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プロジェクトマネジメント

【2025年】プロマネを目指す方必見:PMP資格ってなんだ?

【2025年】プロマネを目指す方必見:PMP資格ってなんだ?

【2025年】プロマネを目指す方必見:PMP資格ってなんだ?

筆者からひとこと。

筆者は、大手電機メーカー在籍時にプロジェクトマネージャーとして、さまざまなプロジェクトに携わってきました。インドや中国、オーストラリアなどの海外拠点でオフショア開発を経験し、異なる文化背景を持つチームとの協働を通じて多くを学びました。また、アジャイル開発については、日本での草分け的存在である平鍋健児氏(現エイワシステムマネジメント代表)のご指導を受ける機会に恵まれ、いくつかのプロジェクトを通じて実践的な知見を得ることができました。

その後、本社の社長直轄組織において、自社や関連グループ企業を対象にプロジェクトマネージャーの育成やサポートに取り組み、少しでも組織の力になれるよう努めてきました。

これらの経験を基に、本記事では若手エンジニアの皆さんの一助となる情報をお伝えしたいと考えています。プロジェクトマネジメントについて、少しでも新たな視点や実務に役立つヒントを得ていただければ幸いです。

はじめに

PMP資格取得を目指す方々にとって、効率的な学習法の習得は成功への近道です。
本記事では、PMBOKとアジャイル実務ガイドの理解を通じて、実践的な試験対策を解説します。
プロジェクトマネージャー経験者も初学者も、PMP資格の本質を直感的に把握できるよう、最新の試験傾向や重要ポイントを包括的に紹介します。
2025年のPMP試験に向けた効果的な準備方法を学び、プロジェクトマネジメントスキルの向上を目指しましょう。

PMP資格って必要なの?

何故PMP資格なのか?PMP資格は、プロジェクトマネージャーとしてのキャリアを飛躍的に向上させる鍵となります。その準備を通じて得られるスキルは、試験合格に留まらず、日常業務での課題解決能力をも高めるでしょう。

PMP試験合格は、単なる資格取得に留まらず、実務で直面する課題への応用力を高める重要なステップです。PMBOK第6版、第7版、プロセス群実務ガイド、アジャイル実務ガイドの学習を通じて、予測型・アジャイル型プロジェクトの両方で活躍できる柔軟なスキルを身につけることが可能です。

例えば、SAP S/4 HANA導入プロジェクトや金融系システム開発のPMO業務など、PMP資格が必須とされる案件では、高度なプロジェクト管理スキルが求められます。

さらに、PMP資格はIT分野だけでなく、公共セクターや製造業など、幅広い業界で求められており、資格保有者はこれらの分野での大規模プロジェクトや高年収案件に挑戦するチャンスを得ることができます。

PMP試験対策・いっき見

この記事の目的は、2025年のPMP試験対策の基礎を包括的に解説し、プロジェクトマネージャーを目指す方々に向けて重要な情報を提供することです。以下に主要なポイントをまとめます。

PMP試験の最新動向

2025年のPMP試験は、以下の特徴を持つと予想されます。

  • PMBOKガイド第7版とアジャイル実務ガイドに基づいた出題
  • 予測型、アジャイル型、ハイブリッド型のプロジェクトマネジメントアプローチをカバー
  • 「人」「プロセス」「ビジネス環境」の3つのドメインに基づく出題構成

効果的な教材

ECO(Examination Content Outline)の理解:
PMP試験の出題範囲を示す重要な指針で、「人」42%、「プロセス」50%、「ビジネス環境」8%の割合で構成されています。試験準備の軸として活用できます。

PMBOK第6版と第7版の統合的理解:
第6版は10の知識エリアと5つのプロセス群、第7版は12の原理・原則と8つのパフォーマンス・ドメインを中心に、異なる視点での統合的理解が求められます。

アジャイル実務ガイドの重要性:
アジャイルの基本概念、ライフサイクル、チーム構成などを包括的に学べるガイドで、柔軟なプロジェクト管理スキルの習得に役立ちます。

プロセス群実務ガイド:
PMBOK第6版を補完し、予測型アプローチに基づく具体的なプロセスの適用方法を詳細に解説するガイドで、実践的なプロジェクト運営スキルを養います。

