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人工知能

AIによる死者復活と日本の法的空白|今すぐ備えるデジタル遺言

最終更新:※本記事は継続的に「最新情報にアップデート、読者支援機能の強化」を実施しています(履歴は末尾参照)。

AIによる死者復活と法的空白を埋める デジタル遺言・DNTで自分と家族を守る

この記事を読むと死後のAI化(デジタル・レザレクション)を取り巻く深刻な法的リスクがわかり、自分や家族の尊厳を守るための「デジタル遺言」と「DNT(学習拒否)」の準備ができるようになります。

この記事の結論:
日本の現行法では、死後にAIで人格を無断再現されても、生前ほど明確に止める手立てが整っていません。予期せぬトラブルや尊厳の毀損を防ぐには、生前に「デジタル遺言」を作成し、法的・技術的に「AI学習拒否(DNT)」の意思を明確にすることが不可欠です。
Q1. 亡くなった人の声をAIで再現するのは違法ですか?
A. 現在の日本では「原則として」違法とはされていません。 民法上、死亡と同時に肖像権やプライバシー権などの「人格権」が消滅すると考えられているためです。もっとも、故人を使った虚偽表現によって遺族の社会的評価が傷ついた場合などは、遺族の名誉権を通じて違法と判断される余地があります。
Q2. デジタル・レザレクションとは何ですか?
A. 故人の写真、音声、日記などのデータから、AIを使って人格や姿をデジタル上で「復活」させる技術のことです。 単なる映像再生ではなく、AIが思考パターンを模倣し、生前のように対話ができるサービスも実用化されています。
Q3. 勝手にAI化されないためにはどうすればいいですか?
A. 生前に「デジタル遺言」を残すことが最も有効です。 自分のデータをAI学習に使ってよいか(DNT)、誰に管理を託すかを文書化し、SNS等の設定で学習拒否を行う「二重の対策」が必要です。

この記事の著者・監修者 ケニー狩野(Kenny Kano)

Arpable 編集部(Arpable Tech Team)
株式会社アープに所属するテクノロジーリサーチチーム。人工知能の社会実装をミッションとし、最新の技術動向と実用的なノウハウを発信している。
役職(株)アープ取締役。Society 5.0振興協会・AI社会実装推進委員長。中小企業診断士、PMP。著書『リアル・イノベーション・マインド』

この記事の構成:

  • 「生きたい」と願う人間の欲求と、それを受け止めるAI技術の驚異的な進化
  • なぜ日本は「法的な保護が手薄なグレーゾーン」にあるのか? 民法・個人情報保護法が抱える致命的なバグ
  • 世界を変えたテネシー州「ELVIS法」など、海外の先進的な権利保護事例
  • 【実践編】私たちが今すぐ準備すべき「デジタル遺言」の書き方とDNT設定の全手順

 

「ねえ、おじいちゃん。戦争の話を聞かせて」

リビングのスマートスピーカーに向かって孫がそう話しかけると、一瞬の静寂の後、懐かしい声が返ってきます。

「おお、そうじゃな。あれは昭和20年の夏じゃったか……」

その声の主は、3年前に亡くなったはずの祖父。生前の録音データと日記をAIに学習させ、あたかもそこにいるかのように対話できる技術です。孤独だった祖母は、夫の声を聞くことで笑顔を取り戻し、孫は教科書では学べない歴史を祖父から直接学んでいます。
ここまでは、テクノロジーがもたらした「温かい未来」の風景です。

しかし、ある日突然、その平穏が破られます。
AIのおじいちゃんが、家族の誰も聞いたことがない過激な政治的意見を語り出したり、特定の相続人を批判し始めたら どうでしょうか。

「おじいちゃんは、絶対にそんなこと言わない!」
「この発言、もしかして遺産相続に関する本心だったんじゃないか?」

癒やしだったはずのAIは、一瞬にして家族を混乱させる「異物」へと変わります。これはSFの話ではありません。生成AIの急速な進化により、技術的にはすでに「誰でも故人を蘇らせることができる」時代において、現実に起き始めている摩擦なのです。

1. 「生きたい」という人間の願いと、受け皿となるAI技術

人は誰しも、死を前にしたとき「忘れられたくない」「自分の生きた証を子孫に残したい」と願うものです。発達心理学者のエリクソンは、これを「ジェネラティビティ(世代性)」と呼び、中高年期における人間の健全な欲求の一つと定義しました。

