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モビリティ

トヨタのAreneとOTA技術: 2025年実用化に向けた最新動向と展望

トヨタのAreneとOTA技術: 2025年実用化に向けた最新動向と展望

トヨタのAreneは、ソフトウェア開発プラットフォームであり、車両の制御や運転機能を管理するソフトウェアの統合とアップデートを支援します。
特にOTA(Over-the-Air)技術は、Areneの重要な要素です。OTA技術を使うことで、物理的な接続やディーラー訪問なしに、インターネットを通じて車両のソフトウェアをリモートで更新できます。

これにより、新機能の追加や不具合の修正が迅速に行われ、車両の性能や安全性の向上が図られます。
さらに、Areneはトヨタの次世代モビリティ戦略の一環として、車両データをリアルタイムに収集・分析し、将来的な改良や顧客サービスの向上に役立てることを目指しています。
これにより、柔軟で持続的な車両開発が可能となります。

※)本記事は2023年6月に投稿した内容を2025年版としてアップデートしたものです。

Areneの概要と主な特徴

Areneの概要と主な特徴Arene(アレーン)は、トヨタの次世代車載OSであり、2025年に実用化され、2026年に次世代EVから実装される予定です。
Areneは、ウーブン・バイ・トヨタ(旧ウーブン・プラネット・ホールディングス)と共同開発されており、トヨタのハードウェアプラットフォームと組み合わせることで、新車開発のスピードアップとコスト削減を実現し、より安全かつ高性能なクルマを提供することができます。
Areneは、ハードとソフトを分離し、現在のすり合わせ開発を見直すことで、ソフトウェア開発をより生産的にし、品質も向上し、開発のリードタイムも短くすることができます
Areneを搭載することで、クルマのソフトウェアは常に最新に保たれ、OTA(over-the-air)という無線通信を経由し、データを送受信する技術を使うことで、リリース後もアップデートし続けることが可能です。

Areneの特徴

  1. モジュール化: Areneはモジュール化されており、開発者は個別のコンポーネントやサービスを独立して開発し、車両のシステムに統合することができます。これにより、ソフトウェアのアップデートや新機能の追加が容易になります。
  2. オープン性: Areneは一部がオープンソースであり、外部の開発者や企業がプラットフォーム上で独自のアプリケーションやサービスを開発することを可能にしています。
  3. セキュリティ: 車載システムのセキュリティは非常に重要であり、Areneはサイバーセキュリティのリスクを最小限に抑えるための対策を講じています。
  4. 拡張性: Areneは将来の技術的な進歩に対応できるように設計されており、新しいハードウェアやソフトウェア技術との互換性を保つことができます。
  5. 自動運転との統合: Areneは自動運転技術と統合され、自動運転機能の開発と実装を容易にします。
  6. AIとの統合:トヨタとNTTが2030年までに計5000億円を投じてAI運転支援技術を共同開発する計画を進めています。
  7. 開発・生産工程の効率化:トヨタは次世代EVの開発・生産工程を2分の1に削減する計画を発表しており、Areneはこの効率化に大きく貢献します。

OTA技術について

OTA技術についてOTA技術は急速に進化しており、Areneを搭載することで、クルマのソフトウェアは常に最新に保たれます。OTA(over-the-air)という無線通信を経由し、データを送受信する技術を使うことで、リリース後もアップデートし続けることが可能です。最新の実装例として、2024年2月にテスラがブレーキライト警告に関するリコールをOTAで実施しました。

Areneは、ハードとソフトを分離し、現在のすり合わせ開発を見直すことで、ソフトウェア開発をより生産的にし、品質も向上し、開発のリードタイムも短くすることができます。これは、スマートフォンの進化に似ており、クルマにおいてもアプリやサービスが重要になっていくと考えられています。

Areneは、自動運転ソフトウェアを開発するグループ会社であるウーブン・バイ・トヨタ(旧ウーブン・プラネット・ホールディングス)と共同開発されており、トヨタのハードウェアプラットフォームと組み合わせることで、新車開発のスピードアップとコスト削減を実現し、より安全かつ高性能なクルマを提供することができます。

セキュリティ対策も強化されており(後述)、UNECE WP.29フレームワークなどの新しい規制に対応しています。これにより、OTA技術を通じたソフトウェアアップデートの安全性と信頼性が向上し、ユーザーに最新の機能と改善を迅速に提供することが可能になっています。

