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NVIDIAの独占は続くのか?AIチップの未来を徹底解説

NVIDIAの独占は続くのか?AIチップの未来を徹底解説

NVIDIAの独占、競合他社の最新技術と戦略、反トラスト法のリスクを徹底解説

NVIDIA株価の急落が示すAI覇権争いの激化

2024年9月、米司法省の反トラスト調査報道を受けてNVIDIA株価が一日で9.5%下落しました。しかし、この出来事は単なる株価変動ではありません。AI時代の「石油」とも呼ばれる半導体チップを巡る覇権争いが、ついに規制当局の注目を集める段階に達したことを意味します。

なぜいまAIチップ市場が注目されるのか

生成AI市場の急拡大により、AIチップ需要は2024年に前年比300%増を記録しました。しかし、NVIDIA一社が市場の約80%を支配する現状に対し、各社が挑戦を開始しています。本記事では、この競争激化するAI半導体市場の現状と、2025年以降の展望を徹底分析します。

2025年AIチップ市場分析:6つのカテゴリー別競争状況

AIチップの進化により、用途に応じた多様な種類が登場しています。
本記事では、AIチップを6つのカテゴリーに分類し、その特徴と代表的な製品を紹介します。
汎用AIアクセラレーター、特化型AIプロセッサ、推論特化型AIプロセッサ、学習特化型AIプロセッサ、高帯域メモリ(HBM)、エッジAI向けプロセッサの各カテゴリーについて、定義と主要ベンダーのチップ名を解説します。この分類により、AIチップの多様性と各タイプの特徴を理解することができます。

汎用AIアクセラレーター:NVIDIA vs AMD の直接対決

汎用AIアクセラレーターは、幅広いAIタスクに対応できるよう設計されたプロセッサです。これらのチップは、トレーニングと推論の両方を効率的に処理する能力を持ち、多様なAIアプリケーションで使用されます。高い計算能力と柔軟性が特徴です。

ベンダーとチップ名:
  • NVIDIA Rubin
  • AMD Instinct MI325X
  • Intel Gaudi 3
  • Huawei Ascend 910C

特化型AIプロセッサ:Microsoft、Meta、Amazon の自社開発戦略

特化型AIプロセッサは、特定のAI処理やアプリケーションに最適化されています。これにより、特定のワークロードに対して高い性能を発揮し、効率的なリソース利用が可能です。特定用途向けの最適化が進んでいます。

ベンダーとチップ名:
  • Microsoft Azure Maia (大規模言語モデル向け)
  • Meta MTIA v2 (ランキングや推薦システム向け)
  • Amazon Trainium 2 (機械学習トレーニング向け)
  • Google TPU Trillium (AI特化ハードウェア)

推論特化型AIプロセッサ

推論特化型AIプロセッサは、学習済みモデルを使用してリアルタイムでデータから結論を導き出すために設計されています。低消費電力で高効率な処理が可能であり、エッジデバイスやモバイル機器での利用が一般的です。

例えば、近年のAIでは、より複雑で精度の高い結論を導き出すために「Chain of Thought (CoT)」のような高度な推論技術が用いられています。このような処理には、推論段階でも大規模な計算リソースが必要となります。

(補足)Chain of Thought(CoT)技術とは?
人間の思考プロセスをまねた新しいAIの考え方です。

想像してみてください。あなたが難しい迷路を解こうとしているところです。
普通のAIは、迷路の入口から出口まで一気に走ろうとして行き詰まってしまいます。

一方、CoT技術を使うAIは、まるで賢い探検家のように迷路を解きます
一歩ずつ慎重に進みながら、「ここで右に曲がったらどうなるかな?」「行き止まりならどこまで戻る?」と頭の中で何度も考えを巡らせます。少しずつ考えを積み重ねて、最終的に正しい道を見つけ出すのです。