推奨される学習リソース

PMP試験対策には、公式eラーニングや参考書、問題集を活用することが推奨されます。・

  • PMI認定の「オンデマンド試験対策コース(35時間)」ではECOに基づく模擬問題を提供。
  • 参考書には「PM教科書 PMP完全攻略テキスト」や英語版の「PMP Exam Prep」があります。
  • さらに、オンライン問題集「PMP道場」では360問の無料問題が利用可能で、総合的な試験準備ができます。

試験準備のポイント

  • 価値提供の視点を常に意識する。
  • プロセスと原理・原則を関連付けて理解する。
  • テーラリングの概念を理解し、適用する能力を高める。
  • 継続的な学習と実践を通じて判断力と適応力を磨く

学習時間の目安

PMP試験合格に必要な学習時間の目安は、人によりますが、筆者が大手電機会社に在職中はおおよそ60時間から150時間程度といわれてました。

  • 基本的な知識のインプット:50時間程度
  • 問題演習と模擬試験:30時間程度
  • 35時間の必須研修(PMP資格試験を受験するための前提条件の1つ)
  • 申し込みや手続きなど:数時間程度

※)筆者はプロマネ経験者だったため50時間程度で取得できましたが、受講生の中には300時間ぐらい勉強したという方もいらっしゃいました。いずれにしてもこの時間数は公式データではないことをお断りしておきます。

個人差による変動要因は主に3つ

  • プロジェクトマネジメント経験の有無
  • アジャイル開発の経験
  • 英語力(問題文は日本語訳も出ますが、訳文自体は保証はされてません)

PMP試験対策の教材たち

ECO (Examination Content Outline) の重要性

ECOは、PMI(Project Management Institute)が提供するPMP試験の出題範囲を示す重要な指針です。最新のECOは以下の3つのドメインで構成されています:

  1. 人(People):42%
  2. プロセス(Process):50%
  3. ビジネス環境(Business Environment):8%

各ドメインには複数のタスクが含まれ、それぞれに関連する知識やスキルが記載されています。ECOは予測型とアジャイル・ハイブリッド型のアプローチをバランスよく含み、試験準備の重要な指針となっています。

PMBOK第6版:予測型のプロジェクト管理アプローチ

PMBOK第6版:予測型のプロジェクト管理アプローチPMBOK第6版は、予測型プロジェクトマネジメントの基盤となる標準書でQCDを守るためのプロセスを重視したアプローチを提供します。

  • 10の知識エリア(例:スコープ管理、リスク管理)
  • 5つのプロセス群(立ち上げ、計画、実行、監視・コントロール、終結)

この版を学習することで、体系的なプロジェクト管理手法を習得し、予測型の手法に対する深い理解が得られます。

PMBOK第7版:現代のプロジェクト管理アプローチ

PMBOK第7版は、プロジェクトの価値提供に焦点を当てた現代的なアプローチを提供します。

  • 12の原理・原則
  • 8つのパフォーマンス・ドメイン

この版は、柔軟性と適応力が求められるプロジェクト環境に対応するための指針を示し、アジャイルやハイブリッド型の手法にも対応しています。

アジャイル実務ガイド:柔軟性と適応力を学ぶ

アジャイル実務ガイドアジャイル実務ガイドは、PMIとAgile Allianceが共同で作成した、アジャイルアプローチの包括的な解説書です。主な内容は以下の通りです:

  • アジャイルの基本概念:価値観、原則、マインドセット
  • アジャイルのライフサイクル:反復型、増分型、リーン、学習サイクル
  • アジャイルチーム:構成、役割、責任
  • アジャイルの実践:バックログ、ユーザーストーリー、見積もり、計画
  • デリバリー:継続的インテグレーション、テスト駆動開発、ペアプログラミング
  • パフォーマンス測定:ベロシティ、バーンダウンチャート、リードタイム
  • 組織的考慮事項:アジャイル導入、組織文化の変革

