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TogglePMBOK第6版と第7版の比較してみた
プロジェクトマネジメントの環境は日々進化しています。 プロジェクトの内容や性質が、従来よりも多様で複雑になってきたことに対応するためです。
これに伴い、PMBOK(Project Management Body of Knowledge)も改訂を重ね、プロジェクトマネジメントのフレームワークを最適化してきました。
この記事では、PMBOKの第6版と第7版の違いについて比較します。
誤解を恐れずに言うと、第6版は「プロセス重視」、第7版は「結果重視」と捉えることができます。(第6版: 約780ページ、第7版: 約370ページ)
そして、開発プロジェクトを推進するには「プロセス」も「結果」も大事ですので両方とも頭に入れるのが理想ではありますが、実際にはそのような時間を取れる方は少ないと思います。
そこで、それぞれの狙いや方針、プロジェクトマネジメントのアプローチの違い等を分かりやすく解説することにより、現代のプロジェクトマネージャーにとって何が重要なのかを具体的かつ直感的に理解していただくことを目的としています。
PMBOK第6版の目的と特徴
PMBOK第6版は、プロジェクトの成功を支援するために、プロジェクトマネジメントの知識体系を整理し、体系化しています。本版では、プロジェクトマネジメントを「プロセス群」と「知識エリア」に基づいて説明しています。プロセス群は、立ち上げ、計画、実行、監視・コントロール、終結の5つで構成され、それぞれのプロセスが相互に連携しながらプロジェクトを進めます。
一方、知識エリアはプロジェクトマネジメントに必要な分野をカバーしており、全部で10のエリアに分類されます。
詳細は後述しますが、これらの知識エリアを活用することで、プロジェクトを計画的かつ効率的に管理し、成果物の品質やスケジュール、コストを適切にコントロールすることが可能です。
プロセス重視のマネジメント
第6版では、プロジェクトの成功を保証するために、プロジェクトを5つのプロセス群(立ち上げ、計画、実行、監視・コントロール、終結)に分割し、それぞれのプロセスで何をすべきかを詳細に定義しています。
プロセス重視のアプローチは、特にウォーターフォール型の開発モデルで力を発揮します。すなわち、段階的にプロジェクトを進めることで、管理がしやすくなります。
プロセス群 | 説明 |
---|---|
立ち上げプロセス群 | プロジェクトをスタートする準備段階。プロジェクトチャーターを作成し、プロジェクトの大枠を決定する。 |
計画プロセス群 | プロジェクトの進め方の青写真を描くフェーズ。スケジュール、予算、リソースの使用方法について綿密な計画を立てる。 |
実行プロセス群 | 実際に作業を進めていくフェーズ。計画に基づいてタスクを実行し、チームを動かして成果を出す。 |
監視・コントロールプロセス群 | 計画通りに進んでいるか確認しながら、問題が発生した場合にそれをコントロールする段階。 |
終結プロセス群 | プロジェクト完了時に結果を確認し、得た教訓をまとめて次に活かす。成果物を引き渡し、プロジェクトを終了する。 |
知識エリアのフレームワーク
第6版では、プロジェクトマネジメントを10の知識エリア(スコープ、タイム、コスト、品質、リスクなど)に分け、各エリアごとに詳細な管理手法を提供しています。
これにより、プロジェクトマネージャーは個別のエリアに対して深い理解を持つことができ、各エリアのバランスを取ることがプロジェクトの成功につながるとされています。
以下の表に、PMBOK第6版で定義されている10の知識エリアとその説明をまとめました:
知識エリア | 説明 |
---|---|
スコープマネジメント | プロジェクトの範囲を定義し、過剰な要求や仕様の追加(スコープクリープ)を防ぐ。 |
スケジュールマネジメント | プロジェクトのスケジュールを計画、管理し、納期を守るための手法。 |
コストマネジメント | プロジェクトに必要な予算を管理し、コストオーバーランを防ぐ。 |
