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NSW株式会社の2026年3月期決算は、売上成長の裏側で、利益管理と新体制の実行力が問われた決算である。
売上高は524億31百万円まで伸びた一方、営業利益は52億90百万円に減少し、成長投資と不採算案件の影響が表面化した。
本記事の主役は、単なる決算説明ではなく、NSWが「従来型SIer」から次の成長段階へ移れるかという判断軸である。
✅ 先に結論
NSWの2026年3月期は増収でしたが、人的投資と不採算案件により営業減益となりました。焦点は、竹村新体制のもとで利益管理を立て直し、2028年3月期の中期経営計画目標へ近づけるかです。
- 売上は堅調:売上高は524億31百万円、前期比4.8%増。
- 利益は課題:営業利益は52億90百万円、前期比13.5%減。
- デバイス事業は好調:半導体設計・開発需要を取り込み、売上・利益ともに伸長。
- 新体制へ移行:2026年4月1日付で竹村大助氏が代表取締役 執行役員社長に就任。
- 次の焦点:不採算案件の再発防止、マレーシア拠点の活用、人材投資の回収。
何が変わったのか
NSWの2026年3月期は、売上成長と利益課題が同時に表れた決算である。
まず全体像から見ていきましょう。
独立系ITソリューションプロバイダであるNSW株式会社は、2026年5月11日に2026年3月期連結決算を発表しました。対象期間は、2025年4月1日から2026年3月31日までです。
売上高は前期比4.8%増の524億31百万円となり、事業規模は着実に拡大しました。一方で、営業利益は前期比13.5%減の52億90百万円、経常利益は前期比10.3%減の55億33百万円となりました。
つまり、数字の見え方は単純ではありません。NSWは売上を伸ばした一方で、成長投資と不採算案件によって営業利益を落としたのです。
| 項目 | 2026年3月期 | 前期比 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 52,431百万円 | +4.8% | IT投資需要を取り込み、事業規模は拡大 |
| 営業利益 | 5,290百万円 | △13.5% | 人材投資と不採算案件により減益 |
| 経常利益 | 5,533百万円 | △10.3% | 本業周辺を含めても利益は減少 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 3,709百万円 | +1.3% | 最終利益は前期を上回る |
| 売上高営業利益率 | 10.1% | △2.1pt | 利益率の回復が今後の焦点 |
| ※ 出典:NSW株式会社「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」をもとにArpable作成。 | |||
この決算を一言で表すなら、「需要はある。しかし、利益を守る力が問われた一年」です。
IT企業にとって売上成長は重要です。しかし、プロジェクト型ビジネスでは、売上が伸びても案件管理を誤ると利益は簡単に削られます。今回のNSW決算は、その典型例といえます。
4つの事業セグメントを一言で読む
NSWは、大きく4つの事業セグメントで構成されています。エンタープライズソリューション、サービスソリューション、エンベデッドソリューション、デバイスソリューションです。
2026年3月期は、4事業すべてで売上が増えました。ただし、利益面では明暗が分かれました。
| セグメント | 売上高 | 前期比 | 営業利益 | 前期比 | 一言でいうと |
|---|---|---|---|---|---|
| エンタープライズソリューション | 16,349百万円 | +4.9% | 1,698百万円 | △25.6% | 売上は伸びたが、不採算案件が重い |
| サービスソリューション | 15,218百万円 | +6.0% | 533百万円 | △35.8% | IoT・データ系は伸びたが、利益管理が課題 |
| エンベデッドソリューション | 11,250百万円 | +1.6% | 1,609百万円 | △6.6% | 車載・産業機器は堅調、通信系は調整 |
| デバイスソリューション | 9,612百万円 | +6.8% | 1,447百万円 | +13.3% | 半導体需要を取り込み、最も好調 |
| ※ 出典:NSW株式会社「2026年3月期 決算短信」「2026年3月期 決算説明」をもとにArpable作成。 | |||||
特に目立つのは、デバイスソリューションです。半導体設計・開発需要を取り込み、売上だけでなく営業利益も伸ばしました。