プロセス群実務ガイド

予測型アプローチの実践力を強化する重要ツールプロセス群実務ガイドは、PMBOK第6版の内容を補完し、予測型プロジェクトマネジメントの実践的な知識を提供する重要な教材です。
このガイドは、5つのプロセス群と49のプロセスを詳細に解説し、各プロセスのインプット、ツールと技法、アウトプットを明確に示しています。

PMP試験合格のための教材活用ガイド

PMP試験合格を目指すエンジニアの皆さん、試験対策には複数の教材を適切に組み合わせることが重要です。ここでは、主要な教材の特徴と効果的な活用方法を解説します。

PMBOK第6版:予測型アプローチの基礎を固める

PMBOK第6版は、予測型プロジェクトマネジメントの基盤を構築するための重要な教材です。このガイドは、プロジェクトを体系的かつ効率的に管理するための基本的な枠組みを提供し、初心者から経験者まで幅広いユーザーに対応しています。

内容の概要:
第6版は、10の知識エリアと5つのプロセス群(立ち上げ、計画、実行、監視・コントロール、終結)を中心に構成されています。
それぞれの知識エリアでは、プロセスのインプット、ツール・技法、アウトプット(ITTO)が詳細に解説されており、プロジェクトの具体的な進め方を理解するのに役立ちます。
また、用語集を活用することで、専門用語への理解を深め、プロジェクトマネジメントにおける共通言語を習得することができます。

学習方法:
まず、全体を通読して構造を把握し、PMBOK第6版の全体像を理解します。
その後、10の知識エリアごとに詳細を学習し、各プロセスのITTOについて具体的に理解を深めます。
さらに、プロセス間の関連性を意識しながら復習を行うことで、プロジェクト全体を一貫して管理する能力を養います。

PMBOK第6版は、予測型アプローチにおけるプロジェクトマネジメントの基礎を築くための最適なガイドです。この教材を活用して、体系的な知識を身につけることで、プロジェクトを効果的に管理し、成功に導くスキルを確立することができます。

PMBOK第7版:現代的アプローチと価値提供の視点を学ぶ

PMBOK第7版は、従来のプロセスベースのアプローチから脱却し、プロジェクトの価値提供に重点を置いた現代的な指針を提供しています。
このアプローチは、柔軟性を持ちながらも効果的にプロジェクトを管理するための新しい視点を提案しています。

内容の概要:
第7版は、12の原理・原則と8つのパフォーマンス・ドメインを中心に構成されています。原理・原則は、プロジェクトマネジメントの基本的な価値観や行動指針を示しており、これを具体的なシナリオに適用することで、効果的なプロジェクト運営が可能になります。
また、8つのパフォーマンス・ドメインは、プロジェクト全体を成功に導くための各要素がどのように連携するかを明確にしています。

テーラリングの重要性:
プロジェクトごとに特性が異なるため、第7版ではテーラリングの重要性が強調されています。これにより、プロジェクトの規模や目標に合わせて柔軟にアプローチを調整するスキルを習得できます。

学習方法:
まず、12の原理・原則を1つずつ丁寧に学び、具体例を考えることで理解を深めます。
次に、8つのパフォーマンス・ドメイン間の相互関係を図式化し、全体像を把握します。
また、第6版と第7版の違いを比較し、新しい概念を明確に理解することが重要です。

以上のように、PMBOK第7版は、価値提供を中心に据えた柔軟なプロジェクトマネジメントの指針を提供しています。
このガイドを活用することで、現代の複雑なプロジェクト環境に対応し、効果的な価値創出を実現できるでしょう。

プロセス群実務ガイド:予測型アプローチの実践力を養う

プロセス群実務ガイドは、PMBOK第6版を補完する資料として、予測型アプローチの具体的な実践方法を提供します。これは、ウォーターフォール型プロジェクトマネジメントを詳細に学びたい人にとって、貴重な指針となる教材です。

内容の概要:
このガイドでは、5つのプロセス群(立ち上げ、計画、実行、監視・コントロール、終結)と49のプロセスを中心に解説しています。各プロセスが果たす役割や、プロジェクト全体を円滑に進めるための具体的な適用方法を示し、実務に役立つ知識を身につけることができます。

