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RAG構築に活かすVertex AI RAG Engine活用術

RAG構築に活かすVertex AI RAG Engine活用術

はじめに:RAGシステムの重要性

企業が生成AIを活用する際に課題となるのが、LLM(大規模言語モデル)の情報の正確性です。従来のLLMは、最新の情報に基づかない回答をすることがあり、企業が求める精度を確保できないケースが発生します。

そこで注目されているのが、Retrieval-Augmented Generation(RAG)です。
RAGは、外部データを取得し、それを元にLLMが回答を生成する仕組みです。これにより、リアルタイムの情報や企業固有のデータを活用でき、より信頼性の高いAIシステムの構築が可能になります。

Google CloudのVertex AI RAG Engineは、こうしたRAGシステムを簡単に構築・運用できるマネージドサービスです。本記事では、エンジニアやマネジャー向けにVertex AI RAG Engineの概要と、その活用法について詳しく解説します。

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RAGシステムの構築をご検討の方はこちらのサイトからお問い合わせください。御社の状況や課題をお聞きした上で、コンサルテーションからお見積もりのご提示まで無料で対応いたします。どうぞお気軽にお問い合わせください。
※)当社が高精度なRAGを提供できる理由に関して無料で資料請求が可能です

Vertex AI RAG Engineとは?

Vertex AI RAG Engineは、Google Cloudが提供するRAGシステム構築のための統合フレームワークです。主に以下の特徴を持っています。

(1) マネージドサービスで開発負担を軽減

  • RAGを構築するためのデータ取得・加工・検索・統合機能を一元化
  • Google CloudのLLMと簡単に統合でき、インフラ管理不要
  • APIベースで操作可能なため、スムーズに既存システムと連携

(2) 強力な検索機能(ベクトル検索 + ルールベース検索)

  • Vertex AI Vector Searchと統合し、高速で正確な情報取得が可能
  • PineconeやWeaviateなどの外部ベクトルデータベースとも連携
  • **企業のデータソース(SQL, NoSQL, ファイルストレージ)**との接続も可能

(3) 柔軟なカスタマイズ性

  • LlamaIndexなどのオープンソースツールと統合し、独自のデータ構造を適用
  • 検索のランキング調整や、データの前処理を簡単に行える

RAGシステムを構築したい企業向けのメリット

(1) 企業データを活用した高精度なAI

RAGを導入すると、**企業の社内データ(マニュアル、FAQ、契約書、技術文書)**をLLMが適切に参照できるようになります。これにより、以下のような効果が期待できます。

  • カスタマーサポートの自動化(例:FAQの自動応答)
  • 社内業務の効率化(例:ナレッジマネジメント)
  • 営業活動の支援(例:製品情報の迅速な提供)

(2) 幻覚(ハルシネーション)の抑制

従来のLLMは、トレーニングデータに含まれていない情報を推測し、不正確な回答を生成することがありました。しかし、RAGはリアルタイムのデータ検索を活用するため、信頼性の高い情報のみを元に回答を生成できます。

(3) 迅速な導入と運用の容易さ

Vertex AI RAG Engineは、Google Cloudのエコシステム内で完結できるため、既存のGCP環境にスムーズに導入可能です。

  • すぐに使えるAPIで開発期間を短縮
  • Google Cloudの認証基盤と統合し、安全なデータ管理が可能

 Vertex AI RAG Engineのシステム構築手順

Vertex AI RAG Engineを活用して高精度な情報検索システムを構築するには、以下の手順を踏む必要があります。各ステップを丁寧に実施することで、企業の要件に適したRAGシステムを効果的に構築できます。

❶ データ準備

RAGシステムの基盤となるデータの準備は非常に重要です。以下の点に注意してデータを整備しましょう。

対応データフォーマット

Vertex AI RAG Engineは多様なデータフォーマットに対応しています。JSON、CSV、XML、PDF、HTML、Markdown、TXT、DOCXなどのフォーマットを扱えるため、企業内の様々な文書を活用できます。

❷ ベクトルデータベースの選択

検索の核となるベクトルデータベースの選択は慎重に行う必要があります。Vertex AI Vector Searchを使用すると、Google Cloudのエコシステム内で完結できるため管理が容易です。一方、Pinecone、Weaviate、FAISSなどの外部ベクトルデータベースも利用可能で、既存のシステムとの親和性や特定の要件に応じて選択できます。

❸ データのチャンク化

効果的な検索を行うために、データを適切な大きさに分割(チャンク化)することが重要です。一般的に512~1024トークン程度の単位で分割することで、検索精度が向上します。ただし、文脈を保持するために、段落や章などの論理的な区切りも考慮しましょう。