このように人間の「考える過程」を真似することで、AIはより賢く、より人間らしい判断ができるようになりました。

ベンダーとチップ名:
  • TENSTORRENT Grayskull
  • NVIDIA A100
  • Apple A18
  • Google Edge TPU

学習特化型AIプロセッサ

学習特化型AIプロセッサは、大規模なデータセットを用いてAIモデルをトレーニングするために設計されています。高い演算能力とメモリ帯域幅を備え、大規模データセンターやスーパーコンピュータで使用されます。

ベンダーとチップ名:
  • NVIDIA H100
  • Cerebras WSE-3

高帯域メモリ(HBM)

高帯域メモリ(HBM)は、高速データ転送を可能にするメモリ技術です。AIプロセッサと組み合わせることで、大量のデータを迅速に処理できるようになり、特に高性能コンピューティング環境で重要な役割を果たします。

ベンダーとチップ名:
  • Samsung HBM4 AIチップ
  • TSMC HBM4 AIチップ

エッジAI向けプロセッサ

エッジAI向けプロセッサは、クラウド依存を減らし、エッジデバイス上で直接AI処理を行うために設計されています。これにより、リアルタイム処理が可能となり、IoTやロボット工学などの分野で活用されています。

ベンダーとチップ名:
  • Apple A18 (モバイルデバイス向け)
  • ルネサスエレクトロニクス DRP技術搭載チップ
  • ロームの「AxlCORE ODL」搭載チップ

この分類は、各AIチップの主な用途や設計目的に基づいています。それぞれの分類には独自の特徴と用途があり、目的に応じて最適なチップが選ばれます。

NVIDIAはなぜ強いのか?その戦略とエコシステムを深掘り

NVIDIAの市場支配の背景には、単なるチップ性能の高さだけではない、緻密に計算されたビジネス戦略が存在します。ここでは、同社の強さの根幹をなす「新たな戦略」を解説します。

AIの用途拡大:推論とフィジカル

NVIDIAは、AIの用途を「推論」と「フィジカル」(現実世界へのAI適用)という2つの大きな流れで捉えています。これまでAIの主な用途は「学習」でしたが、今後は学習したモデルをいかに活用するかという「推論」の段階に移行すると見ています。具体的には、ChatGPTのようなテキストベースのAIだけでなく、製造現場や自動運転など、実世界でのAI活用を目指しています。例えば、トヨタや安川電機の工場へのAI導入や、ソフトバンクの5G基地局へのAI技術の統合などが挙げられます。

フルスタック戦略と「CUDAの壁」

NVIDIAは、単なる半導体メーカーではなく、AIプラットフォーム企業としての地位を確立しようとしています。彼らの戦略は以下のような「フルスタック」アプローチです:

  1. チップの提供
  2. 独自のプラットフォームでの学習環境の提供
  3. 学習したモデルの実環境への展開とファインチューニング

この一気通貫のサービスにより、NVIDIAは顧客に対して総合的なAIソリューションを提供しようとしています。これを支える中核技術がCUDAです。
NVIDIAのソフトウェアエンジニアの比率は7割を超え、この数字はハードウェアとソフトウェアを密接に統合する同社の取り組みを象徴しています。

CUDAは、高性能かつ柔軟性の高いプログラミング環境を提供し、開発者が容易にAIアプリケーションを構築・最適化できる基盤を築いています。これが競合他社にとっての大きな参入障壁、いわゆる「CUDAの壁」となっているのです。

NVIDIAのフルスタック戦略において、CUDAは単なる技術ではなく、AI市場での競争力を強化する不可欠な要素です。これにより、同社は競合他社との差別化を図り、急速に進化するAI技術の最前線でのリーダーシップを維持しています。