テーラリングの重要性:
さらに、プロジェクト特性に応じたプロセス選択と調整を行うテーラリングの概念を強調しており、柔軟で実践的なスキルを養うことが可能です。

学習方法:
PMBOK第6版の知識エリアを基盤に、プロセス群間の関連性を理解し、実際のプロジェクトを想定したシナリオ練習を繰り返すことで、理論と実務を結びつける力を強化できます。

以上説明してきたように、プロセス群実務ガイドは、予測型アプローチの理解を深めるとともに、実践的なプロジェクトマネジメントスキルを向上させるための重要なツールです。

アジャイル実務ガイド:アジャイルアプローチを習得する

アジャイル実務ガイドは、アジャイルアプローチを学ぶための包括的な指針を提供する教材です。プロジェクト環境の変化に柔軟に対応し、チームが効率的に協働するための方法論を学ぶことができます。このガイドは、アジャイル初心者だけでなく、実務での応用を目指す経験者にも適した内容となっています。

内容の概要:
このガイドでは、アジャイルの基本概念や価値観が詳しく解説されています。
特に、アジャイルマニフェストで掲げられている4つの価値観と12の原則を基盤として、柔軟なプロジェクトマネジメント手法を学びます。
また、アジャイルライフサイクル(反復型、増分型、リーンなど)や、スクラムなどの具体的なフレームワークの詳細も解説されており、実践的なツール・技法を習得することができます。
さらに、ウォーターフォール型との違いを明確に把握することで、プロジェクトの特性に応じた最適な手法の選択が可能になります。

学習方法:
まず、アジャイルマニフェストを理解し、基本理念を学びます。
次に、スクラムやカンバンなどの具体的なフレームワークについて学習し、それぞれの適用例を検討します(この順序は逆でもまったく問題ありません)

さらに、予測型アプローチ(ウォーターフォール型)との比較を行い、それぞれの手法の長所と短所を把握します。その上で、プロジェクト環境に応じて適切な手法を選択する力を養います。

以上のように、アジャイル実務ガイドは、アジャイルアプローチの基礎から実践までを網羅した貴重な教材です。このガイドを活用することで、柔軟で効率的なプロジェクト運営を実現するための知識とスキルを習得することができます。現代の多様なプロジェクト環境に対応し、成功に導くための重要な指針となるでしょう。

統合的な学習アプローチ

これらの教材を効果的に組み合わせることで、包括的なプロジェクトマネジメントスキルを身につけることができます。

  1. PMBOK第6版で基礎を固める
  2. プロセス群実務ガイドで予測型アプローチの実践力を養う
  3. PMBOK第7版で現代的な視点と価値提供の考え方を学ぶ
  4. アジャイル実務ガイドでアジャイルアプローチを理解する
  5. 全ての教材を横断的に復習し、統合的な理解を深める

この学習順序に従うことで、伝統的なプロジェクトマネジメントの基礎から最新のアプローチまでを体系的に学ぶことができます。各教材の特徴を理解し、効果的に活用することで、PMP試験合格への道が開けるでしょう。

PMBOKの 第6版 vs 第7版

PMBOK第6版の「10の知識エリア」と第7版の「8つのパフォーマンス・ドメイン」は、直接的な1対1の対応関係はありません。
第7版では、プロジェクトマネジメントのアプローチが原則ベースに移行し、柔軟性と価値提供に重点を置いています。
以下に、第6版の知識エリアと第7版のパフォーマンス・ドメインの一般的な関連性を示します:

第6版の「10の知識エリア」と第7版の「8つのパフォーマンス・ドメイン」対応表
PMBOK第6版(知識エリア) PMBOK第7版(パフォーマンス・ドメイン)
プロジェクト統合マネジメント プロジェクト作業、ステークホルダー
プロジェクトスコープマネジメント デリバリー、計画
プロジェクトスケジュールマネジメント 計画、デリバリー
プロジェクトコストマネジメント 計画、デリバリー
プロジェクト品質マネジメント デリバリー、計画
プロジェクト資源マネジメント チーム、プロジェクト作業
プロジェクトコミュニケーションマネジメント ステークホルダー、チーム
プロジェクトリスクマネジメント 不確実性、計画
プロジェクト調達マネジメント プロジェクト作業、ステークホルダー
プロジェクトステークホルダーマネジメント ステークホルダー、チーム

