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GENIACとは?第4期16件・予算・Physical AIで読む日本のAI戦略【2026年版】

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※本記事は継続的に最新情報へアップデートしています。

2024年、日本の生成AI開発で不足が強く意識されたものの一つがGPUだった。

しかし2026年のGENIACで政府が整えようとしているのは、計算資源だけではない。企業データをAIが使える形にし、モデルを育て、ロボットを動かし、現場へ実装するための産業基盤である。第4期ではAI基盤モデル16件に加え、AI-Ready化、データエコシステム、ロボット基盤モデル、GENIAC-PRIZEまでが並ぶ。

問われているのは、GPUを確保してモデルを作れるかではない。計算資源、データ、モデル、AIエージェント、Physical AI、社会実装を、一つの産業循環としてつなげられるかである。

✅ 先に結論
  • GENIACは、経済産業省とNEDOが2024年2月から進める、生成AIの開発力強化と社会実装を支援する政策プロジェクトです。
  • AI基盤モデル向け計算資源支援は、第1期10件、第2期20件、第3期24件、第4期16件。第4期の「16件」はGENIAC全体の採択数ではありません。
  • 2026年の最大の変化は、GENIACが「モデル開発支援」から、データ・ロボット・社会実装までを含む多層的な支援へ広がったことです。
  • GENIACの累積総予算は、一次情報だけで一つの公式数字に確定できません。一部報道では2025年3月時点の「計算資源支援」の公募総額を339億円としていますが、第3期採択前の数字であり、AI-Ready化、データエコシステム、ロボット基盤モデルなどの別枠事業も含みません。
  • GENIAC-PRIZE 2026は別枠で、懸賞金最大6.3億円と、学生向けテーマに最大4億円相当の計算資源が用意されています。
この記事の著者・監修者 ケニー狩野(Kenny Kano)
Arpable 編集部(Arpable Tech Team)
株式会社アープに所属するテクノロジーリサーチチーム。人工知能の社会実装をミッションとし、最新の技術動向と実用的なノウハウを発信している。
役職:(株)アープ取締役。Society 5.0振興協会・AI社会実装推進委員長。中小企業診断士、PMP。著書『リアル・イノベーション・マインド』▶ 詳細情報

GENIACとは?国内AI開発と社会実装を支援する政策プロジェクト

GENIACは、国内の生成AI開発力を高め、社会実装へつなげるために、計算資源、データ、コミュニティ、実証などを支援する複数施策の集合体である。

GENIACの正式名称は「Generative AI Accelerator Challenge」です。経済産業省とNEDOは、国内に生成AIの開発力を形成し、社会実装を促進するため、2024年2月から基盤モデル開発に必要な計算資源の提供支援やコミュニティ運営などを進めています。

出発点にあった大きな課題の一つが、GPUをはじめとする計算資源でした。大規模な基盤モデルを学習するには大量の計算能力が必要で、スタートアップや研究機関にとって調達負担は小さくありません。GENIACではNEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」などを活用し、計算資源の利用料等を支援してきました。

ただし、2026年のGENIACをGPU支援だけで捉えると、政策の変化を見落とします。データ利用、企業間連携、AI-Ready化、ロボット基盤モデル、懸賞金型の社会実装まで支援対象が広がっているからです。

GENIACは、国が一つの「国産AI」を作る計画ではありません。国内の基盤モデル開発力と社会実装を支える、複数施策の集合体です。

では、その支援は4期を通じてどう変わってきたのでしょうか。ここを見ると、第4期の16件を読む意味がはっきりしてきます。

第1期から第4期まで、GENIACはどう変わったのか

4期を並べると、政策の重心が「国内でモデルを作れるか」から「産業データを使い、現場で機能するAIを作れるか」へ広がってきたことが分かる。

GENIAC 第1期〜第4期のAI基盤モデル向け計算資源支援
期 開発期間 採択テーマ数 読み取れる変化
第1期 2024年2月〜8月 10件 国内での基盤モデル開発経験を形成
第2期 2024年10月〜2025年4月 20件 領域特化、マルチモーダル、社会実装へ拡張
第3期 2025年8月〜2026年3月 24件 製造、医療、建設など具体的な利用領域へ展開
第4期 2026年度 16件 産業特化、エージェント、データ、ロボティクスへ多層化
出典:経済産業省・NEDOのGENIAC第1期〜第4期公表資料。件数は各期のAI基盤モデル向け計算資源支援の採択テーマ数。