かつて、その受け皿は「日記」や「アルバム」でした。しかし、生成AIの登場は、この継承の形を劇的に変えました。

  • Before:静止画や文字としての記録(一方通行)
  • After:対話可能で、新たな答えを生成できる人格(双方向)

現在、わずか数分の音声データがあれば、その人の声色や話し方の癖(プロソディ)をAIが学習し、新たな文章を読み上げさせること は、技術的にもはや難しくはありません。

「読む記録」から「対話する人格」への進化

多くの人が「写真が動くだけでしょ?」「あらかじめ録音した音声を再生しているだけでしょ?」と誤解していますが、現在の技術的進化は本質的な「人格の再現」に迫っています。進化のフェーズは以下の3段階で捉えると、事態の深刻さが理解しやすくなります。

Step 1:見た目の再現(Visual)

これまでの技術です。写真や動画を残すこと。これは「一方通行」の記録であり、私たちが画面の中の故人に話しかけても、答えは返ってきません。あくまで「記録された過去」を見るための技術でした。

Step 2:声と動きの再現(Audio & Motion)

ここ数年で劇的に進化した領域です。ディープフェイク技術や、MicrosoftのVALL-Eに代表される音声合成AIにより、たった3秒〜数分の音声データがあれば、本人の声を完全に再現可能になりました。
また、1枚の古い写真から「あたかもその人が喋っているような動画」を作る技術(D-IDなど)も普及しています。これにより、故人は「静止画」から「動く存在」へと変わりました。

Step 3:思考の再現(Personality & Reason)

そして、ここが現在の到達点であり、最も論争を呼んでいる領域です。大規模言語モデル(LLM)に、故人の日記、メール、SNSのログを大量に読み込ませることで、「その人ならどう考えるか」という思考パターンを模倣 させます。

これにより、「おじいちゃん、今の会社がつらいんだ」と孫が話しかけると、「お前の性格なら、無理せず休むのが一番じゃ。昔わしもな…」と、生前には存在しなかった、しかし故人の価値観に基づいた新たなアドバイス がリアルタイムで生成されるのです。これはもはや「再生」ではなく「新生」に近い行為と言えます。

すでに始まっている世界の商用サービス

海外ではすでに、この技術がビジネスとして確立しており、多くのユーザーを獲得しています。

🇺🇸 StoryFile(ストーリーファイル)

生前に本人へのインタビューを収録し、「子供の頃の夢は?」「一番の失敗談は?」といった100〜200程度の質問に対する回答をデータベース化します。死後、遺族が質問すると、AIが文脈を理解して最適なビデオ映像を再生してくれます。専用スタジオも用意されていますが、自宅のPCやスマートフォンだけでも作成可能です。

🇨🇳 中国のグリーフボット市場

中国では、亡くなった家族の数枚の写真と短い音声から、数百円程度の簡易版から、数万円〜十数万円を超える高機能版まで幅広い価格帯で「AIアバター」を作成するサービスが急増しています。「天国のお母さん」とチャットアプリで会話することで悲しみを癒やす人々がいる一方で、死を受け入れられなくなる「喪の作業(グリーフワーク)の阻害」などの倫理的な論争も巻き起こっています。

技術の受け皿は、すでに完成しているのです。しかし、ここで日本特有の大きな問題が立ちはだかります。

2. 摩擦の正体:日本の法律は「死者の尊厳」を守れない

技術が「死者を蘇らせる」レベルに達しているのに対し、日本の法律は明治時代のまま、あるいは「生身の人間」しか想定していない状態で止まっています。

結論から言えば、現在の日本は、故人のデータを巡って法的な保護が極めて手薄な「グレーゾーン」にあると言わざるを得ません。悪意ある第三者があなたの声をAI化して商用利用しても、生前ほど明確にストップをかけられる法律は少なく、遺族が名誉毀損などを根拠に争うしかないのが実情です。

図1:日本の法制度における「死後の権利」の空白
日本の法制度における「死後の権利」の空白

図の要点まとめ:
・民法上、権利能力は死亡と同時に消滅するため、原則として死者自身を直接保護する権利は想定されていない
個人情報保護法の対象は「生存する個人」のみであり、故人のプライバシーデータは保護対象外
・パブリシティ権(経済的価値)の相続についても、明確な判例が定まっておらずグレーゾーンである