【お願い】
この表は直感的にわかるように関連性を示したものですが、厳密な対応関係ではありません。詳細については、PMIの公式資料をご参照ください。

※)第6版vs第7版の詳細に関しては以下の記事を参照してください。
PMBOK第6版 vs 第7版:違いを直感的に理解するためのガイド

具体的な統合例

このあたりはPMBOKの歴史が絡んでくるので正直言ってなかなかしっくりきませんが、例えば以下のように整理してけるればPMP試験合格に確実に近づくと思いますよ。

ここでは「プロジェクトスコープマネジメント」の知識エリアを例に統合的な理解を深めましょう。

統合して理解する具体例:

  • パフォーマンスドメイン:「プロジェクト作業のパフォーマンス」に対応
  • 原理・原則:「価値を提供する」「全体論的なプロジェクトアプローチを用いる」に関連
  • プロセス群:主に「計画」と「監視・コントロール」に関連

例えば、新製品開発プロジェクトにおいて、顧客ニーズの変化に応じてスコープを柔軟に調整し、最大の価値を提供する。
同時に、全体的な影響を考慮しながら、変更管理プロセスを通じてスコープの変更を管理する、とかが考えられることが重要ですね。

問題練習

PMP資格取得には、よく単なる暗記ではなく「シナリオベース」とか「テーラリング」といわれるのは何故でしょうか?
これは実際のプロジェクトには全く同じものは存在せず、ましてや教科書通りには進まないことが現実にあるからですね。

そうなってくると、このような実践的な考え方を身に着ける最善策はやはり問題演習です。実践的な問題解決の練習を重ね、試験の問題型に慣れ、シナリオベースの問題に対応する力を養います。

例えば、「プロジェクト中盤でステークホルダーの要求が大きく変更された場合、どのように対応するか」といった問題に対し、統合的なアプローチで解決策を考えます。

テーラリングに関して、もう一つ例を示しましょう。
アジャイルと予測型のアプローチ(これはウォーターフォールと読み替えてください)を統合し、プロジェクト特性に応じて最適な手法を選択する能力を養います。

このテーラリングですが、実際のプロジェクトでもよく使われます。
逆にいうと目の前にあるプロジェクトの全体像を理解し的確にテーラリングできるプロマネが求められています。

実例:

例えば、ITインフラ更新プロジェクトにおいて、基盤構築には予測型アプローチを、ユーザーインターフェース開発にはアジャイルアプローチを適用するなど、プロジェクトの各フェーズや要素に応じて最適な手法を選択し、組み合わせることが重要です。

アジャイル実務ガイドって何?

まずは、アジャイル実務ガイドとSCRUMの違いを明確にしておきましょう。

アジャイル開発という意味ではこの両者は、クラス(アジャイル実務ガイド)とインスタンス(SCRUM)のようなものです。
この関係はウォーターフォール型でもいえることで、クラス(
PMBOK第6版:予測型)とインスタンス(ウォーターフォール開発)と同様の関係ですね。

あれ、ますます混乱? まあ結論から言うと、現実のプロジェクトではSCRUMが使われるでしょうから、まずこちらから学習してできれば実践した後、ガイドを流し読みする程度でよいのではないでしょうか?