品質マネジメント | プロジェクトの成果物やプロセスが期待通りの品質を保つための管理。 |
リソースマネジメント | チームやその他のリソース(設備、材料など)を最適に配分し、プロジェクトの遂行を支援する。 |
コミュニケーションマネジメント | ステークホルダーとの情報共有を適切に行い、全員が共通理解を持つようにする。 |
リスクマネジメント | プロジェクトで発生する可能性のあるリスクを予測し、それに対する対策を準備する。 |
調達マネジメント | 外部からの資材やサービスを効果的に調達し、契約や購買を管理する。 |
ステークホルダーマネジメント | プロジェクトに影響を与える全ての関係者を適切に管理し、彼らの期待を調整する。 |
統合マネジメント | すべての知識エリアやプロセスを統合し、プロジェクト全体を一貫して管理するための手法。 |
この表は、プロジェクトマネジメントの各知識エリアの主な目的と役割を簡潔にまとめています。
ツールと技法
各知識エリアで使用される具体的なツールや技法もPMBOK第6版に含まれています。
これらはプロジェクトマネージャーが実際のプロジェクトで活用できる「標準的な手法」として位置づけられ、細かいものを含めると132個が定義されてますが、主なものを以下の説明します。
責任分担マトリックス(RAM)
責任分担マトリックス(RAM)は、プロジェクト内の各タスクや成果物に対する関係者の役割と責任を明確にするためのツールです。
一般的に、縦軸にプロジェクトの作業項目や成果物、横軸にプロジェクトメンバーや組織を配置した表形式で表現されます。
各セルには、責任のレベルを示す記号(例:R=責任者、A=承認者、C=協議者、I=情報提供者)が記入されます。これにより、誰が何に対して責任を持ち、誰に報告すべきかが一目で分かります。
RAMは、役割の重複や抜け漏れを防ぎ、コミュニケーションを円滑にし、チームの効率を高めます。
また、プロジェクトの進行中に責任の所在が不明確になることを防ぎ、スムーズな意思決定と作業の遂行を支援します。
データ分析技法
データ分析技法として27種類が定義されています。
コスト・ベネフィット分析は、プロジェクトの経済的価値を評価し、投資の妥当性を判断するために使用されます。
根本原因分析は、問題の表面的な症状ではなく、真の原因を特定するのに役立ちます。
その他、代替案分析、仮説検定、回帰分析なども含まれ、これらの技法を適切に活用することで、プロジェクトの様々な局面での意思決定や問題解決を支援します。
意思決定技法
意思決定技法として主に多基準決定分析と投票が挙げられています。
多基準決定分析は、複数の基準に基づいて選択肢を評価し、最適な選択を行うための手法です。
投票は、チームメンバーの意見を集約し、合意形成を図るために使用されます。
これらの技法を用いることで、客観的かつ透明性の高い意思決定プロセスを実現し、プロジェクトの方向性を決定する際の合意形成を促進します。
リスク分析手法
リスク分析は、主に定性的分析と定量的分析の2つに分けられます。
- 定性的リスク分析では、リスクの発生確率と影響度を主観的に評価し、優先順位付けを行います。ツールとしては発生確率・影響度マトリックスなどが用いられます。
- 定量的リスク分析では、リスクが与える影響を数値化して分析します。モンテカルロ分析や決定木分析などの手法が活用されます。
両分析とも、リスク登録簿を主要なインプットとし、分析結果はプロジェクト文書の更新として反映されます。
これらの分析を通じて、プロジェクトに重大な影響を与える可能性のあるリスクを特定し、適切な対応策を計画することが可能となります。
リスク分析は継続的なプロセスであり、プロジェクト全体を通じて定期的に実施されることが重要です。
EVM(アーンド・バリュー・マネジメント)
EVMは、プロジェクトの進捗とコストパフォーマンスを統合的に管理する手法です。
主要な指標として、計画値(PV)、実績値(AC)、出来高(EV)を用います。
これらを比較することで、コスト差異(CV)とスケジュール差異(SV)を算出し、プロジェクトの状況を客観的に評価します。さらに、コスト効率指数(CPI)やスケジュール効率指数(SPI)を計算し、プロジェクトの効率性を数値化します。
