ソフトウェア・エンジニアにおすすめの白書は、
経産省やデジタル庁のレポートです。特に2021年のDXレポート2.1では、デジタル産業の動向を知ることができます。これらの白書は、エンジニアが進むべき方向や企業の事業運営を考える際に役立つ情報源です。今回はこれらの白書に関して解説します。
白書の読み方
独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)から毎年出版される白書は200ページを超えるボリュームがあり最初はびっくりするし読むのにも時間がかかるかもしれないが、毎年読んでいると差分だけチェックできるので1~2時間で読むことができるようになる。
エグゼクティブサマリー(概要編)が用意されているものもあるので、時間のない時にはこれを読むのもいいだろう。 あるいはエグゼクティブサマリーを読んで気になる点だけ本文を読むという使い方もある。
ほとんどが無料
これら図書はほとんどが無料で手に入る。
国や省庁からの情報は無料で入手でき、IPAから出版される白書はアンケートに答えれば無料でダウンロードできるものが多い。
少し遅れて書籍が出版されるので、紙のドキュメントの方がしっくりくる方は、有料とはなりますがこちらを利用する手もある。
エンジニアのための白書
DX白書
IPAはこれまで「IT人材白書」(2009年~)、「AI白書」(2017年~)を発刊してきたが、それらが2021年から「DX白書」に統合された。
戦略・人材・技術の3要素に関してUSAと日本の比較をしながら実態を報告している。
今年は統合初年度ということなのか、2021年12月8日に2時間のウエビナー「DX白書2021説明会」が開催され、DX推進の鍵となる戦略、人材、技術をレクチャーしてくれた。
- 2021年度版白書の入手はこちらから
情報セキュリティ白書
是非とも読んでもらいたい白書の一つだ。
この白書も200頁を超えるが、常にセキュリティインシデントにアンテナを張っていると、1年間を振り返るのにちょうどいい読み物となる。
- 2021年度版の入手はこちらから
中小企業白書(小規模事業白書)
毎年5月に中小企業庁から発表される中小企業白書は、中小企業の動向を調
査・分析した白書で、主に以下の3点にフォーカスして報告されている。
(1)中小企業をとりまく経営環境の動向分析
(2)産業分野別の将来の展望
(3)実施中、実施予定の行政施策の紹介
日本では全企業の99.7%、全労働者の約7割が勤務しているのが中小企業である。
たとえエンジニアであっても自社の置かれた経営環境を知ることは勿論大事だが、
さらに重要なのは顧客の事業環境を知ることによりより的確なサービスを提供す
ることができるという点だ。
2021年度版は政府の意向を受けて「デジタル化」のテーマが増え、コロナ禍での
拡販や海外展開にECサイトを推奨し、またSDGs等のホットなテーマにも頁を割
いている。
エンジニアから見ると遠い存在に思える白書だが意外と身近な課題の解決の糸口
になるのではないでしょうか?
エンジニアに読んでもらいたい政府系サイト
科学技術・イノベーション基本計画
白書ではないが、日本政府のかじ取りが分かる「計画」を2つ紹介します。
1つ目は、総理大臣を議長とする内閣府に設置された総合科学技術・イノベーション会議が策定する「科学技術・イノベーション基本計画」は、総合的・基本的な科学技術・イノベーション政策に関して、日本政府がどういう分野にどれだけの投資をしていくかを知ることができます。
Society5.0もここから発信されてます。
かなり頻繁に更新されているので一度眺めてみてはどうでしょうか?
- 2021年(第6期)の計画はこちらから
戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)もこの会議で立案・推進しています。
- 最新版はこちらから
知的財産推進計画
2つ目は、デジタル化を推進するにあたり知っておきべき「知的財産推進計画」だ。
これは首相官邸に紐づいた日本の知的財産権(以下、知財権)に関する基本方針を決定する知的財産戦略本部(本部長は内閣総理大臣)が毎年夏に公開する知財権に関する計画(方針)である。
デジタル化に伴う知財権、例えばビックデータや人工知能などに関する知財権をどうするか等の日本のスタンスを知ることができる。
デジタル庁
デジタル庁のビジョンは「デジタル社会の実現」である。
「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合った
サービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」
~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~
(「デジタル化に向けた動向と政策課題」より抜粋)
また、デジタル庁の基本的な施策は以下のとおりだ。
- 国民に対する行政サービスのデジタル化の推進
- くらしのデジタル化の促進
- 産業全体のデジタル化とそれを支えるインフラ整備
- 誰一人取り残さないデジタル社会の実現
(デジタル庁「今後のデジタル改革の進め方について」より抜粋)
これらの施策を通して強調しているのがマイナンバーカード。
元々このカードは、「税の徴収」、「社会保障」、「災害対策関連」の事務手続き簡素化が目的だった。
現に、マイナンバーのシステム化にもっとも前向きだったのが国税庁だった。
たしかにマイナンバーに預金口座や金融資産等が紐づけられれば税の徴収は楽になる。
総務省によると、マイナンバーカードの2021年10月1日時点の交付枚数は約4867万枚で、交付率は38.4%にとどまっている。政府は、22年度末までに、ほぼ全員にカードが行き渡ることを目指している。
政府への信頼感が低く強制力もないこのカードが普及するのはそうたやすいことではないだろう。
それはさておき、行政への申請書が極めて非効率なのは日頃から身に染みているので、基本的な施策に最初に上げられている「行政のデジタル化」は是非とも進めてもらいたいと願っている。
デジタル庁のホームページはこちら
デジタル庁の組織図はこちら
以上
ケニー狩野(中小企業診断士、PMP、ITコーディネータ)
キヤノン(株)でアーキテクト、プロマネとして多数のプロジェクトをリード。
現在、株式会社ベーネテック代表、株式会社アープ取締役、一般社団法人Society 5.0振興協会評議員ブロックチェーン導入評価委員長。
これまでの知見を活かしブロックチェーンや人工知能技術の推進に従事。趣味はダイビングと囲碁。
2018年「リアル・イノベーション・マインド」を出版。