだけでなく、エラー率の低減にも大きく寄与します。 Galileo AIのブログでは、エラー率がRAGシステム評価の重要指標であり、情報精度の向上が期待されると述べられています(Galileo AI, 2024)。 また、DataNorth AIの記事では、RAGが検索された最新情報を基に応答を生成するため、エラー率や古い情報のリスクを大幅に削減できることが強調されています(DataNorth AI, 2024)。 さらに、gravity9の事例研究では、RAG導入によりエラー率の低減と顧客サービスの改善が同時に実現したと報告されています(gravity9, 2024)。 これらのデータは、RAGが信頼性の高い業務環境を構築する有効な手段であることを示しています。 出典: ❶Galileo AI, 2024 ”Top Metrics to Monitor and Improve RAG Performance” ❷DataNorth AI, 2024 “What is RAG?” ❸gravity9 2024., “RAG Case Study

コスト削減効果

RAGの導入は、業務効率化とともに経済的な効果をもたらします。これを測定するためには、人件費削減額と運用コストという2つの指標が重要です。これらの指標は、RAG導入の投資対効果(ROI)を直接的に示すものです。 MyScaleの記事によれば、大手eコマースプラットフォームではRAG推薦システムの導入により計算コストが30%削減されました(MyScale, 2024)。 さらに、Ambilioはプロンプト圧縮技術を活用することで、RAGの運用コストを最大90%削減できる可能性があると報告しています(Ambilio, 2024)。 また、Association of Data Scientistsの事例では、RAGを顧客サポート業務に導入した企業が運用コストを30%削減する成果を上げました(Association of Data Scientists, 2024)。 これらの事例は、RAGの導入がコスト削減と高いROIを実現する有効な手段であることを示しています。 出典: ❶MyScale, “RAG Recommendation Systems Cost Efficiency” ❷Ambilio, “Using RAG for Cost Reduction in Generative AI Applications” ❸Association of Data Scientists, “Why Do Enterprises Love RAG?”

知識活用度

RAG(Retrieval-Augmented Generation)システムは、組織内の知識を効果的に活用する重要なツールです。その効果測定には、知識ベースの利用頻度とユニークユーザー数が主な指標として用いられます。 具体例として、PingCAPの報告では、製造業の企業がRAGを1ヶ月間試用した結果、商品情報の検索精度が75%から92%に向上(23%増加)、商品知識テストスコアが68点から78点に上昇(15%向上)、顧客問い合わせ処理件数が100件から150件に増加(50%増加)しました(PingCAP, 2024)。 また、Coditudeによれば、ある小売技術企業ではRAG導入によりピーク時に1日250,000件のクエリを処理可能となり、データ処理量が300%増加しました(Coditude, 2024)。 これらの事例は、RAGが知識活用を通じて業務効率や顧客満足度の向上に大きく寄与していることを示しています。 出典: ❶PingCAP, “How RAG and Fine-Tuning Enhance LLM Performance: Case Studies” ❷Coditude, “Retrieval Augmented Generation (RAG) Use Cases

事例に基づく精度の検証

RAGシステムの精度を客観的かつ実践的に検証するためには、実際の使用環境に即した事例ベースのアプローチが効果的です。以下では、主要な検証方法とその具体的な実施手順について解説します。  

ゴールデンセットの作成と活用

ゴールデンセットとは、専門家が監修した高品質な質問と回答のセットを指します。このセットを用いてRAGシステムの精度を評価することで、システムの性能を客観的に測定することができます。 NVIDIAの開発者ブログによると、Infosysが実施したスマートNOC(Network Operations Center)におけるRAGシステムの評価では、NeMo Retrieverの埋め込みとリランキングを使用することで、LLMの精度が85%から92%に向上したと報告されています。これは、ベースモデルと比較して22%の絶対的な改善を示しています。 出典: NVIDIA Developer Blog, “Transforming Telco Network Operations Centers with NVIDIA NeMo Retriever and NVIDIA NIM

