※本記事は継続的に最新情報へアップデートしています。
画面を覗き込み、通知に追われ、アプリをタップし続ける――そんなスマートフォン中心の日常に、別の選択肢が生まれようとしている。
OpenAIと、iPhoneを生んだデザイナーJony Iveが開発する最初のAIデバイスは、手のひらで持ち運べる画面のない「ドーナツ型スマートスピーカー」になると報じられている。
しかし、本質は奇抜な形ではない。カメラやマイクで周囲を理解し、ChatGPTをガラス画面の中から現実空間へ連れ出す――これは「AI時代の人間とコンピューターの距離」を再設計する挑戦である。
✅ 先に結論
OpenAIは、ChatGPTをスマホやPC上の「アプリ」から解放し、AIそのものを中心に据えた新しいコンピューターを作ろうとしています。
- 最初の製品:2026年8月時点では、画面なしで携帯可能な「ドーナツ型スマートスピーカー」と報じられている
- 発売時期:2027年が有力。OpenAIは最終仕様・正式名称・価格・発売日をまだ正式発表していない
- 本当の狙い:スマホの代替ではなく、音声・視覚・文脈理解を中心とする「AIネイティブな新カテゴリー」の創造
- 長期構想:単一製品ではなく、複数のAI機器を展開する「Family of Devices(デバイス群)」を構想
- 最大の不確実性:製品完成度、プライバシー、価格に加え、2026年7月に始まったAppleとの企業秘密訴訟
OpenAIのAIデバイスとは?いま何を作っているのか
最新報道が示す第一弾は、画面をなくし、音声・カメラ・センサーで人と環境を理解する新しいAIコンピューターである。
OpenAIのハードウェア計画は、2025年当時の「正体不明のAIガジェット」から、この1年でかなり輪郭が見えてきました。
2026年7月以降の主要報道では、OpenAI初の消費者向けハードウェアが画面を持たない、持ち運び可能なスマートスピーカーになる見通しだと伝えられています。
さらに8月には、その姿について、より具体的な情報が出てきました。
「ドーナツ型の小型スマートスピーカー」といわれ、バッテリーを内蔵し、手で家の中を持ち運べるデバイスだというのです。
| 項目 | 現在報じられている内容 | 確度 |
|---|---|---|
| 製品カテゴリー | 画面なしの携帯型スマートスピーカー | 複数の主要報道あり |
| 形状 | ドーナツ型の小型デバイスと報じられている | 報道ベース・未発表 |
| 入力 | マイク、カメラ、周囲を認識するセンサー | 主要報道あり |
| 反応・出力 | 音声、ライト、機械的に動く部品など | 報道ベース・未発表 |
| 電源 | 充電式バッテリー。家庭内を持ち運べる設計 | 主要報道あり |
| 価格 | 300〜400ドル程度との報道 | 未確定 |
| 発売 | 2027年が有力 | 正式発売日は未発表 |
| ※2026年8月16日時点。OpenAIは最終的な製品名、外観、価格、発売日を正式発表していない。主要報道をもとにArpable編集部が整理。 | ||
なぜ「ドーナツ型スマートスピーカー」と表現するのか
海外報道では大きさを「ホッケーパックほど」と表現する例もありますが、日本では形や大きさを直感的に想像しにくいでしょう。
そこで本記事では、最新報道が伝える姿を分かりやすくするため、「手で持ち運べる、ドーナツ型の小型スマートスピーカー」と表現します。
ただし、これはOpenAIが正式公開した製品写真を見て説明しているわけではありません。最終的な形状やデザインはまだ確定情報ではない点には注意が必要です。
何ができるといわれているのか
想定されている用途は、Amazon EchoやApple HomePodの延長だけではありません。
スマートホーム機器の操作、メディア再生、質問への回答などに加え、カメラや各種センサーを使って「いまユーザーがどこにいて、何をしているのか」まで理解することが構想されています。
つまり、従来の「命令すると答えるスピーカー」ではなく、人間の生活文脈を継続的に理解するAIコンパニオンが目標だと捉える方が分かりやすいでしょう。
Jony Iveとioとは?なぜ65億ドルを投じたのか
65億ドル規模のio買収は人材獲得だけではない。OpenAIがAI時代のユーザー体験そのものを自社で設計するための一手である。
このプロジェクトのもう一人の主役が、Jony Ive(ジョニー・アイブ)です。
iMac、iPod、iPhoneなどAppleを代表する製品のデザインを率い、2019年にAppleを離れた後はデザイン会社LoveFromを設立しました。
OpenAIとIve、LoveFromは買収発表以前から長期にわたって協業を続け、2025年5月、OpenAIはIveらが設立したハードウェア企業io Productsを約65億ドル規模の株式取引で取得すると発表しました。