NVIDIAが市場を独占する理由と競合企業の課題

以下に、NVIDIAのチップに対する各ベンダーのAIチップのウィークポイントとその対策をリストアップしました。

AMD Instinct MI325X

ウィークポイント:
  • ソフトウェアエコシステムの弱さ: NVIDIAのCUDAに比べて、AMDのROCmはまだ成熟しておらず、開発者の移行が進んでいません13。
  • 市場シェアの低さ: データセンター市場でのシェアが低く、NVIDIAに大きく遅れをとっています。
対策:
  • ROCmの強化: ソフトウェアエコシステムを強化し、開発者サポートを充実させることで、NVIDIAからの移行を促進します。
  • パートナーシップの拡大: 大手クラウドプロバイダーやAI企業との協力を強化し、市場シェア拡大を図ります。

Meta MTIA v2

ウィークポイント:
  • 汎用性の不足: 特定のモデル(ランキングや推薦モデル)に最適化されており、汎用性が低い可能性があります2。
  • エコシステムの限界: PyTorch 2.0との統合は進んでいるものの、CUDAほど広範なサポートはありません2。
対策:
  • 用途拡大: 他のAIタスクへの適用範囲を広げるためにチップ設計を改善します。
  • エコシステム構築: 開発者コミュニティとの連携を強化し、ソフトウェアサポートを拡充します。

Intel Gaudi 3

ウィークポイント:
  • ソフトウェア移行の難しさ: NVIDIAからの移行が難しく、採用率が低い。
  • 市場導入の遅れ: 製品展開が遅れており、市場での存在感が薄い。
対策:
  • オープンソース戦略強化: オープンソースソフトウェアと標準イーサネットネットワーキングを活用し、柔軟なスケーリングを可能にします。
  • パートナーシップ強化: クラウドプロバイダーやOEMとの協力を深め、市場導入を加速します。

Huawei Ascend 910C

ウィークポイント:
  • 米国制裁による技術制限: 最新技術へのアクセスが制限されており、製造プロセスが遅れています。
  • 国際市場へのアクセス制限: 米国市場へのアクセスが制限されているため、グローバル展開が難しい。
対策:
  • 国内生産能力の強化: 中国国内での製造能力を高め、自給自足体制を構築します。
  • 技術革新と協力体制強化: 国内外での技術協力を通じて、技術的なギャップを埋めます。

Amazon Trainium

ウィークポイント:
  • 採用率の低さと互換性問題: CUDAとの互換性不足があり、大規模な顧客での採用率が低い。
対策:
  • AWS Neuronプラットフォーム強化: CUDAと同等レベルまでAWS Neuronプラットフォームを改善し、開発者がより容易に移行できるようにします。
  • 教育とトレーニングプログラム: 開発者向けにトレーニングプログラムを提供し、新しいチップへの移行を支援します。

Samsung HBM3/3E

ウィークポイント:
  • 熱と消費電力問題: NVIDIAのテストで熱と消費電力問題が指摘されています616。
対策:
  • 製品最適化プロセス強化: 顧客ニーズに応じた最適化プロセスを進め、熱管理と効率性向上に注力します。
  • 研究開発投資拡大: HBM技術に対する研究開発投資を増やし、競争力を高めます。

以上のように、これらのベンダーは、それぞれ独自の強みと弱みを持っており、NVIDIAとの差別化と競争力強化に向けた取り組みが求められています。

2025年注目のAIチップ8選:NVIDIA Rubinと競合を比較

将来性が期待されるAIチップを持つ7社を、NVIDIAの「Rubin」チップと比較しながら、有望な順に並べてみます。
この順位は、市場シェア、技術的革신性、そして既存エコシステムへの影響力を基準にした独自の評価です。そのため、主観的な部分が含まれる点はご了承ください。

現在、NVIDIAやAMDが業界をリードする一方で、MicrosoftやMetaなども独自の技術で競争力を高めています。

NVIDIAの最新ロードマップ:BlackwellからRubin、その先へ

王者NVIDIAは、AI向けGPUを1年ごとに更新していく方針を明らかにし、競合を突き放す構えです。公式に発表された将来の製品ロードマップは以下の通りです。

Blackwell / Blackwell Ultra (2024-2025年)

