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イノベーション

新商品開発の勧め

新商品開発の勧め

新商品開発を行う場合、よく聞くのが「商品開発をしたいがなかなかいいアイデアが出ない」、あるいは「アイデアはいいのだがお客様がお金を出してまで購入してくれるか自信がない」、という悩みではないでしょうか。

筆者は電機メーカーで約30年間、商品開発をやってきましたが、確かに当初はこのような悩みや迷いがありました。
そこでそれを解決するために商品化プロセス、マーケティング手法、そのための分析用テンプレート等を導入し運用することにより、このような迷いが大幅に軽減されることを経験しております。

今回はそのような体験を踏まえ、誰でも新商品の検討ができるよう、そのノウハウのさわりの部分をわかりやすく説明していきます。

新商品開発プロセスにも成熟度モデルの適用を

上記で説明したノウハウはあくまで「ガイド役」であり、本筋の「目的はなんなのか」、「行先はどこなのか」を決めるのはやはりそれにかかわるメンバー自身ということになります。
そしてそれを検討する際には「暗中模索」中さ迷い歩いていくことになりますので、まさに「生みの苦しみ」のさなかに身を置くことになりますが、反面それがある意味「楽しみ」でもあり、ワクワクしながら進められるという一面もあるのです。

新商品を生み出すとなると複数のステークホルダーが関わるため、プロジェクトの形式をとることが多くなります。 従ってプロセスや手法という「ガイド役」に導かれながら「目的や行先」を試行錯誤しながら生み出していくという習慣づくり、仕掛けづくりが必要となります。

そしてそれは組織の成熟度で評価されるようなもので、そういう意味ではソフトウエア開発プロセスを成熟度から判定する能力成熟度モデルCMMI( Capability Maturity Model Integration)の中に新商品開発能力の成熟度として測定されてもいいのではないでしょうか? (個人的にはそのような指標は聞いたことがありませんが、笑)

そのような習慣作り、仕掛けづくりを確立していくには少々時間はかかりますが、そこは根気強く訓練を積んでいくという発想が必要ですし、また売れる商品を生み出す王道だといっていいでしょう。

新商品開発に必須の「目的や行先」

それでは新商品開発における「目的や行先」とは何のことでしょうか?
それは一言でいうと「どんな人が」「何をするために」を明確にすることではないでしょうか?
つまりターゲットユーザーを明確にして、そのユーザーが持っている潜在的ニーズを引出すことです。

アイデア出しのブレーンストミング(以下、ブレスト)ではニーズ思考でもシーズ思考でも構いませんが、商品コンセプトを決める段階ではそれとは打って変わって「主語を常に顧客にし」、「その顧客が何のためにそれを買うのかという姿」を明確に想像できることが重要となります。

新商品の開発7段階

1,新製品のアイデア出し

アイデア出しの時にはニーズからでもシーズからでも構わないので、自由な発想
でブレストなどを行なう。
ブレストのポイントは「上下関係を持ち込まない」「批判厳禁」「アイデアの相乗り歓迎」ですね。
また優れたアイデア、売れる商品のためのアイデアが出るのは「千三つ」、つまり1000個のうち3つほどしかないので、この段階ではなるべく多くのアイデアを生み出しておくことも忘れてはならないでしょう。

イノベーションは「新機軸」とか「新結合」と言われています。要は既存の商品を異なる視点でとらえたり、全く異なる分野のものを結合したりすることです。
新商品の開発でもこの考え方は応用できるのではないでしょうか?

 

2,スクリーニング

ある程度アイデアが出尽くした段階で、それをスクリーニング、すなわち振るい
にかけていくことになります。
その際によく使われるのが3Cや4Pといわれる古典的なマーケティング手法ですが、スクリーニングするために有用なツールでもあるので簡単に紹介します。

3Cとは

3Cとは、company(自社),competitor(競合),consumer(顧客)のことです。
発案者は1982年マッキンゼーの経営コンサルタントだった大前研一氏で、外部環境と内部環境の両面から振るいにかけていきます。

外部環境として「顧客」「競合」、内部環境として「自社」を分析対象としていますので、SWOT分析よりはシンプルで導入しやすいのではないでしょうか?

3C分析の目的は、顧客、自社、競合のそれぞれの分析からKSF(Key Success Factor:成功要因)を明確にすることにより新商品の成功のため効率的なスクリーニングをお小奈津ことです。

3C分析の他に4C分析というのがあります。
これは「顧客価値(Customer Value)」「顧客のコスト(Cost)」「顧客にとっての利便性(Convenience)」「顧客とのコミュニケーション(Communication)」の4要素で構成されます。
ここでは日本発ということで、3Cを紹介してます。

 

4P分析とは

4Pとはproduct(商品), price(価格), place(流通), promotion(販売促進)のことで近代マーケティングの父といわれたフィリップコトラー氏の発案だと謂われており、以下の4つをどのように組み合わせるのかを検討していきます。
これをマーケティングミックスと呼ぶことがあります。

  • Product(商品)
    どんな商品・サービスを売るのか? 差別化ポイントは何か。
  • Price(価格)
    価格はいくらにするか? 高級路線か、コモディティ化などが関わります。
  • Place(流通経路)
    どのような経路で届けるか(実店舗、ECサイト、自社サイト、オムニチャネル等)。
  • Promotion(販売促進)
    どのように商品の存在や特徴、魅力を知らせるか。
    (広告、WEB(SEO対策)、SNS、DMなどのキャンペーン手法など)
4P分析