一方、エンタープライズソリューションとサービスソリューションは、売上が伸びているにもかかわらず営業利益が大きく減りました。これは需要不足ではなく、開発プロジェクトの収益管理に課題が出たと見るべきです。
NSW全体で見ると、デバイス事業が利益を支え、エンタープライズとサービスが利益率の足を引っ張った構図です。
なぜ今重要なのか
重要なのは、NSWが売上拡大企業から利益を伴う成長企業へ進化できるかである。
NSWの決算が重要なのは、単に「増収減益だったから」ではありません。
同社は、AI、DX、データ活用、組込み、半導体といった成長領域に関わっています。企業のIT投資需要は引き続き堅調であり、NSWにとって市場環境そのものは追い風です。
しかし、追い風の市場でも、すべてのIT企業が利益を伸ばせるわけではありません。システム開発会社にとって最大の落とし穴は、受注した案件が想定以上に複雑化し、工数・品質・納期のコントロールを失うことです。
ITサービス企業の実力は、売上高ではなく「案件を利益に変える力」に出るからです。
なぜ増収なのに営業利益が減ったのか
今回の営業減益には、主に2つの要因があります。
第一に、人材投資です。AI、クラウド、セキュリティ、データ、半導体、組込み領域では、技術者の獲得競争が激しくなっています。NSWも採用、育成、資格取得などに投資しており、短期的には人件費や販売管理費の増加として利益を圧迫します。
第二に、不採算案件です。特にエンタープライズソリューションやサービスソリューションでは、第3四半期以降に発生した不採算プロジェクトが利益を押し下げました。
不採算案件とは、簡単にいえば「思ったより手間がかかり、利益が出にくくなった案件」です。仕様変更、見積もりの甘さ、要件定義の不足、品質問題、体制不足などが重なると、プロジェクトは売上を生んでも利益を残しにくくなります。
今回のNSWは、需要が落ち込んだのではありません。需要を取り込んだうえで、利益を守り切れなかった部分があったということです。
2026年4月から新社長体制へ移行
NSWは2026年4月1日付で、経営体制も刷新しました。
前代表取締役 執行役員社長の多田尚二氏は代表取締役会長に就任し、前取締役 執行役員専務の竹村大助氏が代表取締役 執行役員社長に就任しました。
| 氏名 | 新役職 | 旧役職 | 意味合い |
|---|---|---|---|
| 多田 尚二氏 | 代表取締役会長 | 代表取締役 執行役員社長 | 経営全体を支える立場へ |
| 竹村 大助氏 | 代表取締役 執行役員社長 | 取締役 執行役員専務 | 新中期経営計画を実行するトップへ |
| ※ 出典:NSW株式会社「代表取締役の異動(追加選定)に関するお知らせ」をもとにArpable作成。 | |||
この人事は、単なる世代交代ではありません。
NSWは中期経営計画で「Change Technology」「Change Talent」「Change Business」を掲げています。技術、人材、ビジネスを変えていくという意味です。
新体制の最大のテーマは、売上成長だけでなく、利益管理と事業変革を同時に進めることです。
どう捉えるべきか
NSWの組織再編は、既存事業の効率化と成長領域へのシフトを同時に狙う動きである。
2026年4月1日付で、NSWは組織改正も行いました。
組織改正と聞くと、読者には少し分かりにくく感じられるかもしれません。しかし、今回の再編は大きく見るとシンプルです。
分かれていた営業機能をまとめる。重点顧客に深く入り込む組織を作る。ERPをクラウド・業務変革と一体で扱う。組込み領域では、ネットワークからコネクテッドへ重心を移す。
つまり、NSWは「個別案件をこなす会社」から「顧客の変革を継続的に支える会社」へ動こうとしていると捉えると分かりやすいです。
| 対象 | 変更内容 | わかりやすい意味 |
|---|---|---|
| 営業機能 | インダストリーソリューション営業統括部とシステムソリューション営業統括部を営業統括部に統合 | 営業を一本化し、提案力と効率を高める |
| 主要顧客対応 | アカウントビジネス事業部を設置 | 重要顧客に深く入り、継続的なSI提案を強化する |
| ERP事業 | ERP事業部をビジネスイノベーション事業部とクラウドプラットフォーム事業部へ移管 | ERPを業務変革・クラウドと一体で扱う |
| 組込み・通信領域 | ネットワーク事業部をコネクテッドテクノロジー事業部へ改組 | SDV、IoT、モビリティなど接続される製品開発へ寄せる |
| ※ 出典:NSW株式会社「組織改正および人事異動のお知らせ」をもとにArpable作成。 | ||