現行のHopperアーキテクチャの後継です。AIの学習と推論の両方で大幅な性能向上、特に推論性能の向上に重点が置かれています。2025年にはメモリ性能を向上させたマイナーアップデート版「Blackwell Ultra」が投入予定です。

Rubin / Rubin Ultra (2026-2027年)

次世代アーキテクチャ「Rubin」は2026年に登場予定で、8スタックのHBM4メモリを採用し、さらなる性能向上が期待されています。AGI(汎用人工知能)の実現に向けた研究開発をサポートする基盤となることを目指しています。2027年には12スタックのHBM4メモリをサポートする「Rubin Ultra」が計画されています。

Vera CPU

Rubinプラットフォームでは、GPUだけでなくCPUも刷新され、新たに「Vera」CPUが導入される予定です。GPUと密接に連携し、システム全体のAIワークロード処理効率を向上させることを目指しており、NVIDIAがCPU・GPUの両方で統合的な開発を進めていることを示しています。

AMD Instinct MI325X

  • 開発元: AMD
  • 概要: AMDの最新AIチップ「Instinct MI325X」は、NVIDIAの製品に対抗する設計となっています。288GBのHBM3Eメモリと6TB/sのメモリ帯域幅を備え、AIワークロードの性能向上を目指しています。
  • リリース時期: 2024年第4四半期
  • 製造プロセス: 5nm
  • 市場シェア: データセンターGPU市場でのシェア拡大を目指す
  • 技術的革新性: AMD発表資料によると、特定のLLMワークロードにおいてNVIDIA H200比で最大40%の推論性能向上を実現(2024年10月AMD発表)
  • 既存のエコシステムへの影響力: ROCmソフトウェアによるCUDAからの移行容易化

Microsoft Azure Maia

  • 開発元: Microsoft
  • 概要: Microsoftは「Azure Maia」と「Azure Cobalt」の2種類のAIチップを導入します。Azure Maiaは大規模言語モデルのトレーニングと推論向けの特化型AI CPUで、OpenAIのGPTモデルに対応します。Azure Cobaltはクラウドサービス用の汎用CPUです。
  • リリース時期: 2024年第1四半期
  • 製造プロセス: 5nm
  • 市場シェア: Azureプラットフォームを通じてクラウド市場で強い存在感
  • 技術的革新性: サブ8ビットデータタイプサポート
  • 既存のエコシステムへの影響力: OpenAIとの協力によるAzure最適化

Intel Gaudi 3

  • 開発元: Intel
  • 概要: Intelの最新AIアクセラレーター「Gaudi 3」は、データセンター向けに設計され、性能と電力効率を向上させています。特にスループットを20%向上させ、競合製品に比べてコスト効率が高いとされています。
  • リリース時期: 2024年第3四半期
  • 製造プロセス: 5nm
  • 市場シェア: 予算チップ市場で強み
  • 技術的革新性: NVIDIAのH100比50%高い推論性能
  • 既存のエコシステムへの影響力: オープンソースソフトウェアとイーサネットネットワーキング

※)2024年第3四半期から本格的に出荷が開始されたインテルのAIチップの評判は後述のメモを参照のこと。

Meta MTIA v2

  • 開発元: Meta
  • 概要: MetaのAIアクセラレーターチップ「MTIA v2」は、FacebookやInstagramのAIアプリケーションで活用され、特にランキングや推薦広告モデルで性能を発揮します。初代比で性能が3.5倍向上し、NVIDIAへの依存を減らすことを目指しています。
  • リリース時期: 2024年(具体的な四半期は未発表)
  • 製造プロセス: 5nm
  • 市場シェア: 自社サービス向けに開発
  • 技術的革新性: 前世代比3.5倍の性能向上
  • 既存のエコシステムへの影響力: PyTorch 2.0との統合

