※本記事は2023年3月24日の実受講記録をもとに、2026年時点の読者向けに情報を整理・更新しています。
「鞄をなくしそうな部長には、南京錠で鞄を括り付ければいい」。一見すると立派なリスク回避策だが、講師から返ってきたのは「部長に怒られるという二次リスクがあります」という指摘だった。
プロジェクトマネジメントを学ぶ意味は、用語を覚えることではなく、こうした「対策の先に何が起きるか」まで考えられるようになることにある。
2023年3月、社内のPM力向上を目的に、アイシンク株式会社「プロジェクトマネジメント基礎講座」を社員に受講してもらった。これは、その社員が残した実受講記録である。
1日で手に入ったのは、PMとして完成するための答えではない。プロジェクト全体を見渡すための「最初の地図」だった。
✅ 先に結論
評価対象:2023年3月24日に社員が受講した講座内容です。現在のプログラムや提供条件を評価したものではありません。
受講社員は、アイシンク株式会社の「プロジェクトマネジメント基礎講座」について、これからPMを目指す人や、プロジェクトマネジメントを体系的に学んだ経験がない人が、全体像を1日でつかむには有用な研修だったと評価しています。
- 良かった点:プロジェクト憲章、WBS、スケジュール、リスク、変更管理までPM業務を一通り俯瞰できる。
- 特に印象に残った点:グループワークを通じて、ステークホルダー、リスク対応、残存リスクなどを具体的に考えられる。
- 物足りなかった点:実務の高度な判断や炎上案件への具体的な対処法まで深掘りする講座ではなく、後半はやや駆け足だった。
受講報告書からは、基礎知識を得る講座として有用であり、受け身で聞くだけでなく、自分の現場へ当てはめながら参加するほど学びが大きくなることが読み取れました。
アイシンク「プロジェクトマネジメント基礎講座」を受講した背景
社内のプロジェクトマネジメント力向上を目的に、2023年3月、社員に1日型の基礎講座を受講してもらった記録である。
プロジェクトマネジメント力を向上させるため、アイシンク株式会社の「プロジェクトマネジメント基礎講座」を社員に受講してもらいました。本記事では、その社員から提出された報告書をもとに、実際の講座内容と受講後の所感を紹介します。
本記事で紹介する内容は2023年3月24日時点の受講内容と所感です。現在の講座内容、料金、PDU、開催形式などは変更されている可能性があります。最新情報は提供元の公式ページをご確認ください。
受講した講座:アイシンク株式会社「プロジェクトマネジメント基礎講座」
受講した講座
当時受講したのは、PM経験者だけでなく、これからPMを目指す人も対象にした1日完結型の基礎講座でした。
- 研修:『プロジェクトマネジメント基礎講座』アイシンク社
- 日程:2023年3月24日 9:30〜17:30(昼休み12:00〜13:00)
- 講師:アイシンク 山本氏
- 参加者:11人(ソフトウェア開発、広告、機械製造など)
- 会場:オンライン研修(Zoom、常時顔出し・発言時マイクON)
- 配布資料:テキスト約80ページ、グループワーク用の演習資料5題程度
※受講者以外への展開禁止の資料でした。
受講者はどんな人だったか
事前アンケートでは、受講者ごとに参加目的が確認されていました。実際には、これからPMを目指す人から、すでにPM経験があり課題解決のヒントを得たい人まで、参加目的には幅がありました。
- これからPMになるうえでの初歩学習
- PM経験者として現在の課題を解決したい
- プロジェクト炎上時の対策方法を知りたい
- 見積精度を上げたい
講座内容――1日でPM業務の全体像を学ぶ
講座はプロジェクトの基本概念から、憲章、WBS、スケジュール、リスク、変更管理、終結までを1日で俯瞰する構成だった。
プログラムメニュー
講座は、プロジェクトの基本概念から始まり、プロジェクト憲章、WBS、スケジュール、コスト、リスク、実行・監視・終結まで、プロジェクトマネジメント全体を1日で俯瞰する構成でした。
- 午前(9:30〜12:00/1時間ごとに10分休憩)
・事前アンケート結果共有
・プロジェクトの歴史
・プロジェクトの特徴、成功基準
グループワーク①:自分視点/他者視点でのプロジェクト成功基準を考える
・プロジェクトマネジメントとは
・プロジェクトマネージャーの特徴 - 午後(13:00〜17:30/1時間ごとに10分休憩)
・プロジェクトマネジメント・プロセス(当時の受講資料ではPMBOKを基礎として説明)
・立ち上げプロセス
・プロジェクト憲章
グループワーク②:プロジェクト憲章を作成する
・ステークホルダーの特定
・計画プロセス
・スコープ計画(WBS)
・リソース計画(RAM、内外製分析)
・スケジュール作成(クリティカルパス法)
・コスト計算
・リスクマネジメント
・リスク特定
・リスク対応策(回避、軽減、受容など)
グループワーク③:鞄をなくしそうな部長へのリスク対応策を考える
・実行プロセス
・チームビルディング
・監視・コントロールプロセス
・進捗管理
・スコープ変更管理
