GPTsとRAGの違いを徹底解説|カスタムAIの作り方と仕組み【2025年版】
この記事を読むと、GPTsとRAGの根本的な違いがわかり、あなたの目的に最適なカスタムAIの構築方法を選択できるようになります。
執筆者からひと言
こんにちは。30年以上にわたるITエンジニアとしての現場経験を基に、AIのような複雑なテーマについて「正確な情報を、誰にでも分かりやすく」解説することを信条としています。この記事が、皆さまのビジネスや学習における「次の一歩」のヒントになれば幸いです。
序論:「自分だけのAI」を作りたい、でも方法が分からない
「社内文書を学習したAIを作りたい」と考えたとき、多くの人が「GPTs」と「RAG」という言葉に出会い、混乱します。これらは似ているようで、実は全く異なるレイヤーの概念です。
OpenAIが発表した「GPTs」は、誰でも簡単に対話型AIをカスタマイズできる画期的な機能です。一方で、AI開発の世界では「RAG」という技術が主流となっています。この2つの関係性を正しく理解しないまま開発を進めると、「GPTsで十分だったのに、無駄に高コストな開発をしてしまった」あるいは「GPTsでは機能が足りず、プロジェクトが頓挫した」といった失敗に繋がりかねません。本記事では、この混乱を解消するため、両者の根本的な違いと、あなたの目的に最適な選択肢を、分かりやすいたとえ話で解説します。

結論ファースト:GPTsとRAGの違い早見表
両者の最大の違いは、GPTsが「製品・アプリケーション」であるのに対し、RAGはそれを実現するための「技術・アーキテクチャ」であるという点です。
比較項目 | GPTs | RAG |
---|---|---|
分類 | 製品・アプリケーション | 技術・アーキテクチャ |
たとえ話 | 便利な「お弁当キット」 | プロの「調理法(レシピ)」 |
作成の容易さ | 非常に簡単(非エンジニアでも可能) | 専門知識が必要(要エンジニア) |
カスタマイズ性 | 低い(OpenAIの提供範囲内) | 高い(LLM、DB、UIなど全て選択可能) |
概念的な違い:便利な『お弁当キット』か、プロの『調理法』か
両者の関係を料理に例えると、その違いは一目瞭然です。GPTsは誰でも手軽に美味しい料理が作れるキット、RAGはその料理を作るためのプロの技術そのものです。
GPTs:誰でもシェフになれる「お弁当キット」
GPTsは、カット済みの高品質な食材(ChatGPTの能力)と、分かりやすい説明書(設定画面)、そして特製のタレ(Knowledge機能)がセットになった「お弁当キット」のようなものです。あなたは、説明書通りに食材を組み合わせ、付属のタレを加えるだけで、誰でも簡単に美味しいお弁当(カスタムAI)を作ることができます。料理の専門知識はほとんど必要ありません。ただし、作れるのはあくまでキットの範囲内のお弁当であり、全く別の料理を作ったり、タレの味を根本から変えたりすることはできません。
RAG:無限の応用が可能なプロの「調理法(レシピ)」
RAGは、「食材(情報)を取り出し、下ごしらえし、メインの食材(LLM)と組み合わせて、最高の料理(回答)を作る」という、プロの調理法そのものです。このレシピをマスターすれば、あなたはスーパーで好きな食材(データベース)を選び、好みの調理器具(UI)を使って、お弁当だけでなく、フルコースディナー(高度なAIアプリケーション)まで、あらゆる料理を自由に作ることができます。ただし、そのためには相応の料理の腕前(専門技術)が必要です。
👨🏫 かみ砕きポイント
・GPTs → 目的が決まっているなら、一番手軽に作れる便利なツール。
・RAG → 自由にAIを作りたいなら、マスターすべきプロの技術。
実は、GPTsの「Knowledge」機能は、OpenAIが用意したRAGという調理法を使って作られた「特製のタレ」なのです。つまり、GPTsはRAGという技術を、誰でも簡単に使えるように製品化したもの、と言えます。
実践的な使い分け:いつGPTsを使い、いつ自前でRAGを組むべきか
あなたのプロジェクトの目的、予算、そして技術リソースによって、選択すべき道は明確に分かれます。
GPTsを選ぶべきケース