アジャイル実務ガイドとSCRUMの違い

これは筆者の個人的な見解ですが、
歴史的な背景が関係しております。2000年代にはすでにSCRUMが誕生し、次第に多くの企業で採用されるようになりました。そして、2010年代に入ると「SCRUMをベースにしつつ、必要に応じてXP(エクストリーム・プログラミング)の手法を適用する」というアプローチが主流となってきました。

一方で、アジャイル実務ガイドの初版がリリースされたのは2017年9月のことです(PMIとAgile Allianceによる共同作業)。
たとえSCRUMが業界のデファクトスタンダードになっていたとしても、ガイドラインとしてそれを単純に踏襲するのではなく、より抽象度を高めた内容が求められました。
つまり、SCRUMをはじめとする実務の実態を分析し、それをクラス化・整理する形でアジャイル実務ガイドが構築されたといえます。

試験対策としてのアジャイル実務ガイド

PMP試験ではハイブリッド型を含めるとアジャイル系の問題が約50%を占めるため、このガイドの理解が不可欠です。
特に、レトロスペクティブを含む重要なアジャイル実務慣行を学ぶことが重要です。

シナリオベースの問題に挑戦!

シナリオベースの問題への対応PMP試験では、単なる用語の暗記ではなく、シナリオベースの問題が多く出題され、受験者の実践的な判断力が問われます。試験の約半分は予測型プロジェクトマネジメント・アプローチに関するもので、残り半分はアジャイル・アプローチまたはハイブリッド・アプローチに関するものです。これらの情報は、PMIの公式資料に記載されています。 

例題:「プロジェクト中盤で、チームのベロシティが低下し、スプリントゴールの達成が困難になっています。スクラムマスターとしてどのように対応しますか?

解答のポイント:

  1. チームとの対話を通じて問題の根本原因を特定する
  2. レトロスペクティブを活用して改善策を検討する
  3. 必要に応じてプロダクトバックログの優先順位を見直す
  4. ステークホルダーとのコミュニケーションを強化し、期待値を調整する

PMBOK第6版と第7版とプロセス群実務ガイドと・・

新たにプロセス群実務ガイドが登場

以下の表は、PMBOK第6版、PMBOK第7版に加えて「プロセス群実務ガイド」が出てきて次第にややこしくなってきましたので主な違いと学習方法を解説しますね。

3つのドキュメントの比較
特徴 PMBOK第6版 プロセス群実務ガイド PMBOK第7版
構成 10の知識エリアと5つのプロセス群 5つのプロセス群と49のプロセス 8つのパフォーマンスドメインと12の原理・原則
フォーカス QCD(品質・コスト・納期)の達成 予測型アプローチとウォーターフォール・アプローチ 価値の提供
アプローチ プロセスベース、詳細なITTO 第6版のプロセスアプローチを維持 原理・原則ベース、ITTOの記載なし
柔軟性 主にウォーターフォール型開発に適した内容 予測型アプローチに焦点 多様な開発手法に対応
位置づけ 従来のプロジェクトマネジメントの基準 第7版の補完資料 現代のプロジェクト環境に適応したフレームワーク

これら3つのガイドラインを効果的に学び、活用するための具体的な方法を以下に示します。

1. 全体像を理解する

  • PMBOK第6版は、基礎的なプロセスと詳細な手法を提供しています。初心者はここから始めるとよいでしょう。
  • プロセス群実務ガイドは、具体的なプロセスの適用例が豊富で、予測型アプローチを補完します。
  • PMBOK第7版は、価値提供を重視する抽象的な指針が中心であり、現代のプロジェクト環境に適応しています。

2.段階的に学習する

  • 基礎の習得:
    第6版でプロジェクトマネジメントの基本的な枠組み(知識エリア、プロセス群)を学ぶ。
  • 補完的な理解:
    プロセス群実務ガイドで第6版の理解を深めつつ、具体的な適用事例に触れる。
  • 価値視点を取り入れる:
    第7版で価値提供や柔軟性に重点を置いたアプローチを習得。

思考訓練に挑戦!