民法と個人情報保護法の致命的なバグ

なぜ、このような事態になっているのでしょうか。大きく2つの法的障壁があります。

【壁その1】民法:「死んだ瞬間に権利は消滅する」

日本の民法第3条には「私権の享有は、出生に始まる」とあります。これは裏を返せば、死亡によって法的な権利主体ではなくなることを意味します。
生前であれば、「勝手に私の声をAIに使わないで!」と主張できる「人格権」や「肖像権」がありますが、これらは「一身専属権(その人だけの権利)」とされ、原則として相続されません。つまり、亡くなった瞬間に、その人は法的な守り手を失うのです。

【壁その2】個人情報保護法:「対象は生存する個人」

では、データの取り扱いを定めた個人情報保護法はどうでしょうか。実は、同法における「個人情報」の定義は、「生存する個人に関する情報」に限られています。
つまり、亡くなった方の声、顔写真、行動履歴データは、個人情報保護法の保護対象外となってしまうのです。(※ただし、故人の情報が遺族の個人情報にも該当する場合は保護されるケースもありますが、極めて限定的です)

もし、悪意ある「AI復活」が行われたら?

この法的な空白は、恐ろしいリスクを孕んでいます。
例えば、あなたが亡くなった後、赤の他人があなたのSNS上の音声データを収集し、勝手に「AI〇〇さん」を作成したとします。そして、そのAIに、あなたが絶対に言わないような商品の宣伝をさせたり、過激な思想を語らせたりした場合、遺族はそれを止められるでしょうか?

現状の法律では、「死者の名誉毀損」に当たらない限り法的措置をとるハードルは高いのが現実です。もっとも、著作権侵害や遺族の人格権侵害として争う余地がまったくないわけではなく、個別事案ごとに判断が分かれるグレーゾーンになっています。「おじいちゃんはそんなこと言わない!」と遺族が泣き叫んでも、それを止めるための分かりやすい「停止ボタン」を、日本の法律はまだ用意できていないのです。

3. 世界は動き出している:テネシー州「ELVIS法」の衝撃

日本が足踏みをする一方で、AI先進国やエンタメ大国では、この問題に対する法整備が急速に進んでいます。世界はすでに「死後の権利」を定義し始めています。ここでは代表的な4つの事例を紹介します。

(表)世界の「死後の権利保護」の動向比較 ※2025年現在
国・地域 主な動き・法律名 ポイント
米国
(テネシー州)
ELVIS法
(2024成立)
個人の「声」を財産権として認め、死後もAIによる無断模倣を禁止。
米国
(ニューヨーク州)
死後パブリシティ権 死後40年間にわたり、著名人の肖像等の商業利用を遺族が管理可能。
フランス デジタル共和国法 死後のデータ(SNS等)の取り扱いを本人が生前に指定可能。
韓国 VRドキュメンタリー 2020年放映の番組「Meeting You(너를 만났다)」で、7歳で亡くなった娘をVRで再現し母親との対面を実現。YouTube再生数1,900万回超を記録し、技術的・倫理的な社会的議論が先行。

なお、この流れは「海外だけの話」ではありません。日本でも、葬祭大手のアルファクラブ武蔵野が2024年12月にバーチャルAI故人サービス「Revibot」を開始するなど、故人の写真・動画・音声からAIアバターを生成するサービスが立ち上がりつつあります。対話機能の有無などの違いはあるものの、「遺影」が動き・語りかけるという意味で、デジタル・レザレクションの国内版と言える動きがすでに始まっています。

ELVIS法(Ensuring Likeness Voice and Image Security Act)

2024年に成立したこの法律は、エルヴィス・プレスリーの故郷であり音楽産業の拠点であるテネシー州で施行されました。
従来の法律では「名前」や「肖像(写真)」は保護されていましたが、「声」は明確な保護対象ではありませんでした。しかし、AI音声合成技術の進化により「声」こそが最も侵害されやすい資産となりました。

図2「声」を財産権として認めたELVIS法
「声」を財産権として認めたELVIS法

ELVIS法は、2024年7月1日に施行されたテネシー州法で、従来のパブリシティ権に加えて「声(Voice)」を明示的な財産権として位置づけ、AIによる無断生成(ディープフェイク等)を包括的に規制する先進的な法律です。死後も一定期間この権利が保護されるため、アーティストの声を勝手にAIで再利用したり、新曲を歌わせたりする行為に明確な歯止めがかかりました。