ブラインドテストの実施

ブラインドテストは、人間のエキスパートとRAGシステムの回答を並べて提示し、第三者に評価してもらう方法です。 このアプローチにより、システムの回答が人間と区別つかないレベルに達しているかを客観的に検証することができます。 例えば、ある企業の法務相談システムでは、弁護士とRAGシステムの回答を並べて提示し、他の法務専門家に評価してもらいました。 その結果、RAGシステムの回答が人間の弁護士の回答と同等以上の評価を受けた割合が68%に達し、特に定型的な法律相談においては人間を上回る評価が得られました。

RAG導入効果を実際のユースケースで検証

RAGシステムは、業務プロセスの効率化や顧客満足度の向上に大きく貢献しています。Qatalogの記事では、ある企業の営業部門で1ヶ月間RAGシステムを試用した結果、以下の具体的な成果が報告されています。 商品情報の検索精度では、100件の典型的な顧客質問に対し、RAGシステムの回答を商品専門家が評価した結果、正確性が75%から92%に向上しました。この改善は、顧客が必要な情報を迅速かつ正確に入手できるようになり、信頼性の高い情報提供を可能にしました。 顧客対応の質では、営業担当者50名に商品知識テストを実施したところ、平均スコアが68点から78点に改善。これにより、営業担当者は顧客からの専門的な質問に的確に応えられるようになり、対応力が大幅に向上しました。 顧客満足度については、RAG導入後に実施した500名のアンケート調査で、5段階評価の満足度スコアが3.5から4.2へと向上。顧客はより満足度の高いサービスを体験し、企業への信頼感が強化されました。 これらの結果は、RAGが業務効率化と顧客体験向上を実現する強力なツールであることを示しています。 出典: Qatalog, “RAG Use Cases

エラー分析の実施

RAGシステムの継続的な改善のためには、システムが生成した不正確または不適切な回答を詳細に分析することが重要です。 例えば、ある企業の技術サポートシステムでは、発生した誤回答を詳細に分析した結果、製品の最新アップデートに関する情報が知識ベースに反映されていないケースが多いことが判明しました。 この分析に基づいて知識ベースの更新プロセスを改善した結果、エラー率が30%減少しました。

 時系列での精度追跡

RAGシステムの性能は、時間の経過とともに変化する可能性があります。この変化を把握し、適切な対応を取るためには、定期的な精度評価が不可欠です。 例えば、ある企業では四半期ごとに標準的な100問のテストを実施し、回答精度の推移を監視しました。その結果、1年間で回答精度が5%向上し、特に新製品に関する質問の正答率が20%改善されました。

これまでの各項目を簡単な表にしてみました。

表. 各検証方法のメリットとデメリット比較
検証方法 メリット デメリット
ゴールデンセット 客観的な基準による評価が可能 作成に時間とコストがかかる
ブラインドテスト 人間との直接比較が可能 評価者のバイアスが影響する可能性がある
実際のユースケース 実際の業務環境での効果を測定可能 外部要因の影響を受けやすい
エラー分析 具体的な改善点を特定できる 分析に時間がかかる
時系列での精度追跡 長期的な性能変化を把握できる 定期的な実施が必要で手間がかかる

 

RAGシステム評価のステップバイステップガイドとは RAGシステムの効果的な評価と継続的な改善を実現するための体系的なアプローチです。 このガイドは、評価の目的設定から結果の報告まで、各段階で必要な行動を明確に示し、組織がRAGシステムの性能を客観的に測定し、最適化するための道筋を提供します。
  1. 評価目的の明確化:何を測定したいのか、具体的な目標を設定する
  2. 評価指標の選定:目的に合わせた適切な指標を選ぶ
  3. ベースライン測定:現状のパフォーマンスを測定する
  4. RAGシステムの導入:選定したユースケースでシステムを導入する
  5. 定期的な測定:選定した指標を定期的に測定する
  6. 結果分析:測定結果を分析し、改善点を特定する
  7. システム改善:分析結果に基づいてシステムを改善する
  8. 再測定:改善後のパフォーマンスを再度測定する
  9. 報告:結果をステークホルダーに報告し、次のアクションを決定する
このガイドラインに従うことで、組織はRAGシステムの導入効果を客観的に評価し、継続的な改善サイクルを確立することができます。 各ステップは柔軟に調整可能で、組織の特性や目標に合わせてカスタマイズすることが重要です。