Huawei Ascend 910C

  • 開発元: Huawei
  • 概要: Huaweiの最新AIチップ「Ascend 910C」は、NVIDIAのH100に匹敵する性能を目指しています。既に受注を開始し、サンプルが技術企業に送付されています。米国の貿易制限による課題がある中でも、Huaweiはこの先進的なAIチップの生産を強化する計画です。
  • リリース時期: 2025年第1四半期
  • 製造プロセス: 7nm
  • 市場シェア: 中国市場でNVIDIAに対抗
  • 技術的革新性: SMICのN+2プロセス採用、NVIDIAのH100に匹敵する性能
  • 既存のエコシステムへの影響力: 中国国内での自給自足体制構築

Cerebras Wafer Scale Engine 3 (WSE-3)

  • 開発元: Cerebras Systems
  • 概要: Cerebras Systemsの「Wafer Scale Engine 3 (WSE-3)」は、世界最速のAIチップとされ、90万個のAIコアと4兆個のトランジスタを搭載しています。このチップはCerebras CS-3 AIスーパーコンピュータを駆動し、125ペタフロップスのピーク性能を実現しています。
  • リリース時期: 2024年(具体的な四半期は未発表)
  • 製造プロセス: 5nm
  • 市場シェア: 研究機関や政府機関向けの特定用途
  • 技術的革新性: 4兆個のトランジスタ、900,000個のAI最適化コア
  • 既存のエコシステムへの影響力: 大規模モデルトレーニング向け独自プラットフォーム

TENSTORRENT Grayskull

  • 開発元: TENSTORRENT
  • 概要: TENSTORRENT社では、ネットワークオンチップ技術とRISC-Vアーキテクチャーを使用した独自のAIチップ開発が進められています。NVIDIAのCUDAプラットフォームではなくPyTorchフレームワークを使用しており、多様なディープラーニングタスクへの対応が期待されています。
    TENSTORRENT社は、Grayskullの消費電力効率について優位性を主張していますが、具体的な比較データは公開されていません。
  • リリース時期: 未発表
  • 製造プロセス: 未発表(RISC-Vアーキテクチャー使用)
  • 市場シェア: 新興企業として開発者向けソリューション提供に注力
  • 技術的革新性: PyTorchフレームワーク活用による柔軟な設計
  • 既存のエコシステムへの影響力: 開発者コミュニティとの連携強化が期待

この記事は、各AIチップの特徴、開発状況、市場での位置づけを包括的に示しており、AIチップ市場の競争状況と技術革新の方向性を理解する上で有用な情報を提供しています。

 

▶ CPU最強が提供するIntel Gaudi 3の評判は?+(クリックで開閉)
1,性能面:
NVIDIAのH100と比較して、LLaMAツールの700億パラメータモデルの推論において最大20%の性能向上を実現。
平均して50%の推論性能向上と40%の電力効率改善をH100に対して達成。
大規模言語モデル向けに最適化され、効率的なスケーリングが可能。
チップは、Dell、HPE、Supermicroなどの主要OEMから提供予定。
2,コスト効率:
Intel Gaudi 3は、NVIDIA H100と比較して約2.3倍の価格性能比を持ち、推論・トレーニングスループットで優位性があります。8プロセッサ搭載のベースボードは125,000ドルで、H100より低価格です。特定条件下でH100を上回る推論性能を主張していますが、市場評価は進行中です。Gaudi 3の高いコスト効率と性能は、AI市場でのIntelの競争力強化につながる可能性があります。
3,技術的特徴:
2つのダイを1つのパッケージに実装し、5nmプロセスを採用。
64テンソルプロセッサコア、8行列乗算エンジン、128GB HBM2Eメモリを搭載。
200GbEネットワークインターフェースを24ポート備え、スケーラビリティを向上。
4,エコシステム:
Intel Gaudi 3のエコシステムは、オープンソースツールとの互換性を重視し、PyTorch、LLAMA、BERT、GPT-2などの主要AIフレームワークとモデルをサポートしています。Hugging FaceやDeepSpeedなどの高速化ライブラリも対応し、オープンソースのソフトウェアスタックを提供しています。
GitHubでの最適化モデル公開やGPU Migration Toolkitによる移行支援など、開発者が使いやすい環境を整え、AIアプリケーションの迅速な展開を可能にしています。5,課題:
NVIDIAのH100やH200と比較して一部の性能指標で劣る。
市場シェアはまだ小さく、実際の採用状況は限定的。
総じて、Gaudi 3はコスト効率と特定のAIワークロードでの性能で注目されていますが、NVIDIAの強力なエコシステムと市場シェアに対抗するには、さらなる実績の積み重ねが必要とされています。

