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WEB3

Web3入門 DAOに関する調査報告

Web3入門 DAOに関する調査報告

これまで、ブロックチェーンを基盤とする技術、特にイーサリアム、分散アプリケーション(DApps)、および非代替性トークン(NFT)に焦点を当てて調査報告をしてきました。
今回はさらに一歩進めて分散型自律組織(DAO)について実演も含め解説します。

※1)本投稿は2023年6月27日に社内で開催された今年3回目となるライトニングトーク(ALT)のプログラム①で発表した内容をベースにしております。

※2)アイキャッチの画像の出典元はこちらです。
https://zesda.jp/glbs017-report/

WEB3の中核要素としてのDAO

DAO(Decentralized Autonomous Organizations)は、Web3の中核的な構成要素です。Web3は、分散型でユーザー主導のインターネットを目指しており、DAOはその理念に完全に沿ったものです。

DAOを通じて、ユーザーはトークンに基づく投票で意思決定に参加し、コミュニティを自律的に運営することが可能です。

これは、従来の中央集権型のネットワークとは対照的で、データの所有権やプラットフォームのコントロールを個人に戻すというWeb3の目標に貢献しています。
DAOは、Web3の分散型エコシステムの中で新しい形の組織と協力を実現します。

Web3とは

ウェブの進化は、ウェブ1.0、ウェブ2.0、そしてウェブ3.0という3つの主要なフェーズを通じて行われました。

ウェブ1.0は静的なウェブページで構成されており、ユーザーが情報を単に閲覧するだけでした。

ウェブ2.0はインタラクティブなウェブアプリケーションとソーシャルメディアの台頭により、ユーザー生成コンテンツと相互作用を前面に出しました。これにより、FacebookやTwitterなどのプラットフォームが登場し、情報の共有とコラボレーションが加速しました。

ウェブ3.0、またはWeb3は、分散化、ブロックチェーン、暗号資産、スマートコントラクトの導入により、中央の権威を排除し、ユーザーのプライバシーとデータの所有権を強化することを目指しています。Web3はまた、分散型アプリケーション(DApps)や分散型自律組織(DAO)などの新しいサービスとビジネスモデルを生み出しています。これにより、ウェブはより透明で自由で、ユーザーセントリックなものになりつつあります。

DAO(自律分散型組織)とは

(出典:https://www.bridge-salon.jp/toushi/dao/#back)

DAO(自律分散型組織)はブロックチェーン技術を活用し、中央管理者なしで運営される組織形態です。

構成員は「投票トークン」を使用して、組織の意思決定に参加します。
リーダーがいないため、全員が平等に参加でき、民主的な運営が実現されます。
加えて、参加者は匿名で活動できるため、プライバシーが保護されます。
DAOは透明性、効率性の向上やイノベーションを推進する可能性を持っています。

限界集落「山古志村」の事例

山古志村は、2004年の中越地震で壊滅的な被害を受けたことが、集落の衰退に拍車をかけました。地震による被害は、村の基盤を揺るがし、多くの住民が移住を余儀なくされました。2004年時点で約2200人いた村民が、現在では約800人にまで減少しています。

この人口減少は、地域コミュニティの機能低下を招き、教育や保育にも影響を及ぼしています。保育園の閉鎖や、小学校と中学校の複式教育が検討されるなど、若い世代にとっては生活の質に関わる問題が生じています。

これは限界集落と呼ばれる状況であり、地域社会の持続可能性が危ぶまれています。山古志村のような地域では、地域振興策や人口定住支援策が必要とされます。これには、地域資源の活用、新しい産業の育成、移住者へのインセンティブ提供など、多様なアプローチが考えられます。

山古志村の決断


※)山古志村の資料はここからダウンロードできます。
20221118_meeting_web3_outline_01.pdf (296 ダウンロード )

錦鯉をNFTトークン化することで、山古志村はその文化的価値をデジタルの形で保存し、世界中の人々と共有することができます。これは、地域の魅力を広め、観光や移住を促進する手段として利用されるかもしれません。

また、これらの錦鯉NFTを販売することで、村は資金を調達し、それを地域振興や文化遺産保護のために使用することができます。

さらに、NFT所有者に対して、錦鯉に関連するイベントへの招待や、山古志村での特別な体験など、特典を提供することができます。これにより、コミュニティとのつながりを深め、長期的なサポートを促すことができるかもしれません。