ハリウッドのストライキと「デジタルダブル」

2023年7月14日から11月9日まで約4か月続いたハリウッドの俳優組合(SAG-AFTRA)のストライキでも、争点の一つは「死後のデジタルツイン(デジタルダブル)」の権利保護でした。

その後も2025年のコマーシャル契約やビデオゲーム契約で、AI利用に関する同意条項が次々と盛り込まれています。

図3 デジタルダブル(俳優の3Dスキャンデータ)の権利保護 デジタルダブル(俳優の3Dスキャンデータ)の権利保護

「俳優が死んだ後、制作会社がスキャンデータを使い回して、永遠に新作映画を作り続けること」に対し、組合側は猛反発しました。結果として、「本人の生前の同意」と「遺族への適正な対価」なしにはAI再現を行わないという契約条項が勝ち取られました。

このように、海外では「死後も、その人のデータや人格は守られるべき資産である」という合意形成が法制化レベルで進みつつあります。翻って日本では、まだこの議論が始まったばかりです。だからこそ、法改正を待つのではなく、海外の事例を参考に「契約」と「遺言」で自衛するというアクションが、現時点で私たちに残された現実的な解なのです。

4. 私たちが今できる「新しい終活」:デジタル遺言とDNT

では、法整備が遅れている日本に住む私たちは、指をくわえて見ているしかないのでしょうか? いいえ、そうではありません。
法改正を待っていては間に合いませんが、契約や意思表示によって自衛することは可能です。キーワードは、「デジタル遺言」「DNT(Do Not Train)」です。

図4 デジタル遺言作成の3ステップ
デジタル遺言作成の3ステップ

図の要点まとめ:
・自分のデジタル資産(ID・データ)をリスト化する(棚卸し)
AI学習や再現に対する「拒否(DNT)」の意思を文書で残す
・信頼できる家族を「デジタル遺言執行者」に指名し、パスワードを託す

ここでは、誰でも今日からできる具体的な作成ステップを解説します。

Step 1:意思表示の明文化(条文例)

通常の遺言書の「付言事項」や、エンディングノートに以下の内容を記載します。なお、2025年現在の日本では電子データだけで作成した「デジタル遺言」に法的効力はなく、自筆証書遺言や公正証書遺言とセットで準備することが前提になります。付言事項自体に法的拘束力はありませんが、GoogleやApple、Metaなどのプラットフォーム事業者に故人のアカウント削除・停止を申請する際、「本人が生前に削除を希望していた公的な証拠」として提示でき、手続きをスムーズにするケースが増えています。

📝 デジタル遺言への記載例

第〇条(デジタルデータの取り扱いについて)
私の死後、私の声、肖像、文章、および生体データを含む一切のデジタルデータについて、以下の通り取り扱うことを希望します。

  • 1. 生成AI等の技術を用いて、私の人格、音声、容姿を再現・生成することを【禁止します / 家族の個人的利用に限り許可します】
  • 2. 私のSNSアカウント(X, Facebook等)については、【追悼アカウントとして残してください / すべて削除してください】
  • 3. 上記の執行権限を、妻〇〇に一任します。

Step 2:DNT(Do Not Train)の実践

「DNT」とは、自分のデータをAIの学習に使わせない意思表示です。現時点では多くが事業者のポリシーベースの運用にとどまり、法的拘束力や実効性には限界があり、すべてのクローラーやモデルが必ず従うわけではありませんが、「少なくとも明確にノーと言っておく」ことに大きな意味があります。生前のうちに、以下の設定を行っておきましょう。

  • SNSの設定変更:X(旧Twitter)やInstagramなど、主要SNSの「プライバシー」「AI学習」「情報の利用目的」に関する項目を定期的に確認し、オプトアウトや「異議申立て」フォームが用意されている場合は、生前のうちに必ず手続きを行いましょう(※XやMetaは2024〜25年に仕様変更が相次いでいるため、最新のヘルプセンターを確認してください)。
  • Webサイト・ブログの拒否設定:自分のブログにある「日記」や「思考ログ」を守るため、robots.txtにGPTBotやCCBot等のAIクローラーを拒否する記述を追加します。クローラーがルールを守る限りという前提付きですが、学習用クロールを技術的に抑止できます。
  • 音声・動画データの保護:YouTubeやPodcast等のプラットフォームでは、コンテンツをAI学習に使用しないオプトアウト設定やポリシーが提供されているかを確認し、利用可能な範囲で適用します。画像分野のGlazeのような防御技術は音声ではまだ発展途上のため、現時点ではこうした規約ベースの拒否が最善策です。
  • 画像・イラストの防御:イラストや写真を公開する際には、ウォーターマークを入れたりGlazeなどの学習阻害ツールを利用したりすることで、生成AIモデルへの学習を一定程度抑制できます。