 

NVIDIAと反トラスト法:独占リスクが市場に与える影響

Googleは現在、複数の反トラスト法関連の訴訟に直面していますが(※後述のメモ参照
NVIDIAも調査対象となってますので現時点の状況を簡単にまとめてみました。

NVIDIAは現在、アメリカ合衆国司法省(DOJ)およびフランス競争当局による反トラスト法の調査を受けています。これらの調査は、NVIDIAがAIチップ市場での支配的地位を利用して反競争的な行為を行っている可能性があるとされることに基づいています。

アメリカ合衆国司法省(DOJ)の調査

背景:
NVIDIAはAI半導体市場で約80%のシェアを持ち、特にデータセンター向けの市場で圧倒的な存在感を示しています。

調査内容:
DOJは、NVIDIAがハードウェアとソフトウェアをバンドルし、両方を購入する顧客に優遇措置を提供しているかどうかを調査しています。また、他のサプライヤーへの移行を複雑にし、NVIDIAのAIプロセッサーを独占的に使用しない顧客に対してペナルティを課しているかどうかも検討されています。

影響:
調査が進む中で、NVIDIAの株価は急落し、市場価値が大幅に減少しましたが、それでも今年はAIブームにより株価は倍増しています。

フランス競争当局の調査

背景:
フランス競争当局もNVIDIAに対する反トラスト法違反の疑いで調査を行っています。特にCUDAソフトウェアとGPUのバンドルが反競争的であると指摘されています。

調査内容:
フランス当局は、価格固定や供給制限、不公平な契約条件、差別的行為などの可能性についても調査しています。

影響:
フランスでの調査結果は他国の規制当局にも影響を与える可能性があり、特にインド競争委員会(CCI)も市場研究を開始しています。

これらの調査は、NVIDIAが市場でどのように競争優位性を維持しているかについての重要な問いを投げかけており、その結果次第ではAI業界全体に大きな影響を与える可能性があります。
もし反競争的行為が認められた場合、NVIDIAはビジネス慣行を変更する必要があり、市場における競争が活発化する可能性があります。

 

▶ Googleの反トラスト法訴訟の状況+(クリックで開閉)
Googleは現在、複数の反トラスト法関連の訴訟に直面しています。主な展開は以下の通りです:
1,検索エンジン独占に関する訴訟:
2024年8月、連邦判事がGoogleの検索エンジンを違法な独占と認定しました。これを受け、米司法省は以下の措置を提案しています:

  • Chromeブラウザの売却
  • AndroidのOSの売却または制限
  • Appleなどとのデフォルトサーチエンジン契約の禁止
  • 競合他社へのデータ共有

2,広告技術に関する訴訟:
2024年9月、バージニア州で広告技術市場の独占に関する別の反トラスト訴訟が始まりました。司法省は、Googleが広告技術市場を独占し、取引の36%を手数料として徴収していると主張しています。
これらの訴訟結果次第では、Googleの事業分割や大幅な事業慣行の変更が強制される可能性があります。Googleは政府の提案を「極端」と批判し、対抗策を提示する予定です。
この状況は、テクノロジー業界全体に大きな影響を与える可能性があり、他の大手テクノロジー企業も同様の規制圧力に直面する可能性があります。

 

