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たとえ話でスッキリ理解!DeepSeekの全貌を解説

 

たとえ話でスッキリ理解!DeepSeekの全貌と実力【2025年版】

DeepSeekの最新動向と実力をたとえ話で速習!

▶ この記事の信頼性(クリックで開閉)
本記事は、長年IT業界でアーキテクトやプロジェクトマネージャとして従事し、PMPや中小企業診断士の資格も持つ筆者(ケニー狩野)が執筆しています。現場経験と継続的な技術リサーチに基づき、DeepSeekに関する最新かつ正確な情報をお届けします。

DeepSeekとは何者か?

DeepSeek社の概要と、AI業界に価格破壊をもたらした背景を解説します。

企業概要

DeepSeekは、2023年5月14日に中国・杭州で設立されたと報じられているAIベンチャー企業です1。創業者である梁文峰(Liang Wenfeng)氏は、中国の大手ヘッジファンド「High-Flyer(幻方量化)」の共同創業者でもあります2

「AIのピンドゥオドゥオ」と呼ばれる理由

DeepSeekは、中国国内で低価格かつ高性能をうたうAIモデルを提供し、一躍注目を浴びています。特に2024年5月に主力モデル「DeepSeek-V2」を発表したことで、AIモデルの価格破壊を引き起こしました。その衝撃から、中国の格安ECサイト「ピンドゥオドゥオ」のAI版だと評されています1

その結果、ByteDance、Tencent、Baidu、Alibabaといった大手企業も対抗価格を設定せざるを得なくなり、業界のゲームチェンジを予感させました9


主力モデル「DeepSeek-V2」の実力

DeepSeek-V2の性能とコストパフォーマンスを、競合モデルとの比較で分かりやすく説明します。

青い背景に浮かぶDeepSeekのロゴと、AIの概念を示す抽象的なグラフィック

現在のDeepSeekを語る上で中心となるのが、大規模言語モデル(LLM)である「DeepSeek-V2」です。その立ち位置を客観的に見るため、主要な競合モデルと比較してみましょう。

表:主要LLMのスペック比較(2025年7月時点)
項目 DeepSeek-V2 GPT-4o (OpenAI) Gemini 2.5 Pro (Google) Claude 3 Opus (Anthropic)
開発元 DeepSeek (中国) OpenAI (米国) Google (米国) Anthropic (米国)
主な特徴 圧倒的なコストパフォーマンス 高度なマルチモーダル性能 巨大なコンテキスト長 複雑なタスクでの高い推論能力
API価格
(入力/100万トークン)
約$0.14 約$2.50 約$1.25 約$15.00
API価格
(出力/100万トークン)
約$0.28 約$10.00 約$10.00 約$75.00
コンテキスト長 128k トークン 128k トークン 最大 2M トークン 200k トークン
たとえ話: 「軽自動車の燃費で走るスーパーカー」
この表が示すように、DeepSeek-V2は「既存の最高性能モデルと同水準のパフォーマンスを、圧倒的な低コストで提供する」という、まさに“いいとこ取り”を実現したモデルです。開発者はAPIを通じてこの機能を自身のサービスに組み込めます。

DeepSeekの技術要素をたとえ話で解説

DeepSeek-V2の驚異的なコストパフォーマンスを支える、主要な技術を解説します。

MoE(Mixture-of-Experts)

巨大な1つのAIモデルですべてを処理するのではなく、多数の「専門家」モデルを組み合わせるMoE (Mixture-of-Experts)という技術が使われています。タスクに応じて最適な専門家だけが働くため、計算資源の無駄遣いを徹底的に省きます。

たとえ話: 「オフィスのプロジェクトチーム」
MoEは、AIの中に「画像の専門家」「言語の専門家」などを置き、必要に応じて呼び出す仕組みです。これにより、リソースを集中させ、全体の効率を大幅に向上させています。

強化学習(GRPO)

AIが自ら進化するための強化学習手法として、特にGRPO (Group Relative Policy Optimization)という技術が使われています。AIが生成した複数の回答をグループ内で相互評価させることで、人間のフィードバックなしに自律的に学習を進化させます。

たとえ話:料理コンテスト
複数の料理人(AI)がそれぞれ料理を作り、審査員なしで互いの料理を試食し、評価し合います。これにより、外部の専門家(高価な評価モデル)を雇うコストを削減しつつ、全体のレベルを効率的に向上させています。

透明性への挑戦:度重なるセキュリティ問題

技術革新の裏で発覚した問題点と、企業の信頼性という今後の課題について解説します。

この記事の初稿執筆時点で「本当にオープンソースか疑問」と指摘されていた点は、残念ながらより具体的な形で表面化しました。DeepSeekの評価を語る上で、度重なるセキュリティインシデントは避けて通れません。

2024年6月:データ流用疑惑と公式謝罪

2024年6月、DeepSeekが他社の商用モデルのデータを無断で学習に利用したのではないかという疑惑が指摘されました。当初は否定したものの、その後の内部調査で「不適切なデータ参照」があったことを認め、公式に謝罪しました。

2025年1月:データベース流出事件

さらに2025年1月には、設定不備によりデータベースが外部からアクセス可能な状態となり、チャット履歴やAPIキーなどの機密情報が流出したと報じられました。セキュリティ専門メディアWizは「認証なしでデータベースを完全に制御できる状態だった」と報告しており10、企業のセキュリティ管理体制に深刻な疑念を抱かせる事態となりました。