第1期から第4期までを単純合計すると延べ70件ですが、同じ企業が複数期に採択されているため「70社」という意味ではありません。

さらに注意したいのが第4期の「16件」です。第4期の16件はGENIAC全体の採択数ではなく、AI基盤モデル開発に必要な計算資源の提供支援枠の16件です。

同じ2026年度には、AI-Ready化9件、5月のロボット基盤モデル初期枠2件、7月のデータエコシステム9件に加え、9月には多用途ロボット等を対象とした別枠でも実施予定先が決定しています。

つまり「第3期24件から第4期16件へ減った」と数字だけを見ると、GENIACが縮小したようにも見えます。しかし実際には、支援の対象そのものがモデルの外側へ広がっています。

その変化を最も具体的に見せてくれるのが、第4期の16件です。

第4期の採択企業16件(AI基盤モデル開発)――日本は何をAIに学ばせようとしているのか

16件を並べると、第4期の競争軸が日本語LLMの数やモデルサイズだけでなく、産業固有の知識と現場データへ広がったことが見えてくる。

1T級エージェント、音声、ビジネス文書、外科手術、生命科学、材料、防災、ドローン、建設、検索、自動運転――。第4期のテーマは、一つの「国産LLM」という言葉では収まりません。

本記事では、16件を大きく三つの方向から見ると理解しやすいと考えます。第一は、Sakana AIやSansanなどの業務・制度・専門知識を扱うAI。第二は、Direava、biomy、Preferred Networksなどの科学・医療・材料を扱うAI。第三は、アジラ、KDDI、newmoなどの映像や実世界を扱うAIです。これは公式分類ではなく、全体像を理解するための編集部による整理です。

GENIAC 第4期 AI基盤モデル開発テーマ16件
採択事業者 主なテーマ
Sakana AI 日本の制度・慣習・言語実務に適合する自律型エージェント基盤モデル
DubGuild 大規模音声言語基盤モデル
Sansan 日本語ビジネス文書を扱うVLM
シェルパ・アンド・カンパニー サステナビリティ領域の専門情報を扱うAI
Elith 生成AI・AI Safetyに関する基盤技術
Epigenetic AI エピゲノム情報を扱うLarge Epigenome Model
Direava 外科手術向けSurgical VLM・術中の状況理解や支援
biomy 空間オミクスを扱う「Virtual Cell」基盤モデル
Preferred Networks 材料開発向け基盤モデル
ABEJA AIエージェントやPhysical AIにつながる基盤技術
Spectee 災害情報を扱うLLM・危機管理AIエージェント
アジラ 防犯カメラ映像に特化したVLM
KDDI ドローン運航などを対象としたVLM
ONESTRUCTION BIM・建設知識を扱う基盤モデル
メルカリ Generative Retrievalを活用する検索基盤モデル
newmo 日本の交通環境に対応する自動運転基盤モデル
出典:GENIAC公式「領域特化モデル開発事業者(第4期)のご紹介」。テーマ名は公表内容を基に、本記事向けに簡潔に整理。

※ここからは、経済産業省・NEDO・採択企業の公表情報を踏まえたArpable編集部の分析です。

この16件で重要なのは、モデルの大きさだけではありません。手術室、防犯カメラ、道路、建設現場、材料開発、商品取引など、それぞれの産業に蓄積された知識がAIの学習対象になっています。

第4期の競争軸は「何B・何Tのモデルを作るか」だけではない。「日本の産業データと専門知識を、どこまでAIの能力へ変換できるか」へ広がったと捉えると、16件の意味が見えてきます。

16件の多くが産業領域への特化を競う一方、Sakana AIは1T級のエージェント基盤モデルという規模と汎用性の方向から、日本向けAIに挑んでいます。

Sakana AIの1T級モデルは何を意味するのか

Sakana AIは、日本の制度や業務文脈に適合する自律型エージェント基盤モデルを掲げ、1兆パラメータ規模の開発計画を進めている。

GENIAC公式の第4期キックオフ記事では、Sakana AIは日本の制度・慣習・言語実務に適合した1兆(1T)パラメータ規模のエージェント型基盤モデルを開発すると説明しています。日本語コーパスを用いた継続事前学習と事後学習を行い、Deep Researchやツール利用を伴う推論能力を重点的に強化する計画です。