※)詳細は2023年5月12日に掲載された記事を参照。

OTA(Over-the-Air)とは

無線通信を経由して、ソフトウェアの更新を行う技術です。

Areneは、OTA技術を使うことで、クルマのソフトウェアを常に最新に保ち、リリース後もアップデートし続けることができます
OTAは、次世代コネクティッドカーを実現するためのキー技術とされており、遠隔更新を可能にする技術・機能として注目されています
Areneのプラットフォームは、トヨタの長い歴史に基づいた自動車のノウハウと運用の専門知識を活用したものであり、組み込みツールと車載ソフトウェアサービスの提供により、OTAアップデートを実現しています
OTAを活用することで、ソフトウェアやファームウェアのアップデートのプログラムを無線経由で送受信可能になり、更新作業を効率化することができます

ただし、OTAアップデートが自動車技術プラットフォームの中心となった場合、自動車メーカー各社にとっての主な課題があることも指摘されています。

Areneが提供するOTA技術の特徴

Areneが提供するOTA技術の主な特徴は以下の通りです。

  • 無線通信を経由して、ソフトウェアの更新を行う技術である。
  • Areneを搭載することで、クルマのソフトウェアは常に最新に保たれる。
  • ソフトウェアやファームウェアのアップデートのプログラムを無線経由で送受信可能になり、更新作業を効率化することができる。
  • OTA技術を使うことで、遠隔更新を可能にする技術・機能として注目されている。
  • Areneのプラットフォームは、トヨタの長い歴史に基づいた自動車のノウハウと運用の専門知識を活用したものであり、OTAアップデートを実現している。

OTAのセキュリティリスク:2024年の最新動向

OTAのセキュリティリスク:2024年の最新動向OTA技術の進化に伴い、セキュリティリスクも複雑化しています。従来のソフトウェア改ざんや不正アクセスに加え、AI技術を悪用した攻撃や、IoTデバイスの脆弱性を狙った新たな脅威が出現しています。また、V2X通信やテレマティクスシステムなど、車両の高度なネットワーク化に伴うリスクも増大しています。これらの多様な脅威に対し、包括的な対策が求められています。

主なセキュリティリスク

  • ソフトウェアの改ざんや不正アクセスによる脅威
  • セキュリティ対策ソフトウェアの更新が不十分な場合の脆弱性悪用
  • アップデート中の通信エラーによる中断と残存する脆弱性
  • V2X(Vehicle-to-Everything)通信システムを標的とした攻撃
  • テレマティクスシステムのデータ漏洩によるプライバシー侵害
  • サプライチェーンを通じた悪意のあるコンポーネントの混入
  • AIを活用したスパムやフィッシングキャンペーン、マルウェア作成、脆弱性の発見と悪用
  • IoTデバイスの脆弱性と不十分な保護
  • エッジデバイスへのより精密な攻撃

最新のセキュリティ対策

これらのリスクを軽減するために、以下のような最新のセキュリティ対策が推奨されています。

  1. 強力な暗号化: AES-256などの高度な暗号化技術を使用し、更新パッケージとその通信チャネルを保護する
  2. 認証プロトコルの強化: 公開鍵基盤(PKI)を活用し、更新の出所を厳密に検証する
  3. セキュアブートローダーの実装: 起動時にソフトウェアの完全性を確認し、改ざんを防止する
  4. コード署名の活用: デジタル署名により、ソフトウェアの真正性と完全性を保証する
  5. 多層防御アプローチ: デバイスレベルでのセキュリティ強化と、OTAインフラ全体のセキュリティ確保を並行して行う
  6. アノマリー検知と迅速な対応: AI駆動の分析を用いて、異常なネットワーク活動を迅速に特定し対処する
  7. セキュアな初回起動プロセス: デバイスの初回起動時に最新のソフトウェアバージョンに自動更新する仕組みを確立する
  8. 継続的なセキュリティ監査: OTAプロセスの定期的な監査を実施し、新たな脅威に適応する
  9. セキュアハードウェアの統合: 信頼できるプラットフォームモジュール(TPM)やハードウェアセキュリティモジュール(HSM)を使用して、暗号鍵の安全な保存と重要なセキュリティ機能の実行を確保する