顧客からの評価と反応

RAGシステムの真の価値を理解し、継続的な改善を行うためには、実際のユーザーである顧客からの評価と反応を適切に収集・分析することが極めて重要です。以下では、効果的な顧客フィードバック収集方法とその活用について解説します。  

定期的なユーザーサーベイの実施

ユーザーサーベイは、RAGシステムに対する顧客の満足度や意見を直接的に収集する効果的な方法です。 例えば、ある企業では四半期ごとにオンラインアンケートを実施し、ユーザー満足度の推移を追跡しました。その結果、1年間でユーザー満足度が15ポイント上昇し、特にシステムの応答速度に対する評価が30%改善されました。

インタビュー調査の実施

インタビュー調査は、ユーザーの詳細な意見や洞察を得るための有効な手段です。 例えば、ある企業では各部門のキーユーザーに対して半構造化インタビューを実施し、RAGシステムの業務への影響を評価しました。その結果、日常業務の効率が平均20%向上し、特に新人社員の知識習得速度が2倍に向上したことが明らかになりました。

使用状況の詳細分析

RAGシステムの実際の使用状況を詳細に分析することで、ユーザーの行動パターンや、システムの強み・弱みを客観的に把握することができます。 例えば、ある企業ではダッシュボード機能を通じて、部門別・役職別の利用状況を可視化し、システム採用の広がりを確認しました。その結果、導入から6ヶ月で全社員の80%がシステムを定期的に利用するようになり、特に営業部門での利用頻度が3倍に増加したことが分かりました。

フィードバックループの構築

リアルタイムでユーザーの評価を収集するために、システム内に簡単なフィードバック機能を組み込むことが効果的です。 例えば、ある企業のナレッジベースシステムでは、各回答の下に「役立った」「役立たなかった」ボタンを設置しました。この機能により、1ヶ月あたり5000件以上のフィードバックが集まり、システムの改善サイクルが2週間に短縮されました。

ソーシャルリスニングの活用

社内SNSや掲示板などの非公式なコミュニケーションチャネルでのRAGシステムに関する言及を分析することで、公式のフィードバック以外の貴重な意見や評価を収集することができます。 例えば、ある企業では社内チャットツールでのRAGシステムに関する言及を分析しました。その結果、システムの非公式な使用方法や、想定外の有用性が発見され、これらの知見を基にシステムの新機能開発につながりました。

以上の評価方法に関してメリット、デメリットをまとめてみました。

           表2.各評価方法のメリットとデメリット比較
評価方法 メリット デメリット
ユーザーサーベイ 大量のデータを効率的に収集可能 回答の深さに限界がある
インタビュー調査 詳細な意見や洞察を得られる 時間とコストがかかる
使用状況分析 客観的なデータに基づく評価が可能 ユーザーの意図や感情が分からない
フィードバックループ リアルタイムの評価収集が可能 詳細な意見を得るのが難しい
ソーシャルリスニング 非公式な意見や使用方法を発見できる データの解釈に専門性が必要

まとめ

RAGシステムの評価は、その導入価値を明確化し、継続的な改善を実現するために不可欠です。 本記事で紹介した主要な評価方法には、定量的指標(Precision、Recall、F1スコアなど)の活用、事例に基づく精度検証、顧客からのフィードバック収集があります。 これらを組み合わせることで、システムの多面的な評価が可能となります。 評価プロセスは、目的設定から結果分析まで体系的に行うことが重要です。また、各評価方法のメリット・デメリットを理解し、ユースケースに応じて適切に選択することが成功の鍵となります。 RAGシステムの効果的な評価を通じて、業務効率の向上、顧客満足度の改善、コスト削減など、具体的なビジネス価値を創出することができます。継続的な評価と改善のサイクルを確立することで、組織の競争力強化につながります。

以上

筆者プロフィールケニー狩野(中小企業診断士、PMP、ITコーディネータ) キヤノン(株)でアーキテクト、プロマネとして多数のプロジェクトをリード。 現在、株式会社ベーネテック代表、株式会社アープ取締役、一般社団法人Society 5.0振興協会評議員ブロックチェーン導入評価委員長。 これまでの知見を活かしブロックチェーンや人工知能技術の推進に従事。趣味はダイビングと囲碁。 2018年「リアル・イノベーション・マインド」を出版。