さらに、日本語に最適化した音声入出力モデルも並行して開発するとしています。計算基盤を提供するさくらインターネットも2026年7月、Sakana AIがGENIAC第4期で1Tパラメータ規模のエージェントネイティブモデル開発を進めていることを公表しました。

ただし、1T級モデルは「完成済みの製品」ではありません。2026年10月3日時点で確認できるのは開発計画であり、完成時期、最終性能、公開形態などは確定していません。

2026年3月24日に公開されたNamazu α版と、8月3日にAPI提供が始まったSakana Namazuとも区別が必要です。Sakana AIによれば、現在のSakana NamazuはMoonshot AIの公開モデル「Kimi K2.6」をベースに、日本語と日本の業務文脈へ適応させたLLMです。

Namazuは既存の公開モデルを日本語・日本の業務文脈へ適応して提供する製品トラックです。一方、第4期の案件は、より大規模な日本特化型エージェント基盤モデルを開発する研究開発トラックと捉えると理解しやすいでしょう。両者が学習データ、モデル重み、技術基盤をどこまで共有するかは、現時点の公表情報では確認できません。

Sakana AI全体の技術・事業戦略はSakana AI総論、Namazuの技術的位置づけはSakana AI Namazu専門記事で詳しく解説しています。

しかし、どれほど高度なモデルを作っても、そのモデルに渡すデータが整っていなければ、企業の現場では力を発揮できません。そこで第4期は、モデルのさらに手前へ踏み込みました。

GENIACが次に踏み込んだのは、モデルの手前にある「データ」だった

2026年のGENIACでは、企業に眠る実データをAIが理解・利用できる状態へ変える「AI-Ready化」が、モデル開発と並ぶ重要テーマになった。

製造現場には、設備ログ、品質検査結果、図面、仕様書、作業手順、保守記録、画像、動画、熟練者の判断など膨大な情報があります。しかし、量が多いことと、AIが使えることは同じではありません。

データはあるのに使えない状態は、在庫が山ほどあるのに、何がどこにあるか誰にも分からない倉庫に似ています。

必要なのはデータ量を増やすことだけではありません。所在、意味、品質、利用権限、更新履歴を整理し、AIが安全に参照・学習できる状態へ変えることです。

NEDOは2026年5月13日、「製造業データ等のAI-Ready化に関する研究開発」について、36件の提案を審査し、9件の実施予定先を決定しました。経済産業省とNEDOは翌5月14日に、その採択内容を公表しています。

NEDOはAI-Ready化について、構造化・モデリング、適切なサイズへのチャンキング、ベクトル化・ラベリングによる意味付け、データ品質、ガバナンス・セキュリティ、モニタリングとフィードバックによる継続改善などを例示しています。

つまり、単に「社内データを集める」事業ではありません。AIが扱える形へデータを変換し、その方法自体を他社が参照できる形で蓄積しようとしています。

さらに2026年7月2日には、複数企業などにまたがるデータを適切に集約・利活用する「データエコシステムの構築等に関する研究開発」で9件を採択しました。AI-Ready化とデータエコシステムは、目的も公募時期も異なる別枠の事業です。

企業のAI競争力は「どのモデルを買うか」だけでは決まらない。「自社のデータを、どこまでAIが理解できる状態にできるか」が次の競争条件になる――第4期の16件とAI-Ready化を並べると、この構造が見えてきます。

あなたの会社の現場データは、いまAIに渡せる状態にあるでしょうか。

そして次に問われるのは、そのデータから学んだAIが、画面の中で答えるだけでなく、現実世界でどう行動するかです。

Physical AIへ――ロボット基盤モデルがGENIACに入った意味

GENIACは2026年、言語や画像を生成するAIから、自動運転車、ドローン・無人航空機、多用途ロボットなど、実世界のハードウェアを制御するAIへ支援を広げた。

2026年5月14日、経済産業省とNEDOはロボット基盤モデルに関する研究開発テーマ2件を採択しました。NEDOの実施予定先一覧によれば、実施予定先はTuringとロボトラックです。この初期枠は、公道、航路等の公共インフラを利用する自動運転車、ドローン・無人航空機、自動運航船などの機械システムを直接制御するモデルを対象としていました。