・リスク監視
・終結プロセス
・リソースの解放
・最終報告書 - 終了後(17:30〜)
・受講後アンケート提出
・質問時間
・各自退出
グループワークで何を学んだのか
座学だけでなく、成功基準、プロジェクト憲章、リスク対応を自分で考えることで、PMの判断を具体的に体験できた。
① 自分視点・他者視点でプロジェクトの成功基準を考える
個別シンクタイム:3分/グループトーク:7分/グループ発表:10分
Q. どうなるとプロジェクト成功と思うか、自分視点と他者視点で考えてみよう
自分視点の回答例
- プロジェクトメンバーのスキルアップ
- 顧客との契約拡大
- メンバーの収入
- 成果物の提出
他者視点の回答例
- 要望の満足
- 利益
- 成果物の活用
- 自社の社会的価値向上
- 付加価値提供
受講者の気づき
参加者の回答は比較的似ており、内容自体は実務経験があれば想像できる範囲でした。一方で、同じプロジェクトでも、顧客・メンバー・会社・管理者によって「成功」の定義が異なることを意識するきっかけにはなったと、受講社員は振り返っています。
受講報告書に記録された講師コメントの要旨
- プロジェクトには、さまざまな立場の人から異なる期待があることを理解する。
- プロジェクトマネジメントでは、それらの期待に優先順位をつけ、最大限応えていくことが重要。
② プロジェクト憲章を作成する
個別シンクタイム:15分/グループトーク:15分/グループ発表:20分
Q. 自分が実際に関わっているプロジェクトなどをもとに、プロジェクト憲章を作成してみよう
記入した項目は、プロジェクト番号、プロジェクト名、背景、目的、目標予算、成果物、納期、終了条件などです。受講した社員は「PM育成プロジェクト」として記入し、他の参加者は実際に関わっているプロジェクトを題材にしていました。
受講者の気づき
目的欄や成果物欄には、顧客からの要求だけでなく、プロジェクト側・自社側の目的を書いている参加者もいました。「顧客の要求を満たすこと」と「自社として何を実現したいか」を分けて考える視点は、実務でも有用だと受講社員は感じています。
受講報告書に記録された講師コメントの要旨
- 目的欄や成果物欄には、顧客要求だけでなくプロジェクト側の目的を書いてもよい。
- 自社側と顧客側の目的・成果物を最初から分けて記載するプロジェクト憲章の書式を使う企業もある。
③ 鞄をなくしそうな部長へのリスク対策
個別シンクタイム:15分/グループトーク:15分/グループ発表:20分
Q. 新入社員歓迎会に参加する部長が、酔ってお気に入りの鞄をなくす可能性がある。部下としてリスク対策を考えよう
回避策、転嫁策、軽減策、受容策(積極的・消極的)を考える演習でした。受講社員は回避策として「部長に鞄を南京錠で括り付ける」という案を出しました。
受講報告書によると、講師からは「部長に怒られるという二次リスクが生じる」との指摘がありました。
また「鞄にGPSを取り付ける」という案については、受講報告書には「紛失自体を防ぐ対策ではなく、紛失した際に効果を発揮するため、積極的受容策と考えられる」と説明された旨が記録されています。
※リスク対応の分類は、何をリスク事象として定義するかによって変わります。GPSによって回収不能となる可能性や損失影響を低減すると捉える場合は、軽減策として解釈する余地もあります。
受講者の気づき
それまでリスク対策を「回避・転嫁・軽減・受容」といった区分で整理した経験がなく、対策の性質や残存リスクを構造的に考えられる点が分かりやすいと、受講社員は振り返っています。
受講報告書に記録された講師コメントの要旨
- 二次リスク、残存リスクまで考慮する。
- 例えば軽減策を取っても、リスクが完全になくなるとは限らない。
- リスク許容度が分からなければ、合理的なリスクマネジメントはできない。
講師からは、リスク許容度を考える例として、次の問いも出されたと受講報告書には記録されています。
- 勝てば1万円、負ければ100円のじゃんけん → 100円ならリスクを受容できる可能性が高い。
- 勝てば1億円、負ければ100万円のじゃんけん → 100万円の損失を許容できるか、事前にリスク対策費を確保するかなど、判断が必要になる。
受講して学んだプロジェクトマネジメントの基本
進捗表を作ることがPMではなく、目的、スコープ、ステークホルダー、リスクを整理し、プロジェクト全体を制御することが基本である。
受講社員は、プロジェクトマネジメントについて、単に進捗を管理することではなく、要求事項を満たすために、知識・スキル・手法をプロジェクト活動へ適用することだと整理しています。
- プロジェクトの特徴は「有期性」と「独自性」である。
- 自分のプロジェクトに目的と目標が明記されているか確認する。
- プロジェクトにはさまざまな人の期待があり、優先順位をつけて対応する必要がある。
- スコープクリープを抑えるため、スコープの明確化・共有と除外事項の明確化を行う。
- QCDだけでなく、リソースや不確実性も管理する必要がある。
