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AI

GPTsとRAGの違いとは?

はじめに

近年、AI技術の発展により、大規模言語モデル(LLM)が様々な用途で活用されるようになりました。

その中でも、GPTs(GPT Builder)とRetriever-Augmented Generation(RAG)は、LLMの機能をさらに強化するための重要なアプローチとして注目されています。
本記事では、これら二つの技術がどのようにLLMに付加価値を提供しているのか、目的や機能、用途、メリット、デメリットを中心に詳細に解説していきます。

GPTs(GPT Builder)とは

GPTs、もしくはGPT Builderは、OpenAIが提供するLLMであるGPT(Generative Pre-trained Transformer)をカスタマイズして特定の目的に対応させるためのツールです。GPTsは、ユーザーが自らの目的に応じて特定の知識や対話スタイルを持つAIモデルを構築・微調整することを可能にします。

目的と機能

GPT Builderの主な目的は、汎用的なLLMを特定のニーズに合わせて調整し、ユーザー独自のタスクに対応させることです。
これにより、ユーザーは一般的な対話だけでなく、業務特化型のサポート、教育、マーケティングなど、様々なニーズに応じたAIを手軽に構築することができます。
例えば、製品サポートのFAQに特化したモデルや、特定のビジネス用語に精通したアシスタントなどがこれに該当します。

GPT Builderは、ユーザーに使いやすいインターフェースを提供し、コードを書かなくてもモデルの微調整が行える点が大きな特徴です。これにより、技術的な知識を持たない人でも自分のニーズに合ったAIモデルを簡単に開発できるようになります。

メリットと付加価値

  1. カスタマイズ性の高さ:GPT Builderは、特定のデータセットを使ってモデルを訓練・微調整できるため、特定の領域における知識の深さを強化することが可能です。これにより、一般的なモデルでは対応が難しい専門的な質問にも答えることができます。
  2. 使いやすさ:プログラミングの知識がなくても、直感的なUIを通じて簡単にモデルをカスタマイズすることができます。これにより、多くのビジネスユーザーがAIの導入を手軽に行えるようになりました。
  3. 効率性:特定のタスクに特化したモデルを作ることで、応答の質が向上し、業務プロセスの効率化に貢献します。特に、カスタマーサポートやビジネス情報の提供において、その効果は顕著です。

デメリット

  1. データ偏りのリスク:カスタマイズを行う際に、特定のデータに偏りがあると、モデルの応答がバイアスを持つ可能性があります。そのため、適切なデータ選定と訓練が求められます。
  2. 汎用性の低下:特定のタスクに特化しすぎると、汎用的な応答能力が低下し、異なるシナリオでの活用が難しくなる場合があります。

RAG(Retriever-Augmented Generation)とは

RAGは、Retriever-Augmented Generationの略で、LLMの生成能力を情報検索(Retrieval)技術と組み合わせることで、より正確でコンテクストに基づいた応答を生成する手法です。RAGは、ユーザーの質問に対して、事前に保存されている情報や外部データベースから関連する情報を検索し、その結果をもとに応答を生成します。

目的と機能

RAGの主な目的は、LLMが「常に最新で正確な情報を提供できる」ようにすることです。通常のLLMは、訓練されたデータに基づいて応答を生成しますが、新しい情報に対応することは難しい場合があります。RAGはこれを補うため、ユーザーの質問に応じてリアルタイムで情報を検索し、その情報を基に生成的な応答を行います。

具体的には、RAGは以下の二つのプロセスを組み合わせています:

  1. Retriever(検索):まず、ユーザーからの入力に基づいて、関連性の高い情報をデータベースや外部の知識ベースから検索します。
  2. Generator(生成):次に、検索された情報を元に、応答を生成します。これにより、モデルはより正確で文脈に沿った回答を提供することが可能になります。

メリットと付加価値

  1. 最新情報への対応:RAGは、外部のデータソースを利用して最新の情報にアクセスできるため、訓練済みモデルにはない新しい情報を用いた応答が可能です。特に、ニュースや動的に変化する情報が必要な場合に効果的です。
  2. 応答の信頼性向上:生成された応答が検索結果に基づいているため、信頼性が高く、誤った情報を提供するリスクが低減します。これにより、ユーザーはモデルの回答に対してより高い信頼を置くことができます。
  3. 柔軟性の高さ:RAGは、どの情報を取り入れるかを柔軟に選択できるため、非常に多様な用途に適応可能です。たとえば、カスタマーサポートや法律相談、技術サポートなど、専門的かつ最新の知識が求められる分野で有用です。

デメリット

  1. 検索の精度に依存:RAGの性能は、情報検索の精度に大きく依存します。不適切な情報が検索されると、それを基にした応答も誤ったものになるリスクがあります。
  2. リアルタイム性の制約:外部データの検索が必要なため、応答速度が遅くなる可能性があります。特に、大量のデータを検索する必要がある場合、この問題は顕著です。

 

GPTsとRAGの比較

以下の表は、GPTs(GPT Builder)とRAGの違いを明確にまとめたものです。

それぞれの目的、用途、メリット、デメリットが一目で理解できるように整理されています。この比較により、利用者は自分のニーズに最も適したAI技術を選択するための判断材料を得ることができます。

表 GPTs(GPT Builder)とRAGの違い
比較項目 GPTs(GPT Builder) RAG(Retriever-Augmented Generation)
目的 特定の業務やニーズに合わせたAIのカスタマイズ リアルタイムの情報提供と正確性の向上
用途 業務特化型のアシスタント、顧客サポートなど ニュース速報、技術的な問い合わせ、最新情報が必要な状況
メリット 使いやすさ、高いカスタマイズ性、技術知識不要 最新情報への対応、応答の信頼性向上、柔軟性
デメリット データ偏りのリスク、汎用性の低下 検索精度と応答速度に依存、リアルタイム性の制約

 

まとめ

GPTs(GPT Builder)とRAGは、それぞれ異なる付加価値を提供し、LLMの可能性を広げる手法です。

GPTsは、特定のニーズに応じてAIをカスタマイズし、特化型のアシスタントを容易に構築することができます。一方、RAGは、外部情報と組み合わせて最新かつ正確な情報を提供することに強みがあります。

これらの技術を理解し、それぞれの強みと弱みを把握することで、利用する場面に応じて最適なAIソリューションを選択することが可能になります。
ビジネスや教育、サポート業務など、さまざまな分野でどのようにAIを活用するかを考える際に、GPTsとRAGの違いを理解することは非常に重要です。

以上

筆者プロフィール
ケニー狩野(中小企業診断士、PMP、ITコーディネータ)
キヤノン(株)でアーキテクト、プロマネとして多数のプロジェクトをリード。
現在、株式会社ベーネテック代表、株式会社アープ取締役、一般社団法人Society 5.0振興協会評議員ブロックチェーン導入評価委員長。
これまでの知見を活かしブロックチェーンや人工知能技術の推進に従事。
趣味はダイビングと囲碁。2018年「リアル・イノベーション・マインド」を出版。