NEDOはロボット基盤モデルについて、AIによる知能高度化を通じて自律制御を実現する機械システムに搭載され、ハードウェアを直接制御するモデルと説明しています。ロボット向けVLMや世界モデルなどの周辺技術も、この領域を支える重要な要素です。

さらに9月9日には、多用途ロボット等を対象とした別枠の公募について、29件の申請から実施予定先が決定されました。NEDOの実施予定先一覧では、KDDI、SB Intuitions、Preferred Networks/Preferred Robotics、メルカリ、日立建機などを含む13テーマが採択されています。

ここでAIの仕事は、「質問へ答える」だけではなくなります。カメラやセンサーから環境を理解し、状況を判断し、車両やロボットを動かす。つまり、AIが「見る・考える・動く」領域へ入ります。

日本には自動車、産業機械、ロボット、センサー、製造設備といった産業基盤があります。しかし、それだけでAI時代の優位性が生まれるわけではありません。現場データを集め、学習し、評価し、ハードウェア制御へ戻す循環が必要です。

Physical AI全体の構造についてはPhysical AI完全ガイド、データとシミュレーションを実機学習へ戻す仕組みについてはPhysical AIのSim2Real/Real2Simループ解説で詳しく整理しています。

モデルとデータとロボットまで用意したとしても、最後に残る問題があります。誰がそれを使い、どんな業務を変えるのかです。

GENIAC-PRIZE 2026――「作る」から「使う」へ

GENIAC-PRIZE 2026は、AIを作る側だけでなく、実際に使う企業・団体と次世代開発者まで巻き込む社会実装側の仕組みである。

GENIAC-PRIZE 2026の概要
項目 内容
テーマ1 エッセンシャルワーカーの人手不足解消に資するAIを活用した業務プロセス改革
テーマ2 Physical AIに向けた学生の開発者育成のための公開型基盤モデル開発
懸賞金 最大6.3億円(テーマ1:6億円、テーマ2:3,000万円)
計算資源 テーマ2に最大4億円相当
現在の状況 両テーマとも応募受付終了。受賞者は未公表
出典:経済産業省、GENIAC-PRIZE 2026公式サイト。2026年10月3日時点。

テーマ1は2026年9月30日正午に応募を締め切りました。テーマ2はチームリーダー応募を7月31日正午、メンバー個人応募を9月30日正午に締め切っています。

📌 2026年10月3日時点の進捗

GENIAC-PRIZE 2026は、両テーマとも応募受付を終了しています。2026年10月3日時点で受賞者は公表されていません。テーマ1は11月末の成果物提出、その後の審査を経て、2027年3月下旬に結果発表・表彰が予定されています。テーマ2も2027年3月下旬の結果発表・表彰が予定されています。

テーマ1では、海外モデルを併用することは可能ですが、開発・実証においていずれかの国産基盤モデルを活用することが必須とされています。制度資料では、そこで得られた知見やフィードバックを国産基盤モデルの開発事業者へ還元し、国内モデルの改善につなげる考え方も示されています。

GENIAC-PRIZEが示す変化は、「国産モデルを作る」支援から、「実際の現場で使い、評価し、その知見を次の開発へ戻す」仕組みまで政策が広がったことです。

なお、経済産業省が示す「総額約10億円」はGENIAC全体の予算ではありません。GENIAC-PRIZE 2026の懸賞金最大6.3億円と、テーマ2の最大4億円相当の計算資源を合わせた規模です。

GENIACの予算はいくら?「339億円」と「約10億円」を混同しない

GENIACには複数の事業、公募、支援方式が重なっているため、全体を一つの予算額で表すと制度上異なる数字を混同する危険がある。

GENIACを調べると、しばしば「339億円」という数字に出会います。しかし、この数字が何を指し、どこまでを含むのかを区別しないまま使うと、GENIAC全体の予算と誤解しかねません。

「GENIAC 予算」は検索でも関心の高いテーマだからこそ、数字の大きさより、まず対象範囲を確認する必要があります。

日経クロステックは2025年3月、GENIACの計算資源支援について公募総額339億円、延べ30事業者と報じています。一方、第3期24件の採択発表は2025年7月です。

したがって、339億円を「第1〜第3期の総額」あるいは「GENIAC全体の累積総予算」と表現するのは正確ではありません。本記事では「2025年3月時点で報じられた計算資源支援の公募総額」として扱います。