これにより、問題の早期発見と適切な対策立案が可能となり、プロジェクトの成功確率を高めることができます。
PERTとクリティカルパス法
スケジュール管理に使用されます。PERTは不確実性を考慮した見積もりを、クリティカルパス法はプロジェクト完了までの最長経路を特定します。
工数見積もり手法
プロジェクトの工数見積もりに関して、主に以下の手法が紹介されています:
- 類推見積り:
過去の類似プロジェクトのデータを参考にして工数を見積もる手法です。類似点と相違点を考慮しながら、過去の実績を基に現在のプロジェクトの工数を推定します。 - パラメトリック見積り:
統計的な関係や数学的なモデルを使用して工数を見積もる手法です。
ファンクションポイント法、COCOMO法、プログラムステップ法などがこれに含まれます。
プロジェクトの特定のパラメータ(規模や複雑さなど)と工数の関係を数式化して見積もりを行います。 - ボトムアップ見積り:
プロジェクトを細分化し、最小単位の作業から積み上げて全体の工数を見積もる手法です。
WBS(Work Breakdown Structure)の最下層から順に工数を積算していきます。 - 三点見積り:
楽観的な見積り(最小値)、最も可能性の高い見積り(最頻値)、悲観的な見積り(最大値)の3つの値を使用して工数を見積もる手法です。
これにより、不確実性を考慮した見積りが可能になります。 - データ分析技法:
代替案分析やコスト便益分析などを用いて、最適な工数見積りを行う手法です。 - プロジェクトマネジメント情報システム(PMIS):
ソフトウェアツールを使用して工数見積りを支援する方法です。
PMBOK第6版では、これらの手法を状況に応じて適切に選択・組み合わせることが推奨されています。 また、見積りの精度向上のために、過去のデータの活用や専門家の判断の導入なども重視されています。
工数見積りは単なる数値の算出ではなく、プロジェクトの成功に直結する重要なプロセスとして位置づけられています。
品質管理手法
QC七つ道具やデザイン・フォー・エックスなどがあり、品質の計画、管理、改善に活用されます。
これらの「ツールと技法」を適切に組み合わせることで、効果的なプロジェクト管理が可能となります。
QC七つ道具は、品質管理や品質改善活動において広く使用されるデータ分析ツールの総称です。以下にQC七つ道具の概要を説明します:
- パレート図:
問題の重要度を視覚化するツールです。問題の種類や原因を発生頻度の高い順に並べ、累積比率を示すことで、重点的に取り組むべき課題を特定します。 - 特性要因図:
魚の骨のような形状から「フィッシュボーン図」とも呼ばれます。問題の原因を体系的に整理し、主要因と副次的要因の関係を明確にします。 - グラフ:
データの傾向や変化を視覚的に表現します。折れ線グラフ、棒グラフ、円グラフなど、目的に応じて適切なグラフを選択します。 - チェックシート:
データを効率的に収集・記録するためのフォーマットです。発生頻度や特性値を簡単に記録できるよう設計されています。 - ヒストグラム:
データの分布状態を視覚化するツールです。測定値や頻度を棒グラフで表し、ばらつきの状態を把握します。 - 散布図:
2つの変数間の関係を視覚化するツールです。相関関係の有無や強さを判断するのに役立ちます。 - 管理図:
プロセスの安定性を監視するツールです。時系列データをグラフ化し、管理限界線を設けることで、異常な変動を検出します。
これらのツールを適切に使用することで、問題の把握、原因分析、改善策の立案と効果確認など、品質管理のさまざまな局面で効果的なデータ分析が可能となります。
QC七つ道具は、製造業だけでなく、サービス業や事務作業など幅広い分野で活用されています。
ベストプラクティスの集積
PMBOK第6版は、長年にわたるプロジェクトマネジメントのベストプラクティスを集大成しています。
プロジェクトマネジメントの「標準」を提供することで、組織がプロジェクトの成功確率を高めるための指針を得ることができます。
CMMIもおさえておこう!