- とにかく早く試したい: プロトタイピングや、アイデアの検証(PoC)が目的の場合。
- 技術者がいない: 非エンジニアのチームが、自分たちで業務効率化ツールを作りたい場合。
- 社内利用がメイン: 社内規定の検索や、議事録の要約など、クローズドな環境で利用する場合。
自前でRAGを組むべきケース
- 高度なカスタマイズが必要: 独自のUI/UXを持つWebサービスとして、一般の顧客に提供したい場合。
- 複雑なシステム連携が必須: 社内の基幹システムやCRMと連携させ、動的なデータを扱いたい場合。
- データの機密性が極めて高い: 外部のプラットフォームにデータをアップロードできない、厳格なセキュリティ要件がある場合。
- 利用するLLMを自由に選びたい: OpenAI以外のモデル(GoogleのGeminiやAnthropicのClaudeなど)を使いたい場合。
Key Takeaways(持ち帰りポイント)
- GPTsとRAGは「製品」と「技術」という全く異なる概念である。
- 手軽さとスピードを求めるならGPTs、自由度と拡張性を求めるなら自前のRAG。
- 多くのGPTsは、その内部でRAGの仕組みを利用している。
- まずはGPTsで素早く価値検証を行い、本格的なサービス化の段階で自前のRAG構築を検討するのが賢明な進め方。
まとめ:目的に応じて「手段」を選び、賢くAIを活用する
GPTsとRAGは、どちらが優れているかという議論の対象ではありません。これらは、「手軽な完成品」と「自由な素材と道具」という関係にあり、プロジェクトのフェーズと目的に応じて使い分けるべきものです。
多くの場合、最初のステップはGPTsで十分かもしれません。「お弁当キット」でカスタムAIの便利さを体験し、社内にその価値を証明する。そして、ビジネスが拡大し、より高度な要求が生まれた時に、プロの「調理法(RAG)」を学び、唯一無二のAIサービスを構築する。この段階的なアプローチが、現代のAI開発における最も現実的で賢明な進め方と言えるでしょう。
専門用語まとめ
- GPTs
- OpenAIが提供する、ChatGPTをノーコードでカスタマイズできる機能。特定の目的を持った対話型AIアプリケーションを簡単に作成できる。
- Knowledge(ナレッジ)
- GPTsの機能の一つ。PDFなどのファイルをアップロードすると、その内容に基づいてGPTが回答を生成するようになる。内部的にはRAGの仕組みが使われている。
よくある質問(FAQ)
Q1. GPTsを作れば、RAGの知識は不要ですか?
A1. 簡単なものなら不要です。しかし、なぜか期待通りの回答をしない、といった問題のトラブルシューティングを行うには、内部でRAGがどう動いているかを理解していると非常に役立ちます。
Q2. 自前でRAGを組むのは、どれくらい難しいですか?
A2. LangChainのようなフレームワークを使えば、基本的なプログラミング知識があれば数日でプロトタイプを動かすことも可能です。ただし、精度を高め、安定して運用するには、クラウドインフラやデータベースの専門知識が必要になります。
Q3. GPTsのKnowledge機能の性能は、自前のRAGより低いのですか?
A3. 一概には言えません。OpenAIによる最適化が進んでいるため、一般的な文書検索では高い性能を発揮します。しかし、自前のRAGでは、データの分割方法や検索アルゴリズムを細かく調整できるため、特定のタスクにおいてはGPTsを上回る性能を達成できる可能性があります。
更新履歴
- 最新情報にアップデート、FAQや用語解説など読者支援強化
- 初版公開
主な参考サイト
- Introducing GPTs – OpenAI – OpenAIによるGPTsの公式発表ブログです。
- RAG(検索拡張生成)とは?仕組み・重要性を図解で徹底解説【2025年版】 – 本記事で比較対象としているRAG技術の、より詳細な解説です。
合わせて読みたい
- RAG(検索拡張生成)とは?仕組み・重要性を図解で徹底解説【2025年版】
- RAG vs ファインチューニング徹底比較|コスト・精度・運用で選ぶAI最適化手法
- 【業種別】RAGのビジネス活用事例ガイド
以上