規制環境の変化

2024年7月から、UNECE R155およびR156規制が全ての新規製造車両に適用されます。これにより、自動車メーカーはサイバーセキュリティ管理システム(CSMS)認証の取得と、ソフトウェア更新管理システム(SUMS)の実装が義務付けられます。

また、ISO/SAE 21434規格は、車両の設計から廃棄までのライフサイクル全体にわたるサイバーセキュリティ対策の統合を目指しています。

セキュリティリスクに対する業界の協力体制

自動車業界では、セキュリティリスクに対する情報共有や協力体制が強化されています。

  • 日本自動車工業会(JAMA)は、サイバーセキュリティに関するガイドラインを策定し、業界全体のセキュリティ意識向上を図っています。
  • J-Auto-ISAC(Japan Automobile Information and Communication Center)を通じて、自動車メーカー、サプライヤー、政府機関が最新のセキュリティ脅威に関する情報を共有しています。
  • トヨタ自動車をはじめとする自動車メーカーは、セキュリティを最優先事項として位置付け、継続的な対策技術の開発と評価を行っています。

これらの取り組みにより、OTAアップデートのセキュリティリスクの軽減が期待されますが、AI技術の急速な進化や新たな脅威の出現に対応するため、継続的な監視と改善が不可欠です。

まとめ

大規模な開発体制を敷き、車載のソフトウエアも“手の内化”すると発表したトヨタ自動車。その狙いとは?

OTA(Over-the-Air)は、無線通信を経由してソフトウェアの更新を行う技術であり、自動車業界で注目を集めています。2024年度上半期の自動車市場では、OTA技術の普及が加速し、ソフトウェア定義型車両(SDV)の需要が増加しています。

OTA技術の主な特徴と影響:
❶ ソフトウェアやファームウェアのアップデートプログラムを無線経由で送受信可能にし、更新作業を効率化。
❷自動車のソフトウェアアップデートをより効率的に行えるようになり、自動車業界にとって重要な技術に。
❸セキュリティ上のリスクがあるため、強固なセキュリティ対策が必要。

業界の取り組み:
J-Auto-ISACという情報共有プラットフォームが設立され、自動車メーカー、サプライヤー、政府機関などが参加し、セキュリティ情報の共有や協力体制の構築を実施。
各自動車メーカーの独自の車載OS開発状況は以下の通り 
 ・VW: VW.OS
・メルセデス・ベンツ: MB.OS
・GM: Ultifi
・トヨタ: Arene(2025年実用化、2026年次世代EVから実装予定)

課題と展望:

  • OTA技術が自動車技術プラットフォームの中心となることで、自動車メーカー各社に新たな課題が生じている。
  • 中国メーカーも急速に技術開発を進めており、グローバル市場での競争が激化。
  • AIとの統合や開発・生産工程の効率化など、OTA技術を基盤とした新たな革新が期待される。

OTA技術は、自動車産業のデジタル化と顧客体験の向上に不可欠な要素となっており、今後も急速な進化と普及が予想されます。セキュリティ対策の強化と業界全体の協力体制の構築が、この技術の持続可能な発展の鍵となるでしょう。

この記事を書くにあたり筆者が参照したサイトをご紹介します。
Areneの実用化時期や最新の開発状況、OTA技術の進展などがより詳細に解説されてます。

  1. ウーブン・バイ・トヨタの公式サイトにあるAreneの紹介ページ
    https://woven.toyota/en/arene/
  2. トヨタの公式グローバルニュースルームにある2024年9月の発表記事
    https://global.toyota/en/newsroom/corporate/39288520.html
  3. 2024年9月に更新されたトヨタの自動運転戦略に関する記事
    https://jidounten-lab.com/u_toyota-autonomous-40000

以上

筆者 プロフィール 
ケニー狩野( 中小企業診断士、PMP、ITコーディネータ)
キヤノン(株)でアーキテクト、プロマネとして多数のプロジェクトをリード。
現在、株式会社ベーネテック代表、株式会社アープ取締役、Society 5.0振興協会評議員ブロックチェーン導入評価委員長。
これまでの知見を活かしブロックチェーンや人工知能技術の推進に従事。趣味はダイビングと囲碁。
2018年「リアル・イノベーション・マインド」を出版。