マレーシア法人はなぜ重要なのか
もう一つ重要なのが、マレーシア現地法人「NSW SOLUTION MALAYSIA SDN. BHD.」の営業開始です。
NSWは、マレーシアを半導体事業の開発拠点として位置づけ、2026年4月から現地法人の営業を開始しました。背景には、AI、IoT、EVの普及に伴う半導体市場の拡大があります。
マレーシアは半導体産業の集積地として存在感を高めています。NSWにとっては、国内だけでなく海外の人材・需要を取り込むための足場になります。
マレーシア法人は、NSWのデバイス事業を国内中心からグローバル対応へ広げる一手です。
デバイスソリューションが2026年3月期に最も好調だったことを考えると、この海外展開は単なる拠点追加ではありません。好調事業をさらに伸ばすための戦略投資と見るべきです。
再生可能エネルギーへの切り替えも進む
NSWは、サステナビリティ面でも動きを進めています。
2026年4月から、主要拠点で使用する電力の一部を実質再生可能エネルギー由来の電力へ切り替えました。公表内容では、全社の電力の約95%が再生可能エネルギー由来電力に切り替わったとされています。
これは、2030年度までに温室効果ガス排出量を2013年度比で半減させるという目標に向けた施策です。
IT企業は、データセンターやオフィス、開発拠点で電力を使います。今後は、技術力だけでなく、環境負荷を抑えて事業を成長させる力も評価されます。
NSWの再エネ切り替えは、企業価値を支える非財務戦略の一部です。
実務ではどう判断するか
判断軸は、売上成長よりも利益率回復、案件管理、デバイス事業の継続成長である。
投資家、取引先、採用候補者、あるいはIT業界を見ている読者は、NSWをどう評価すればよいのでしょうか。
見るべきポイントは、売上高だけではありません。むしろ、次の3点が重要です。
- 不採算案件の再発防止:エンタープライズとサービスの利益率を戻せるか。
- デバイス事業の継続成長:半導体需要とマレーシア法人を成長に結びつけられるか。
- 人材投資の回収:採用・育成・資格取得が、売上だけでなく利益に効くか。
特に重要なのは、不採算案件の管理です。
ITサービス企業にとって、プロジェクトの見積もり精度、進捗管理、品質管理は利益そのものです。ここが改善すれば、NSWは売上成長を利益成長に変えやすくなります。
NSWの次の評価軸は「伸びる会社か」ではなく、「伸びながら利益を守れる会社か」です。
2027年3月期計画と2028年3月期中計目標
NSWは2027年3月期の連結業績予想として、売上高540億円、営業利益54億円、経常利益54億50百万円、親会社株主に帰属する当期純利益37億50百万円を見込んでいます。
| 項目 | 2027年3月期予想 | 前期比 | 見方 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 54,000百万円 | +3.0% | 堅実な増収計画 |
| 営業利益 | 5,400百万円 | +2.1% | 利益回復を見込む |
| 経常利益 | 5,450百万円 | △1.5% | 横ばいに近い水準 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 3,750百万円 | +1.1% | 最終利益は微増計画 |
| ※ 出典:NSW株式会社「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」をもとにArpable作成。 | |||
さらに、新中期経営計画では、2028年3月期に売上高600億円、営業利益率12.0%、ROE10%以上を目標に掲げています。
2026年3月期の売上高営業利益率は10.1%でした。ここから12.0%へ戻すには、売上を伸ばすだけでは不十分です。
案件管理の精度を上げること。人材投資を収益につなげること。デバイス、AI、データ活用、クラウド、組込みなどの高付加価値分野を伸ばすこと。
2027年3月期は、NSWが利益率回復の道筋を示せるかを確認する一年になります。
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一次情報からどこまで言えるか
NSWの成長性は確認できる一方、利益率改善の持続性は今後の実績で見極める必要がある。
一次情報から明確に言えるのは、2026年3月期に売上が伸び、デバイスソリューションが利益面を支えたことです。
また、2026年4月から新社長体制、組織再編、マレーシア法人の営業開始、再生可能エネルギー由来電力への切り替えが進んだことも確認できます。