CMMI(Capability Maturity Model Integration)は、ソフトウェア開発プロセスの改善を支援するためのフレームワークです。
ソフトウェア開発では、プロジェクトが計画通りに進むことや、品質を保つことが非常に重要です。
CMMIは、プロジェクトをよりスムーズに進めるための標準的なやり方を提供し、開発チームが効率的に働けるようにします。
具体的には、開発の各段階(例えば要件定義、設計、実装、テストなど)でどのようにプロセスを進めるべきかをチェックし、必要な改善を行うことで、プロジェクトの成功に貢献します。
PMBOKとの関係
CMMIはソフトウェア開発プロセスの改善に特化しているのに対し、PMBOKはプロジェクトマネジメントのガイドラインを提供します。
PMBOKが「プロジェクトをどう管理するか」に焦点を当てる一方で、CMMIは「プロセスをどう改善し、効率を高めるか」に重点を置いています。
両者は相互補完的であり、組織がプロジェクトを成功に導くために役立つフレームワークです。
レベル | 名称 | 説明 |
---|---|---|
1 | 初期段階 | プロセスは無秩序で、定義が不足している状態です。 |
2 | 管理された段階 | 基本的なプロジェクト管理ができており、繰り返しが可能な状態です。 |
3 | 定義された段階 | プロセスが標準化され、組織全体で一貫して実行されています。 |
4 | 定量的に管理された段階 | プロセスのパフォーマンスがデータを使って測定・管理されています。 |
5 | 最適化された段階 | プロセスが常に改善され、最適化が図られています。 |
PMBOK第7版の目的と特徴
第7版に移行すると、大きな変化が見られます。
PMBOK第7版は、従来のプロセス重視のアプローチから脱却し、より柔軟で成果志向のプロジェクト
マネジメントに焦点を当てています。
このバージョンの目的は、急速に変化するビジネス
環境に対応し、プロジェクトの成功を支援するための原則と価値基準を提供することです。
特徴として、従来の「プロセス群」に代わり、
「原則ベースのアプローチ」が採用されています。
これにより、プロジェクトの成果を最大化するため
の12の原則が提示され、プロジェクトの柔軟性が
重視されます。
また、「プロジェクトパフォーマンスドメイン」として8つの領域(例:ステークホルダー、チーム、開発アプローチなど)が導入され、プロジェクトマネージャーは状況に応じたアプローチを取ることが推奨されます。
原則ベースのアプローチ
第7版では、従来のプロセス群の考え方から一歩進んで、原則(プリンシプル)ベースのアプローチに移行しています。
これは、プロジェクトをどのように進めるべきかという「手段」ではなく、プロジェクトの「目的」や「価値」にフォーカスしています。
「原則ベースのアプローチ」は12個ありますが(後述)、ここではその考え方を直感的に理解できるよう具体例をいくつか紹介します。
- 価値に焦点を当てる原則の適用:
プロジェクトの成功を単なる納期やコストの達成ではなく、ステークホルダーにとっての価値創出という観点から評価します。
例えば、プロジェクトの途中で顧客のニーズが変化した場合、柔軟に対応して最終的な価値を最大化することを重視します。 - リスク対応の最適化:
リスクを単に回避するのではなく、機会としても捉え、プロジェクト全体の価値を高めるために最適な対応を選択します。
例えば、新技術の採用によるリスクと機会を慎重に評価し、プロジェクトの価値向上につながる判断を行います。 - 適応力と回復力の重視:
計画通りに進まない状況に柔軟に対応できる能力を重視します。
例えば、予期せぬ問題が発生した際に、チームが迅速に代替案を検討し、実行できるような体制を整えます。 - ステークホルダーとの効果的な連携:
プロジェクトの成功にはステークホルダーの協力が不可欠であるという認識のもと、積極的なコミュニケーションと関係構築を行います。