 

4P分析の目的は、顧客に自社商品をどう提供するかという道筋を明確にすることです。
上記4つ観点から自社に最も適したマーケティングミックスを検討する中で、最適なアイデアのスクリーニングを行います。

3,新商品コンセプトの立案

商品コンセプト作りのポイントは、「使っている人の場面をイメージできているか」
「顧客がそれを買ってくれる姿を想像できるか」を具体的に想像できるか、です。

コンセプト作りに有効なマーケティング手法をここでは2つご紹介します。
それはペルソナとカスタマージャーニーです。
(マーケティングの詳細に関しては別稿で説明予定)

ペルソナ

「ペルソナ」という用語にはもともと「登場人物」,「外的人格」という意味がありますが、マーケティングでは「商品やサービスを利用する典型的なユーザー像」のことを指します。

よく「ターゲットユーザーを明確にしよう」と言われますが、ここには2通りの意味があります。
それは年齢や性別といった属性で絞り込んだ「ユーザー層」という意味と、更にそのようなユーザー層に対して、具体的な人格を肉付けし、あたかも実存する一人の個人のような形に仕立てた「ペルソナ」という意味です。

それを効率よく行うためにペルソナシート(テンプレート)が存在します。
以下は「士業の学校:プレスクール様」からダウンロードしたものです。
(詳細はこちらから,このサイトが無料で提供しているシートはこちら

ペルソナシートの例

 

最近ではペルソナをAIで自動生成するツールなどもあり(例えばこちら)、シートを作成する際に多いに参考になるのではないでしょうか?

そのような検討を通じてターゲットユーザーを関係者間で腹に落ちるまで徹底的に話し合い、共通の認識を持てるようになるまで繰り返します。

カスタマージャーニー

カスタマージャーニー(ユーザージャーニーとも言います)とは、直訳すると「顧客の旅」ですが、一言でいうと「顧客が購入に至るプロセス」のことです。
このプロセスを検討するには先ほど説明したペルソナを使うとより効果的に進められます。

例えば、ペルソナがその商品をどのように認知し関心を持ちはじめ購入意欲を持ちはじめ試してみて購入に至るのかを、行動、思考、感情の3つの観点から時系列にパターン化していきます。

メンバー全員がでペルソナを使って、どのように商品を購入するのかに関して「ストーリーで語れる」ようになるまでこの作業を繰り返します。
このようなプロセスを通じて次の2つの効果が期待できます。

  • 「顧客視点」の認識が浸透する
  • メンバー間で認識を共有できる

以下にカスタマージャーニーをマップ化した事例(ユーザーエクスペリエンスマップとも呼ばれる)を紹介しておきます。

<海外旅行でホテルを探す場合のカスタマージャーニー>
カスタマージャーニーマップを正しく活用するには「おもてなし」と「カスタマーエクスペリエンス」の理解から

(引用元)カスタマージャーニーマップを正しく活用するには「おもてなし」と「カスタマーエクスペリエンス」の理解から

 

5.事業経済性分析

商品コンセプトを策定したら、次は、事業の経済性を分析します。

初期投資額、予想売上高、原価、利益についても予測を立てます。
ここで重要なのは、上記の要素をベースに新商品に対する初期投資が時系列的にどの程度で黒字化に転換するかを明確にすることです。

様々なデータや事実をベースに時系列の採算性を算出するわけですが、この時点で正確な数字が出るわけではありませんので、採算性に関して「楽観的」「現実的」「悲観的」の3パターンを用意し、夫々に対してプランAやプランB等を用意しておくとよいでしょう。

それを明確にしたうえで以下の3点を検討しておきます。

  1. 自社の事業目標に合致するか
  2. 事業価値の検証
    この時点で自社の事業として成立しないと判断された場合には、もう一度必要なプロセスに戻り練り直す勇気が必要となります。
    なぜならこの時点ならまだ大きな投資が伴ってないので手戻りによるサンクコストも小さくなるからです。
  3. 「終了条件」の明確化
    どのような状態になったらそれ以上の深入りはせず販売を中止するかの条件を明確にしておくことだ。

6,試作検証

試作機を作成して、テストマーケティングを行なうと、また新たな世界が見えてくることが多いですね。 そこで得た知見を試作機にフィードバックする、それを繰り返す。

ハードウエアの場合、本生産に入るには工場の工程管理をはじめとしてマスプロに至るまで様々なプロセスがあり、そこから手戻りが発生すると大きなコストがかかる。

幸い弊社のようなソフトウエアの場合にはアイデアの段階からプロトタイプを作成して検証していくのが一般的なので、より効率的な検討ができ、それをもとにテストマーケティングを実施することができます。

そしてある程度手ごたえを感じた段階で製品版にブラッシュアップして市場投入をすることになりますね。

7,市場導入

ソフトウエアの場合には自社サイトで販売することが多いので、Webマーケティングが重要となります。

この場合、自社サイトの構築、SNS連携、キャンペーン用Eメール、アフェリエイトとの連携、Web広告(検索広告、ディスプレイ広告、動画広告)等が想定されますが、その全ての中心となるのがSEO対策です。

SEO対策にはGoogle AnalyticsやGoogle Search Console等の無料ツールをはじめバックリンクやドメインパワー測定など様々なツールが存在しますが、それらは別稿で説明する予定です。

弊社で使用したプレゼン資料の一部

 

また、販売中に「問題が生じたら必要なプロセスから迅速に対応する」を繰り返していくことになります。

(アーパボー)