また、前章の「約10億円」はGENIAC-PRIZE 2026の懸賞金と計算資源の規模です。AI-Ready化、データエコシステム、ロボット基盤モデルなどは、それぞれ別の事業区分・支援条件で動いています。

予算を見るときに重要なのは、大きな数字を一つ置くことではありません。計算資源、データ、ロボット、社会実装のどこへ、どの方式で公的支援が投入されているのかを分けて見ることです。

GENIACは日本のAI主権とどう関係するのか

AI主権は「すべてを国産化すること」ではない。必要な技術を自ら選び、適応し、重要データを管理しながら使い続けられる能力として捉える必要がある。

※以下は、政府のAI政策およびGENIACの支援内容を踏まえたArpable編集部の分析です。

本記事でいうAI主権は、すべてを国内で作ることではありません。計算資源へアクセスし、日本語や制度へモデルを適応し、重要データを適切に使い、海外製を含む複数の選択肢から調達・改良・運用できることです。

つまりAI主権とは、AIを「すべて国産化する能力」ではなく、「自ら選び、適応し、使い続けられる能力」と捉えると分かりやすいでしょう。

2026年7月14日、政府は人工知能基本計画(第Ⅱ期)を閣議決定しました。同計画は「AI主権」の確保を掲げ、計算資源やデータの基盤強化に加え、バーティカルAIやPhysical AIの社会実装を重点領域に位置づけています。GENIACも、こうした日本全体のAI政策の中で捉えると、その方向性を理解しやすくなります。

この観点からGENIACの4期を見ると、一つの流れが浮かびます。計算資源へのアクセスを支援する。国内でモデル開発経験を蓄積する。企業データをAI-Readyにする。産業特化モデルを作る。ロボットへ接続する。そしてPRIZEで現場実装を促す。

もちろん、ここから「GENIACによって日本のAI主権が確立した」と結論づけることはできません。GPU、クラウド、基盤モデルなどでは海外企業の技術も重要であり、国際的な投資規模の差もあります。

むしろ問われるのは、海外技術を利用しながらも、日本企業や社会の側にデータ、評価能力、改良能力、運用能力、選択肢をどこまで残せるかです。

その意味で、GENIACの評価は採択企業の数だけでは終わりません。支援によって生まれた能力が、その後も自立して回るかを見る必要があります。

GENIACは成功したのか――確認できる成果と、まだ分からないこと

モデル開発経験や支援領域の拡張は確認できる一方、政策としての長期的な産業効果を評価するには、商用利用や支援終了後の自立性を見る必要がある。

※以下は、公開済みの成果と未確定事項を分けたArpable編集部の整理です。

第1期では、大規模な計算資源を使ったLLM開発の経験が国内に蓄積されました。第2期、第3期では領域特化や社会実装へ対象が広がり、第4期ではデータとロボティクスまで明確に支援対象へ入っています。

これは公開情報から確認できる変化です。

一方、まだ十分に分からないこともあります。支援したモデルが長期的にどれだけ商用利用されるのか。利用企業の生産性や売上へどの程度つながるのか。支援終了後も自力で研究開発を継続できるのか。第4期で始まったデータ・ロボット施策が、実際の産業競争力へどこまで結びつくのか。

「採択された」「大きなモデルを開発した」ことと、「持続的な競争力を獲得した」ことは、同じではありません。

今後見るべきなのは、モデルのパラメータ数だけではありません。製品になったか。顧客が使ったか。現場データが増えたか。そのデータが次のモデル改善へ戻ったか。支援終了後も開発・利用が継続したか。

AIエージェントを本番業務へ展開するときも同じで、PoCを作ることより、評価・権限・運用・改善を循環させる設計が重要になります。実装面についてはAIエージェント導入・本番運用ガイドで詳しく解説しています。

まとめ――2024年に足りなかったのはGPUだった。2026年は、それだけではない

GENIACの4期を一本の線で捉えると、日本のAI政策が計算資源からデータ、モデル、実世界、社会実装へ支援対象を広げてきた姿が見えてくる。

2024年、GENIACの大きな役割は、国内のAI開発者が計算資源へアクセスし、実際に基盤モデルを開発する経験を積むことでした。

2026年、その対象には産業特化モデル、1T級エージェント型モデルの開発計画、AI-Ready化、データエコシステム、ロボット基盤モデル、Physical AI人材育成、社会実装コンテストまで並んでいます。