例えば、定期的なステークホルダーミーティングを開催し、プロジェクトの進捗や課題を共有します。 - 状況に応じたテーラリング:
プロジェクトの特性や環境に合わせて、適切なアプローチやツールを選択します。
例えば、小規模プロジェクトでは簡略化したプロセスを採用し、大規模プロジェクトではより詳細な管理手法を適用するなど、柔軟に対応します。
これらの例は、PMBOK第7版が提唱する原則を実際のプロジェクト管理に適用する方法を示しています。
プリンシプルベースのアプローチにより、プロジェクトマネージャーはより柔軟かつ効果的にプロジェクトを管理できるようになります。
原則ベースのアプローチは以下の12個です。
- スチュワードシップである(倫理観を持ってプロジェクトに取り組む)こと
- 協働的なプロジェクトチームの環境を作る
- ステークホルダーと効果的に連携する
- 価値に焦点を当てる
- システムの相互作用を認識し、評価・対応する
- リーダーシップを行動で示す
- 状況に基づいたテーラリング
- プロセスと成果物に品質を組み込む
- 複雑性に適応する
- リスク対応を最適化する
- 適応力と回復力を持つこと
- 将来の状態を達成するために変化する
成果物とアウトカムにフォーカス
第7版は、プロジェクトの成功をプロセスや手順の順守だけでなく、最終的なアウトカムや成果物の価値に基づいて判断します。
これにより、プロジェクトマネージャーは、計画やプロセスだけでなく、実際に生み出される価値に対して責任を持つことが求められます。
これが、アジャイルやハイブリッド型のプロジェクトでより効果的に機能します。
「成果物(deliverable)」と「アウトカム(outcome)」という似たような用語が使われいますが、それはなぜでしょうか?
ザクッというとプロジェクトや業務の進行における異なる側面や価値を表現したいからです。
- 成果物(deliverable):
成果物は、プロジェクトや業務の過程で物理的に生成されるものや、具体的な提供物を指します。
例えば、レポート、設計図、ソフトウェアのコード、製品のプロトタイプなどが成果物に該当します。
これはプロジェクトの進行中に、ステークホルダーに対して報告や確認を行うための具体的な形のあるものです。 - アウトカム(outcome):
一方、アウトカムは、成果物が生み出す結果や影響、つまりプロジェクトや業務を実行することで得られる価値や効果を指します。
アウトカムは、たとえば「顧客の満足度向上」や「売上の増加」、「業務プロセスの効率化」といった、目標達成の度合いや価値の創出に関わるものです。成果物自体がもたらす結果や、ビジネス上の変化を評価するために使われます。
簡単に言うと、成果物は「何を作ったか」であり、アウトカムは「その成果物によってどんな効果や結果が得られたか」という違いがあります。
柔軟なフレームワーク
第6版のように具体的な知識エリアやプロセスに囚われず、プロジェクトの状況に応じて柔軟にアプローチを変えることが奨励されています。
たとえば、スタートアップのプロジェクトではスピードと適応力が重要であり、規模の大きなプロジェクトでは従来のような詳細なプロセスが求められるかもしれません。
第7版では、これらの異なるプロジェクトに対応できる柔軟な枠組みが提供されています。
マネジメントアプローチの違い
第6版と第7版の最大の違いは、プロジェクトマネジメントにおけるアプローチの変化です。
第6版が「計画主導型」なのに対して、第7版は「適応型」のアプローチを強調しています。
これは、プロジェクトの複雑性が増し、変化が激しい現代のビジネス環境に対応するためです。
計画主導型 vs. 適応型
第6版では、最初に詳細な計画を立て、その計画に基づいてプロジェクトを進めていくというアプローチが基本です。
一方、第7版では、プロジェクトの途中で状況が変わることを前提に、適応的にマネジメントすることが重要とされています。