一方で、営業利益率が中期経営計画の目標水準へ回復するかは、現時点では確定できません。
不採算案件の再発防止、人材投資の回収、デバイス事業の継続成長を、今後の四半期決算で確認する必要があります。
| 区分 | 確認できること | 今後の見極めポイント |
|---|---|---|
| 決算 | 売上高は524億31百万円、前期比4.8%増 | 増収を営業利益の成長につなげられるか |
| 利益 | 営業利益は52億90百万円、前期比13.5%減 | 不採算案件の再発防止が進むか |
| 成長事業 | デバイスソリューションは売上・営業利益ともに伸長 | 半導体需要と海外拠点を継続成長に結びつけられるか |
| 新体制 | 竹村大助氏が代表取締役 執行役員社長に就任 | 中期経営計画の実行力が高まるか |
| サステナビリティ | 全社電力の約95%を実質再エネ由来電力へ切り替え | 非財務施策が企業価値向上につながるか |
まとめ
NSWは増収減益を起点に、利益管理と成長投資の両立を問われる局面に入った。
NSWの2026年3月期決算は、表面的には増収減益です。
しかし、その中身を見ると、売上需要は堅調で、半導体設計・開発を担うデバイスソリューションは明確に伸びています。これは、AI、IoT、EV、半導体需要の拡大を取り込めていることを示しています。
一方で、エンタープライズソリューションとサービスソリューションでは、不採算案件の影響が出ました。ここは今後の課題です。
竹村新社長体制のもと、組織再編によって営業、顧客対応、ERP、コネクテッド領域を見直したことは、単なる組織変更ではありません。事業の質を高めるための再設計と見るべきです。
マレーシア法人の営業開始、再生可能エネルギー由来電力への切り替え、中期経営計画で掲げる売上高600億円・営業利益率12.0%という目標。
これらを一つにつなげると、NSWは「従来型SIer」から、AI・データ・組込み・半導体・グローバル展開を組み合わせたITソリューション企業へ変わろうとしていることが見えてきます。
2026年のNSWは、成長の入口にいる一方で、利益管理の真価を問われる局面にあります。
専門用語まとめ
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 増収減益 | 売上は増えたが、利益は減った状態。成長投資、コスト増、不採算案件などで起こります。 |
| 営業利益 | 本業でどれだけ利益を出したかを示す指標です。IT企業では案件管理力が大きく影響します。 |
| 不採算案件 | 想定以上に工数やコストがかかり、利益が出にくくなったプロジェクトのことです。 |
| SIer | システムインテグレーターの略。企業向けにシステム開発、導入、運用支援などを行う会社です。 |
| SDV | Software Defined Vehicleの略。車の機能をソフトウェアで制御・更新する考え方です。 |
| Scope 2 | 企業が購入した電力などの使用に伴って発生する、間接的な温室効果ガス排出量です。 |
| ROE | 自己資本利益率。株主から預かった資本を使って、どれだけ効率よく利益を生んでいるかを示します。 |
参考文献 / 出典
一次情報
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補足Q&A
Q1.
NSWの2026年3月期決算は良かったのですか?
A1.
売上面では良好ですが、利益面には改善課題が残る決算です。
売上高は前期比4.8%増となりました。一方で、営業利益は13.5%減となっており、人的投資と不採算案件の影響が出ています。総合的には「需要は強いが、利益管理に課題が残った決算」といえます。
Q2.
営業利益が減った最大の理由は何ですか?
A2.
人的投資などの費用増と、一部の開発プロジェクトで発生した不採算案件が主因です。
特にエンタープライズソリューションとサービスソリューションで営業利益が大きく減りました。売上需要そのものが弱いというより、案件管理と費用増が利益を押し下げた構図です。
Q3.
NSWの今後の成長ドライバーは何ですか?
A3.
デバイスソリューション、AI・データ活用、クラウド、組込み・モビリティ、マレーシア法人を起点とした海外展開です。
特にデバイスソリューションは2026年3月期に売上・利益ともに伸びており、半導体需要を取り込む重要な成長領域です。ただし、成長を利益に変えるには、不採算案件の再発防止と人材投資の回収が欠かせません。
更新履歴
- 2025年6月9日:初版公開。
- 2026年5月29日:2026年3月期決算と新体制情報を反映した。