- 当時の講座では、PMBOK第6版に近いプロセス思考を軸に、計画の重要性が強く説明されていた。
- 行政機関や規制当局もステークホルダーとして捉え、法律・規制はプロジェクトへ影響する外部条件や遵守要件として考える。
- ステークホルダーは、できるだけ早期に洗い出し、影響度や関与度に応じて優先順位をつけて対応する。
- 過去案件のWBSは有用な資産だが、そのまま流用するのではなく、今回のプロジェクトに合わせて使う。
なお、現在のPMBOKでは、計画だけでなく、価値・適応・テーラリングも重視されています。最新版との違いについては、PMBOK第8版とは?第6版・第7版との違いと使い分け【2026年版】で詳しく整理しています。
実際に受講して良かった点・物足りなかった点
PM初心者が全体像をつかむには有用だった一方、実務の高度な判断や炎上案件への具体策まで学ぶ講座ではなかった。
良かった点
- 受講社員は、PM初心者がプロジェクトマネージャーの仕事の全体像を1日でつかむうえで有用だったと評価しています。
- 約80ページのテキストは情報量が多いものの、講師の説明は分かりやすかったと報告しています。
- PM経験やPMBOKの知識がなくても、プロジェクトにメンバーとして関わった経験があれば、内容は十分理解できたとしています。
- グループワークを通じて、プロジェクト憲章やリスク対応を自分で考える機会がありました。
2023年当時はPMBOK第6版に近い内容だった
2023年3月に受講した当時の研修内容やテキストは、受講社員にはPMBOK第6版に近いプロセス中心の構成と感じられたとのことです。
これは本記事で紹介している2023年当時の所感であり、現在の講座内容が同じであることを意味するものではありません。PMBOK自体もその後進化しており、第7版、第8版では原則、価値、アウトカム、テーラリング、パフォーマンスドメインといった考え方がより前面に出ています。
物足りなかった点
受講報告書では、基礎講座として全体像を学ぶ内容が中心で、実際の炎上案件への対処法や、現場で使える細かなPMのコツまで深掘りする講座ではなかったと振り返っています。
また、16時頃から後半の「実行・監視・コントロール・終結」部分が駆け足となり、実務への落とし込みや参加者同士の振り返りに十分な時間が取れなかった点は残念だったとしています。
受講報告書によると、終盤には参加者からの発言が少なくなり、終了後の質問時間に質問したのは受講社員のみでした。1日で広い範囲を扱う講座だからこそ、事前に自分の課題を整理し、講義内容を現場へ当てはめながら参加することが重要だと考えられます。
どんな人に向いている研修か
PM経験が浅く、プロジェクトマネジメント全体を体系的に一度整理したい人ほど、受講効果を得やすい講座である。
今回の受講経験から考えると、次のような方には特に向いていると考えられます。
- これからPMやプロジェクトリーダーを目指す人
- メンバー経験はあるが、PM業務全体を体系的に学んだことがない人
- WBS、リスク、ステークホルダー、プロジェクト憲章などを一度整理したい人
- 自己流でプロジェクトを管理してきたため、基本へ立ち返りたい人
一方で、すでに大規模案件を何度も率いているPMや、炎上案件の立て直し、契約交渉、組織政治、複雑なリスク対応など、高度な現場ノウハウを求める人にとっては、既知の内容が多い可能性があります。
まとめ――PM初心者が「全体地図」を持つには有用だった
この研修の価値は高度なPMノウハウではなく、プロジェクトマネジメント全体を一度俯瞰し、自分に足りない知識を把握できる点にある。
2023年に社員が受講したアイシンク株式会社の「プロジェクトマネジメント基礎講座」について、受講社員は、これからPMを目指す人や、プロジェクトマネジメントを体系的に学んだ経験がない人が、全体像を1日でつかむには有用な研修だったと評価しています。
特に、プロジェクト憲章、WBS、ステークホルダー、リスク対応といったPMの基本要素を、グループワークを交えながら一通り経験できた点は有益でした。一方で、実務の高度な判断や炎上案件への具体的な対処法まで求める場合は、この講座だけでは物足りない可能性があります。
この講座を「PMになれる完成講座」と考えるより、プロジェクトマネジメントという広い世界の全体地図を最初に手に入れる場と考えると、価値が分かりやすいでしょう。
地図を手に入れた後に必要なのは、自分の現場でどこに迷い、どの道具を学び直すべきかを見つけることです。
PMとしての体系的な知識や資格取得まで考えている方は、PMP資格とは?2026年新試験・ECO・勉強法とAI時代のプロマネ像も参考にしてください。
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更新履歴
- 2026年9月27日:2023年の実受講記録を保持したまま、体験レビューとして再構成。受講社員・講師・編集部の視点を分離し、GPSのリスク分類、法律・規制の扱い、PMBOK第8版・PMP関連記事への内部リンクを更新。
- 2023年4月6日:初版公開。