GENIACを「国産LLMにいくら補助したのか」という問いだけで見ると、この変化を捉えきれません。

計算資源 → データ → モデル → AIエージェント → Physical AI → 社会実装

この循環を回すために、GENIACは4期にわたって支援対象を広げてきました。

2024年に足りなかったのはGPUだった。2026年に問われているのは、そのGPUで育てたAIが現場のデータを学び、仕事を変え、その成果を次のモデルへ返せるかである。

GENIACは、その循環の入口を整え始めました。次に問われるのは、日本の産業がそれを支援後も回し続けられるかです。

専門用語まとめ

GENIAC第4期を理解するために重要な用語を、モデル、データ、エージェント、Physical AIの観点から整理する。

GENIAC
Generative AI Accelerator Challenge。経済産業省とNEDOが2024年2月から進める、生成AIの開発力強化と社会実装を支援する政策プロジェクト。
基盤モデル
大量のデータで事前学習され、多様な用途へ応用できるAIモデル。言語、画像、音声、科学データなど対象は広がっている。
AI-Ready
データの構造、サイズ、意味付け、品質、ガバナンスなどを整え、AIが継続的に利用しやすい状態にすること。
VLM
Vision-Language Model。画像や映像と言語を組み合わせて理解・処理するAIモデル。
Physical AI
実世界を認識・推論し、ロボット、車両、ドローンなどの物理システムの行動につなげるAI領域の総称。
継続事前学習
学習済みの基盤モデルに追加データを学習させ、特定言語や特定分野の知識を強化する手法。
エージェントネイティブモデル
質問へ回答するだけでなく、計画、ツール利用、外部システムとの連携などを通じ、複数ステップのタスク遂行を前提として開発されるAIモデル。

参考文献 / 出典

採択件数、日付、支援内容、進捗は、2026年10月3日時点の経済産業省、NEDO、内閣府、採択企業等の一次情報を優先して確認した。

次に読むならこの3本

GENIACをAI政策だけで終わらせず、計算基盤、半導体、ロボット産業まで広げて考えるための関連記事。

補足Q&A

検索で特に確認されやすい「GENIACとは」「予算」「第4期16件」の三つを、本文の結論に絞って整理する。

Q1.GENIACとは何ですか?

A1. 経済産業省とNEDOが2024年2月から進める、生成AIの開発力強化と社会実装を支援する政策プロジェクトです。計算資源支援から始まり、現在はデータ、ロボット基盤モデル、社会実装まで対象を広げています。

Q2.GENIACの予算はいくらですか?

A2. GENIAC全体の累積総予算を、一つの公式数字として確定することは困難です。2025年3月時点の計算資源支援の公募総額として339億円を報じた記事はありますが、第3期採択前の数字であり、第4期やデータ、ロボット、懸賞金施策を含むGENIAC全体の累積総予算とは区別が必要です。

Q3.GENIAC第4期の採択企業は16社ですか?

A3. 16社はAI基盤モデル開発に必要な計算資源支援枠の採択事業者です。同じ第4期にはAI-Ready化、ロボット基盤モデル、データエコシステムなどの別枠があるため、「GENIAC第4期全体が16社」と表現するのは正確ではありません。

更新履歴

第4期のAI基盤モデル16件、AI-Ready化、データエコシステム、ロボット基盤モデル、GENIAC-PRIZE 2026を反映した。

  • 2026年10月3日:第4期16件、AI-Ready化、ロボット13テーマ、GENIAC-PRIZE 2026、Sakana AI 1T級計画を反映し全面改訂。
  • 2026年3月31日:初版公開。

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ケニー 狩野
ケニー狩野(Kenny Kano)は、AI社会実装・技術経営・ITコンサルティングを専門とする経営者・監修者。株式会社ベーネテック代表、株式会社アープ取締役、一般社団法人Society 5.0振興協会 AI社会実装推進委員長。早稲田大学大学院理工学研究科修了後、キヤノンで国内外の開発や中国・インド・オーストラリアを含むオフショア案件を牽引。独立後はAI社会実装支援に従事し、Arpableで人工知能・先端技術分野の記事を約2年間で約300本監修。中小企業診断士、PMP、ITコーディネータ。著書『リアル・イノベーション・マインド』。実務と経営を橋渡しする。