具体例1,リスクマネジメントを教材ベースで実践的に理解する

  • PMBOK第6版:
    リスク特定、リスク分析、リスク対応計画、リスクモニタリングの流れを学ぶ。
  • プロセス群実務ガイド:
    第6版のプロセスを活用した実際のプロジェクト事例を確認。
  • PMBOK第7版:
    「適応性と回復力を維持する」原則を適用し、リスク発生時の迅速な意思決定を練習する。

具体例2,テーラリングの適用例

  • 小規模プロジェクト: 第7版の原理・原則を参考に、簡略化したプロセスを設計。
  • 大規模プロジェクト: 第6版の詳細なプロセスを基盤に、第7版の価値提供視点を加味。
  • アジャイルプロジェクト: アジャイル実務ガイドを活用し、第7版の柔軟性を補強。

以上説明してきたように、PMBOK第6版、プロセス群実務ガイド、第7版は、それぞれ独自の強みを持つ補完的な資料です。これらを統合的に学習することで、理論と実践を兼ね備えたプロジェクトマネジメントスキルを身につけることができます。

最初に基礎を理解し、補完的な資料で具体例を学び、最後に価値提供視点を加える段階的な学習が成功の鍵です。

PMP試験で重視される「価値」について

価値提供の定義

PMBOKの第7版が出てきてクローズアップされてきたのが「価値の提供」とか「価値の創出」です。
プロジェクトの成果物が単なる納品物にとどまらず、ステークホルダーに具体的な価値をもたらすという認識が重要です。

実践例

 ❶ ステークホルダーの満足度向上:

  • スコープマネジメントで顧客の要求を適切に取り込む
  • リスクマネジメントで不確実性に対処し、価値提供を最大化する

 ❷ ビジネス価値の創出:

  • 投資対効果(ROI)を常に意識し、プロジェクトの意思決定に反映させる
  • 継続的な価値評価を行い、必要に応じてプロジェクトの方向性を調整する

 ❸持続可能な価値の実現:

  • 長期的な視点で価値を捉え、環境への影響や社会的責任を考慮する
  • ステークホルダーとの継続的な対話を通じて、価値の定義を更新し続ける

問題に挑戦!

シナリオベースの問題では、価値提供に関する判断力が問われるため、実務での適用例を意識した学習が重要です。以下のような問題に対応できるよう準備しましょう。

例題:「プロジェクトの納期が迫っていますが、主要ステークホルダーから新たな要求が出されました。この要求は製品の価値を大きく向上させる可能性がありますが、実装には時間がかかります。プロジェクトマネージャーとしてどのように対応しますか?」

解答のポイント:

  1. 新たな要求の価値と影響を分析する
  2. ステークホルダーとの対話を通じて、優先順位と期待値を調整する
  3. チームの能力と現在のプロジェクト状況を考慮し、実現可能性を評価する
  4. 価値提供を最大化するための選択肢を提示し、合意形成を図る
  5. 決定事項を文書化し、必要に応じてプロジェクト計画を更新する

 

まとめ

PMP試験対策では、PMBOK第6版、第7版、プロセス群実務ガイド、アジャイル実務ガイドといった多様な教材が登場するため、初めて取り組む方にとっては混乱を招くこともあるでしょう。しかし、プロジェクトマネジメントの本質は、これらの教材をそれぞれ理解しつつ、それらを適切に結びつけ、実際のプロジェクトに応用できるようにカスタマイズ(テーラリング)することにあります。さらに、シナリオベースで問題を解決する力を養うことが、成功への鍵となります。

また、「価値提供」の視点を常に意識し、プロジェクトマネジメントの各プロセスや原理・原則がどのように「価値創出」に貢献するかを深く理解することが重要です。この視点を持つことで、単なる試験対策に留まらず、実務でも即戦力となるスキルを身につけることができます。

最後に、継続的な学習と実践を通じて、プロジェクトマネージャーとしての判断力と柔軟性を磨き上げてください。
それがPMP試験合格だけでなく、実務における成果にもつながります。
皆様の今後のさらなる成長とご活躍を心より応援しております。

以上

筆者 プロフィール 
ケニー狩野( 中小企業診断士、PMP、ITコーディネータ)
キヤノン(株)でアーキテクト、プロマネとして多数のプロジェクトをリード。
現在、株式会社ベーネテック代表、株式会社アープ取締役、Society 5.0振興協会評議員ブロックチェーン導入評価委員長。
これまでの知見を活かしブロックチェーンや人工知能技術の推進に従事。趣味はダイビングと囲碁。2018年「リアル・イノベーション・マインド」を出版。