これらの出来事は、技術的な優位性だけでなく、企業としての倫理観やガバナンスがいかに重要であるかを業界全体に再認識させました。

たとえ話: 「秘伝レシピの出どころ疑惑と、その後の食中毒事件」
画期的な料理を発表したレストランが「他店のレシピを無断利用した」と噂された後、今度は「厨房の衛生管理不備で食中毒を出してしまった」という状況です。料理の味は良くても、顧客は安心して食事をすることができません。DeepSeekも今、まさに信頼回復という最も困難な課題に直面しているのです。

結論:たとえ話で見るDeepSeekの現在地

DeepSeekの功績と課題を総括し、今後の注目点をまとめます。

DeepSeekは「高性能を低コストで提供する」という衝撃的な旗印を掲げ、DeepSeek‑V2でその実力を示しました。しかし、そのスーパーカーは輝かしいスピードの裏でオイル漏れ――すなわち「データ利用の透明性」と「セキュリティ管理」という重大な整備不良を抱えています。

たとえ話:ピットイン中のスーパーカー
ピットに入り、整備士(ガバナンスチーム)が懸命に修理を進めている現状。それでもエンジン(MoE/GRPO)は健在で、完調になれば再びトップスピードに返り咲くポテンシャルを秘めています。

ここまでの要点

  • DeepSeek‑V2は「性能 × 価格」で依然トップクラス。
  • MoEGRPOが省コスト・高効率を実現する要。
  • 信頼を左右するカギは透明性の確保と堅牢なセキュリティ

読者が今できる 3 ステップ

  1. PoCで小さく試す — 感度の低いデータで動作・コスト・精度を検証。
  2. API抽象化を組み込む — 将来のモデル乗り換えを想定した設計でリスク低減。
  3. ガバナンス改善をウォッチ — 透明性レポートや第三者監査の進捗を定点観測。

来季、整備を終えたスーパーカーがどんなタイムを叩き出すか――それは私たち自身が準備した“走行プラン”次第です。DeepSeekを巡る次の周回も、冷静なリスク評価と技術的好奇心を両輪に、賢く付き合っていきましょう。


よくある質問(FAQ)

▶ DeepSeekって結局、何がすごいの?

一言でいうと「最高クラスの性能を、驚くほどの低価格で実現した」点です。たとえるなら「軽自動車の燃費で走るスーパーカー」のような存在で、これまで高価で手が出せなかった多くの開発者や企業にとって、高性能AIの利用ハードルを劇的に下げた点が画期的です。

▶ DeepSeek-V2は無料で使えますか?

無料ではありませんが、非常に低価格なAPIを通じて利用できます。その価格は、例えばOpenAIのGPT-4oと比較しても圧倒的に安価であり、これが「価格破壊」と呼ばれる理由です。少量のテストであれば、多くのプラットフォームが提供する無料クレジットの範囲内で試すことも可能です。

▶ セキュリティ問題がありましたが、今使っても大丈夫?

DeepSeek社は問題を認めて謝罪し、再発防止策を講じています。しかし、過去に複数のインシデントがあったことは事実です。技術的には高性能ですが、企業の重要なデータや機密情報を扱う場合は、利用する組織のセキュリティポリシーに基づき、リスクを慎重に評価し、自己責任で利用を判断する必要があります。


更新履歴

  • Ver. 3.0 比較表、FAQ等を追加し全面改稿。
  • Ver. 1.0 初版公開。

専門用語の解説

大規模言語モデル(LLM)
人間が使うような大量の文章(テキスト)データを学習し、文章の生成や要約、質問応答などができるAIモデルのこと。DeepSeek-V2やGPT-4oなどがこれにあたります。
API(Application Programming Interface)
ソフトウェアやプログラムの機能を、外部の他のプログラムから呼び出して利用するための接続方法やルールのこと。開発者はAPIを通じて、DeepSeek-V2などのAI機能を自分のサービスに組み込めます。
MoE (Mixture-of-Experts)
「専門家混合」モデル。巨大な単一のAIではなく、様々な得意分野を持つ複数の小さな「専門家」AIを組み合わせる技術。質問内容に応じて最適な専門家だけが働くため、計算コストを大幅に削減できます。
GRPO (Group Relative Policy Optimization)
AIが自ら生成した複数の回答をグループ内で相互評価し、人間のフィードバックなしで自律的に学習を進化させる強化学習の手法。学習コストの削減に繋がります。

脚注・出典

  1. Wikipedia: “DeepSeek”
  2. Wikipedia: “Liang Wenfeng”
  3. note: “中国発のAI、DeepSeekを試してみた|矢野 哲平@耳で学ぶAI”
  4. SEO.AI: “DeepSeek AI Statistics and Facts (2025)”
  5. Saxo: “China’s DeepSeek: Could This be a Turning Point for US Tech?”
  6. Anadolu Agency: “China’s DeepSeek AI challenges ChatGPT, Google”
  7. Wikipedia: “High-Flyer”
  8. CBC News: “What is DeepSeek? The Chinese OpenAI rival sparking chaos in tech stocks”
  9. CNBC: “How China’s new AI model DeepSeek is threatening U.S. dominance”
  10. Wiz Research: “Wiz Research Uncovers Exposed DeepSeek Database…”

ABOUT ME
ケニー 狩野
中小企業診断士、PMP、ITコーディネータ キヤノン株式会社にてアーキテクト、プロジェクトマネージャーとして数々のプロジェクトを牽引。 現在の主な役職: 株式会社ベーネテック 代表、株式会社アープ 取締役、一般社団法人Society 5.0振興協会 評議員 ブロックチェーン導入評価委員長などを務める。 2018年には「リアル・イノベーション・マインド」を出版。 趣味はダイビングと囲碁。