メタデータ付与

各チャンクにメタデータを付与することで、検索の精度と柔軟性が大幅に向上します。タイトル、カテゴリ、更新日時、キーワードなどを適切に設定し、検索時にこれらの情報を活用できるようにします。

➍ Vertex AI RAG Engineのセットアップ

システムの基盤を整えるため、以下の手順でVertex AI RAG Engineをセットアップします。

  1. Google Cloud Consoleで Vertex AI RAG Engine を有効化します。
  2. 適切な権限を持つサービスアカウントを作成し、必要なIAMロールを設定します。
  3. 開発環境を整備します。Cloud Shell、Vertex AI Workbench、Jupyter Notebookなどを利用し、効率的な開発環境を構築しましょう。

❺LLMとの統合

RAGシステムの核心部分であるLLMとの統合は、以下の点に注意して行います。

LlamaIndexの活用

LlamaIndexを使用することで、クエリの前処理や埋め込みモデルの適用が容易になります。これにより、検索精度を大幅に向上させることができます。

プロンプトエンジニアリング

LLMへの入力フォーマットを最適化するプロンプトエンジニアリングは非常に重要です。適切なプロンプトを設計することで、LLMからより正確で関連性の高い回答を得ることができます。

検索結果のランキング調整

検索結果のスコアリングを最適化し、関連性の高い情報を優先的に提供することが重要です。TF-IDF、BM25、ベクトルスコアなどの手法を組み合わせ、最適なランキングアルゴリズムを構築しましょう。

❻ 検索精度の最適化

構築したRAGシステムの検索精度を継続的に向上させるため、以下の取り組みを行います。

ランキング調整

TF-IDF、BM25、ベクトルスコアなどの手法を組み合わせ、最適なランキングアルゴリズムを構築します。これにより、ユーザーにとって最も関連性の高い情報を提供できます。

フィードバックループの構築

ユーザーの検索履歴や行動データを活用し、検索精度を継続的に向上させるフィードバックループを構築します。ユーザーの反応を分析し、検索アルゴリズムに反映させることで、より精度の高い検索結果を提供できます。

リアルタイムデータ更新

企業の情報は常に変化するため、インデックスを自動更新する仕組みを構築し、最新の情報を維持することが重要です。定期的なクロールやWebhookを活用し、データの鮮度を保ちましょう。

➐ 実運用と改善

RAGシステムを本番環境で運用しながら、継続的に改善を行います。

ログ分析とパフォーマンス監視

Cloud LoggingとBigQueryを活用し、ユーザーの検索パターンや系統的なエラーを分析します。これにより、システムの弱点を特定し、改善につなげることができます。

A/Bテストの実施

異なる検索アルゴリズムや回答生成方法を比較するA/Bテストを実施し、最適な設定を見つけ出します。ユーザーの反応や満足度を指標として、継続的に改善を行いましょう。

継続的な改善

定期的にモデルを再学習し、検索精度を向上させます。新しいデータや最新のアルゴリズムを取り入れることで、常に最高のパフォーマンスを維持できます。

以上の手順を丁寧に実施することで、Vertex AI RAG Engineを活用した高精度な情報検索システムを構築・運用することができます。企業の要件に合わせて各ステップをカスタマイズし、最適なRAGシステムを実現しましょう。

まとめ:Vertex AI RAG Engineの活用

Vertex AI RAG Engineを活用することで、企業は大量のデータを効果的に管理し、検索精度の高いAIシステムを構築できます。従来のLLMが抱える情報の正確性の課題を克服し、リアルタイムのデータ活用によって業務効率を大幅に向上させることが可能です。

特に、社内の膨大な文書やデータを活用し、カスタマーサポート、営業支援、ナレッジマネジメントなどの分野で高精度な情報検索を実現できます。また、Google Cloudとのシームレスな統合により、迅速な導入と安全な運用が可能です。

今後、企業が競争力を強化するためには、RAGの活用が不可欠です。PoCの実施、小規模な実験を通じた検証、本格導入へと段階的に進めることで、最適なAI活用環境を構築しましょう。

 

 

参考サイト

以上

筆者プロフィール
ケニー狩野(中小企業診断士、PMP、ITコーディネータ)
キヤノン(株)でアーキテクト、プロマネとして多数のプロジェクトをリード。
現在、株式会社ベーネテック代表、株式会社アープ取締役、一般社団法人Society 5.0振興協会評議員ブロックチェーン導入評価委員長。
これまでの知見を活かしブロックチェーンや人工知能技術の推進に従事。趣味はダイビングと囲碁。
2018年「リアル・イノベーション・マインド」を出版。