よくある質問(FAQ)

▶ Q1: なぜNVIDIAはこれほどAIチップ市場で強いのですか?+(クリックで開閉)

NVIDIAの強さの最大の理由は、ハードウェアの性能だけでなく、「CUDA」という非常に強力なソフトウェアエコシステムを築いている点にあります。世界中のAI開発者の多くがCUDAを使い慣れているため、他のチップに乗り換えるのが難しい状況が生まれています。この「CUDAの壁」が、競合他社にとって大きな障壁となっています。

▶ Q2: NVIDIA以外のAIチップに未来はありますか?+(クリックで開閉)

はい、十分に未来はあります。AMDはコストパフォーマンスで、Intelはオープンなエコシステムで対抗しています。また、MicrosoftやGoogle、Amazonといった巨大テック企業は、自社のクラウドサービスに最適化した独自チップを開発しており、特定の用途ではNVIDIAを上回る効率を発揮します。今後は「適材適所」で様々なチップが使われる時代になると考えられます。

▶ Q3: クラウド企業が自社でチップを開発するメリットは何ですか?+(クリックで開閉)

主なメリットは「コスト削減」と「性能の最適化」です。NVIDIAから高価なチップを大量に購入する代わりに、自社のサービス(例:AzureやAWS)に特化した設計のチップを開発・利用することで、運用コストを大幅に下げることができます。また、自社のソフトウェアやAIモデルに合わせて最適化するため、特定の処理において既製品を上回るパフォーマンスを引き出すことも可能です。

▶ Q4: AIチップの性能は何で決まるのですか?+(クリックで開閉)

AIチップの性能は、単一の指標では測れませんが、主に以下の3つの要素が重要です。①理論上の計算能力(FLOPS)、②データをいかに速くプロセッサに供給できるかを示すメモリ帯域幅(HBMの性能)、そして③複数のチップを繋げて性能をスケールさせるためのインターコネクト技術です。これらがバランス良く連携することが、実際のAI処理速度に繋がります。

▶ Q5: 今後、AIチップの価格はどうなりますか?+(クリックで開閉)

短期的には高止まりが続く可能性がありますが、長期的には価格は下落すると予測されます。AMDやIntel、さらには各クラウド企業の参入によって市場競争が激化するためです。また、生成AIだけでなく、より専門的な用途に特化した安価なチップの需要も増えるため、チップの選択肢が多様化し、全体の価格帯も広がっていくでしょう。

2025年が分水嶺:NVIDIA独占に終止符は打てるか

市場分析の結果、2025年は以下3つの要因でAIチップ市場の構造変化が予想されます:

  • 各社の次世代チップが本格量産開始
  • 反トラスト規制による市場構造の変化
  • 用途特化型チップの需要拡大

ただし、NVIDIAのCUDAエコシステムの優位性は依然として強固であり、真の競争環境の実現には2-3年を要すると予測されます。

以上

筆者 ケニー狩野氏
筆者プロフィール:ケニー狩野
中小企業診断士、PMP、ITコーディネータ
キヤノン株式会社にてアーキテクト、プロジェクトマネージャーとして数々のプロジェクトを牽引。

現在の主な役職:
株式会社ベーネテック 代表、株式会社アープ 取締役、一般社団法人Society 5.0振興協会 評議員 ブロックチェーン導入評価委員長などを務める。2018年には「リアル・イノベーション・マインド」を出版。趣味はダイビングと囲碁。

ABOUT ME
ケニー 狩野
中小企業診断士、PMP、ITコーディネータ キヤノン株式会社にてアーキテクト、プロジェクトマネージャーとして数々のプロジェクトを牽引。 現在の主な役職: 株式会社ベーネテック 代表、株式会社アープ 取締役、一般社団法人Society 5.0振興協会 評議員 ブロックチェーン導入評価委員長などを務める。 2018年には「リアル・イノベーション・マインド」を出版。 趣味はダイビングと囲碁。