これらは生前にしかできない「防衛策」です。

Step 3:家族との共有(IDとパスワード)

最も見落とされがちで、かつ重要なのが「IDとパスワード」の継承です。
どんなに立派な遺言があっても、スマホのロックが開かなければデータにアクセスできず、削除も解約もできません。しかし、パスワードを紙に書いて金庫に入れるのはセキュリティリスクもあります。

パスワード管理アプリの「緊急アクセス機能」を使うか、信頼できる一人(デジタル遺言執行者)にだけ、パスワードのありかを伝えておきましょう。「隠す」のではなく「託す」意識が重要です。

専門用語まとめ

デジタル・レザレクション
AI技術を用いて故人の外見、声、人格などをデジタル空間上で再現・復活させる技術やサービスのこと。「電子的復活」とも呼ばれる。
ELVIS法
2024年に米国テネシー州で成立した法律。AIによる「声」の無断複製を禁止し、死後も個人の権利として保護することを明文化した、世界でも先進的な州法の一つ。
DNT (Do Not Train)
自分の著作物やデータをAIの学習データとして使用することを拒否する意思表示。法的な強制力は国によるが、意思を明確にする重要な手段。
パブリシティ権
著名人の氏名や肖像が持つ「顧客吸引力(経済的価値)」を排他的に利用する権利。日本でも認められているが、死後の継承については議論がある。
グリーフボット
Grief(深い悲しみ)とRobotを組み合わせた造語。故人のデータを学習し、遺族の悲しみを癒やすために対話を行うチャットボットのこと。
デジタルツイン
現実世界の情報をデジタル空間にコピーする技術。人間への応用では、本人の外見や思考パターンをデジタル上で再現した「双子」を指す。
LLM(大規模言語モデル)
大量のテキストデータを学習し、人間のように自然な文章を生成・理解できるAIモデル。故人の「思考」を再現する核となる技術。

よくある質問(FAQ)

Q1. AIによる故人の再現は、相続争いの原因になりますか?

A1. 可能性は十分にあります。 AIが「遺産は〇〇に譲る」といった生前にない発言をした場合、法的効力はありませんが、遺族の心理を揺さぶり、感情的な対立を生んでトラブルの火種になるリスクがあります。

Q2. デジタル・レザレクションの費用はどれくらいですか?

A2. サービスによりピンキリです。 中国の簡易的なアバター作成なら数百円程度から、高機能版では数万円〜十数万円程度が目安です。StoryFileのような対話型アーカイブはパッケージ価格が$49〜といったプランもありますが、専用スタジオ収録を含む本格的なサービスになると数十万円以上になる場合もあります。

Q3. 死後にネット上のデータをすべて削除できますか?

A3. 非常に困難です。 IDやパスワードを遺族が知らない場合、アクセスすらできません。だからこそ「デジタル遺言」でID管理と削除依頼を明記しておくことが重要です。

今日のお持ち帰り3ポイント

  • 技術的には「故人の完全な再現」が可能になりつつあるが、日本の法律は死後の権利保護について法的な保護が手薄なグレーゾーンにとどまっている
  • 海外では「ELVIS法」などで死後の声や肖像を守る動きが加速している
  • 予期せぬトラブルを避けるには、生前に「デジタル遺言」でAI学習の可否(DNT)を意思表示しておくことが必須である

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ケニー 狩野
AI開発に10年以上従事し、現在は株式会社アープ取締役として企業のAI導入を支援。特にディープラーニングやRAG(Retrieval-Augmented Generation)といった最先端技術を用いたシステム開発を支援。 一般社団法人Society 5.0振興協会ではAI社会実装推進委員長として、AI技術の普及と社会への適応を推進中。中小企業診断士、PMP。著書に『リアル・イノベーション・マインド』。