実際にDAOの作成方法と手順

今回、山古志村が挑戦した画期的な「脱限界集落作戦」に触発されてDAOの作成方法をまとめてみました。

  1. 目的: DAOの目的を明確に定義する。
    これは、コミュニティのメンバーが共有する目標や価値であり、DAOの活動の指針となります。
  2. 投票メカニズム:
    DAOの重要な側面は、意思決定プロセスです。これは通常、投票によって行われます。投票のルール、権限、及びどのような提案が可能かなどを明確に定める必要があります。
  3. ガバナンストークンまたは共有システム:
    コミュニティメンバーがDAO内で投票権を持つために、ガバナンストークンが使われます。これらのトークンは、通常、ブロックチェーン上で発行され、持っているトークンの量に応じて投票権が与えられます。
  4. コミュニティ:
    DAOはコミュニティによって支えられます。参加者を募り、彼らが積極的に関与する環境を作ることが重要です。
  5. 資金を管理する方法:
    DAOは通常、プロジェクトやイニシアティブを資金提供するために資金を持っています。これらの資金の管理と配分のルールを明確に設定する必要があります。
  6. 各種ツール: DAOを構築および運用するためには、様々なツールが利用できます。
    • Aragon: DAOの作成と管理を簡易化するツールです。Aragonを使用すると、ガバナンストークンの発行、投票メカニズムの設定など、DAOの基本要素を簡単に設定できます。
    • Snapshot: DAOの投票プロセスを効率化するツールで、オンチェーン投票をサポートしており、ガス料金がかからないのが特徴です。
    • Discord: コミュニティメンバーとコミュニケーションを取るためのプラットフォーム。DAOにおいては、提案の議論や意見交換の場として重要です。

これらの要素とツールを活用して、DAOを設計し、コミュニティと共に運営していくことが重要です。

Aragon ClientでDAOを作ってみた!

事前準備

  1. Aragon Clientにアクセス: WebブラウザでAragon Clientのウェブサイトにアクセスしてください。
  2. ウォレットの接続: Aragon Clientはブロックチェーン上で動作するので、Ethereum互換のウォレット(例:MetaMask)を準備し、Aragon Clientに接続します。これがDAO作成時に使用されるアカウントになります。

DAO作成

  1. 「Create a new DAO」の選択: Aragon Clientのホームページで、「Create a new DAO」ボタンをクリックします。
  2. テンプレートの選択: さまざまなテンプレートが提供されていますが、今回は「Membership」を選択します。このテンプレートは、メンバーシップを中心にしたコミュニティに最適です。
  3. DAOの名前を決める: ユニークなDAOの名前を入力します。これはブロックチェーン上で識別するための名前となります。
  4. 投票に関する設定を行う: ‘Configure template’ セクションで、投票に必要な要件を設定します。例えば、投票期間、最小投票率などを定めます。
  5. メンバーの設定を行う: 初期メンバーとして追加する人々のEthereumアドレスを入力します。これらのメンバーは、DAOが作成された後に投票や提案を行うことができます。
  6. DAOの作成: すべての設定が完了したら、「Create DAO」ボタンをクリックします。トランザクションを承認し、ブロックチェーン上にDAOをデプロイします。これには少し時間がかかることがあります。
  7. DAOの管理: DAOが作成されたら、Aragon Clientのダッシュボードで管理できます。ここで新しい提案を作成したり、投票を行ったりすることができます。

これで、Aragon Clientを使用してDAOを作成するプロセスが完了しました。コミュニティのメンバーと共に、DAOでの活動を開始できます。

DAOを操作してみよう!

Aragonを使用してDAOの操作を行うための手順を解説します。ここでは、議題を提案し、投票を行い、議題が可決されるまでのプロセスについて説明します。

  1. Aragonにログイン: まず、ブラウザでAragonのウェブサイトにアクセスし、Ethereumウォレット(例:MetaMask)を使用してログインします。
  2. DAOにアクセス: Aragonのダッシュボードで、操作したいDAOを選択します。
  3. 議題を提案する: a. 左側のメニューから「Voting」を選択します。 b. 「New Vote」ボタンをクリックします。 c. 提案のタイトルと詳細な説明を入力します。もしあれば、関連するリンクやドキュメントも追加できます。 d. 「Create new vote」ボタンをクリックして提案を公開します。
  4. 投票する: a. 「Voting」セクションに戻り、出された提案のリストを確認します。 b. 投票したい提案をクリックします。 c. 提案の詳細ページで、「Yes」または「No」ボタンをクリックして投票します。 d. Ethereumウォレットを使用してトランザクションを承認します。これにより、あなたの投票がブロックチェーン上に記録されます。
  5. 議題の可決: a. 投票期間が終了したら、提案の結果が自動的に集計されます。 b. 「Voting」セクションで提案をクリックし、結果を確認します。 c. もし提案が可決された場合(つまり、必要な最小限の「Yes」投票が得られた場合)、提案されたアクションがDAOによって自動的に実行されます。

これにより、Aragonを使用してDAO内で議題を提案し、投票を行い、議題が可決されるプロセスが完了します。これはコミュニティのメンバーが共同で意思決定を行うための基本的な流れです。

実際の画面です。

  1. DAOの名前を決める
  2. 投票に関する設定を行う
  3. メンバーの設定を行う。
  4. 完成

非常にシンプルですが、一応DAOを作成して実演することができました。

筆者プロフィール:ケニー狩野(中小企業診断士、PMP、ITコーディネータ)キヤノン(株)でアーキテクト、プロマネとして多数のプロジェクトをリード。現在、Society 5.0振興協会評議員ブロックチェーン導入評価委員長。 これまでの知見を活かしブロックチェーンや人工知能技術の推進に従事。趣味はダイビングと囲碁。

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