これにより、プロジェクトの変化や不確実性に対して迅速に対応することができます。
アジャイルとの統合
第7版では、アジャイルなアプローチが正式に取り入れられています。
アジャイルフレームワークでは、スプリントやインクリメンタルなアプローチを通じて、頻繁なフィードバックと適応を行います。
これにより、チームは早い段階で顧客のフィードバックを受け取り、プロジェクトの方向性を調整できるため、より高い顧客満足を得ることができます。
アジャイル開発の定番となったSCRUMとは
SCRUM(スクラム)は、アジャイル開発手法の一つで、複雑かつ変化の激しいプロジェクトにおいて、柔軟かつ効率的に対応するためのフレームワークです。
SCRUMは、プロジェクトを反復的な短期間の作業サイクル「スプリント」に分割し、各スプリントの終了時に動作する成果物を納品することを目指します。
スプリントは通常1~4週間の期間で行われ、スプリントごとに計画、開発、レビュー、振り返りを行い、継続的な改善を図ります。
SCRUMには3つの主要な役割があります。
- プロダクトオーナーは、製品のビジョンを示し、優先順位を決定します。
- スクラムマスターは、チームがSCRUMの原則に従い、スムーズに進行できるよう支援します。
- 開発チームは、自律的に作業を進め、スプリント内での目標達成に責任を持ちます。
また、SCEUMの特徴として、日々の短い「デイリースクラム」ミーティングがあり、進捗を確認し、問題解決を行うことで、チームの連携を強化します。
このようにSCRUMは、変化に対応しながら高品質な製品を迅速に提供することを目的とした開発手法です。
SCRUMに関しては多くの書籍が出版されてますので興味のある方はそちらを参照してください。
プロジェクトマネージャーの役割の進化
第6版では、プロジェクトマネージャーはプロジェクトの進行管理者として、計画通りに物事を進めることが求められていました。
しかし、第7版では、プロジェクトマネージャーの役割がより戦略的なものに進化しています。
リーダーシップとチームビルディング
第7版では、プロジェクトマネージャーにはリーダーシップスキルやチームビルディングスキルがより強く求められるようになりました。
特にアジャイルプロジェクトでは、自己組織化されたチームが重要であり、マネージャーはチームのサポート役として機能します。
ステークホルダーマネジメント
第7版では、プロジェクトマネージャーはステークホルダーと密接に連携し、彼らの期待を理解し、プロジェクトが最大限の価値を提供できるように調整することが求められます。
これにより、プロジェクトの成功がより長期的かつ戦略的な視点から捉えられるようになります。
第6版から第7版への移行のメリットと課題
柔軟性の向上
第7版への移行により、プロジェクトマネジメントはより柔軟で適応的なアプローチが取れるようになりました。
これにより、変化の激しいプロジェクト環境においても、迅速かつ効果的に対応できるようになります。
標準化の喪失のリスク
一方で、第6版のような詳細なプロセスや手順が明示されていないため、特に初心者にとっては「どこから始めればいいのか」が分かりづらいという課題もあります。
この点では、第6版の明確なフレームワークを活用しつつ、第7版の柔軟性を取り入れることが理想的です。
結論
PMBOK第6版と第7版は、それぞれ異なるアプローチを提供し、プロジェクトマネジメントの進化を反映しています。
第6版はプロセス重視の計画型アプローチで、特にウォーターフォール型のプロジェクトに適していますが、第7版は価値と成果物にフォーカスした適応型のアプローチで、アジャイルや複雑なプロジェクト環境での柔軟性を強調しています。
プロジェクトマネージャーとしては、両方のアプローチを理解し、プロジェクトの状況に応じて最適な手法を選択することが重要です。
以上