そして2025年7月、io ProductsのチームはOpenAIへ正式に統合されています。
一方、Jony Ive本人とLoveFromは独立性を維持しながら、OpenAI全体のデザインとクリエイティブに深く関与する体制になりました。
io ProductsはJony Iveらが設立した会社名です。商標を巡るiyOとの紛争を受け、OpenAIは新しいAIハードウェアの製品ブランドとして「io」を使わない方向を示しています。したがって「OpenAI io」はプロジェクトを探す検索語として現在も使われていますが、最終製品名が「io」になるとは限りません。
なぜJony Iveなのか
OpenAIが欲しかったのは、単に美しい筐体を描くデザイナーではないでしょう。
AIがどれほど賢くなっても、ユーザーが毎回スマートフォンを取り出し、アプリを探し、画面をタップしてプロンプトを入力するなら、インターフェースは依然としてスマホ時代のままです。
OpenAIとIveが共有している問題意識は、AIが「見る・聞く・考える・理解する」能力を持ち始めたのに、人間とAIをつなぐ道具だけが従来型のまま残っていることです。
Iveに期待されているのは「AIを入れる箱」のデザインではなく、「AIと人間がどう接するか」の再設計だと見るべきです。
なぜ画面をなくすのか?「アンチiPhone」の意味
OpenAIとIveが壊そうとしているのはスマートフォンそのものではなく、人間が常に画面を見て操作するというコンピューティングの前提である。
現代のスマートフォンは便利です。
しかしその便利さと引き換えに、私たちは通知を見るために画面を開き、アプリを探し、文字を読み、タップし続ける生活を送っています。
Sam Altmanは対談の中で、通知や情報が絶えず注意を奪う現在のスマートフォン体験を、騒がしく刺激に満ちた環境になぞらえました。
そしてOpenAIとIveが目指す製品は、その対極にある「穏やかで静かな体験」だと説明しています。
一部で「アンチiPhone」と呼ばれる理由もここにあります。
しかし、それはiPhoneという製品そのものを否定する話ではありません。
「道具の都合に人間が合わせる時代から、人間の文脈に道具が溶け込む時代へ」――これこそが、画面をなくそうとする発想の転換です。
重要なのは、画面が完全になくなることではありません。AIがユーザーの言葉、声、視覚情報、過去の文脈を理解し、必要なときに自然に働くようになれば、人間側がコンピューターの操作方法に合わせる時間を減らせるという考え方です。
これは、AIを空間や日常環境へ溶け込ませるアンビエント・コンピューティングへの接近でもあります。
AIが環境に常駐し、必要なときだけ動くという考え方については、Ambient Agentとは?AIが業務環境に常駐する未来でも詳しく解説しています。
また、同じ「スマホの外へ出るAI」でも、視覚情報を重ねるスマートグラスは別の進化を遂げています。詳しくはAIスマートグラスとMetaのAI戦略をご覧ください。
OpenAIはスマホを作るのか?
2026年8月時点でOpenAI製スマートフォンは正式発表されていない。第一弾として有力なのはスマホではなく画面なしのAIデバイスである。
「OpenAI スマホ」という検索が増えるのは自然です。
OpenAIがiPhoneを生んだJony Iveと組み、独自ハードウェアへ進出するとなれば、「ChatGPT Phone」のような製品を想像したくなります。
しかし現時点では、OpenAIが独自スマートフォンを発売すると正式発表した事実はありません。
むしろ第一弾として報じられているのは、スマホとは正反対の画面なしAIデバイスです。
ここに戦略的な意味があります。
OpenAIがiPhoneと同じタッチ画面付きスマートフォンを作れば、結局はAppleやGoogleが築いたカテゴリーの中で競争することになります。
狙っているのは「より良いスマホ」ではなく、「ガラス画面を必要としないAIへの入口」を作ることだと見る方が、現在の動きを説明しやすいでしょう。
1台では終わらない「Family of Devices」構想
OpenAIのハードウェア戦略は一発勝負のガジェットではなく、AIとの接点を複数の機器へ広げる「デバイス群」の構築を目指すものである。
OpenAI幹部は2026年、同社が単一製品ではなく「Family of Devices」を開発していることを明らかにしています。
つまり、現在報じられているスマートスピーカーは最終目的ではありません。
報道では、スマートスピーカーのほか、ウェアラブルやスマートグラスなど、複数のフォームファクタが検討されてきたとされています。
最終的な製品構成はまだ変わる可能性がありますが、長期戦略は見えてきます。
- スマートスピーカー:家庭の中でAIと自然に会話する入口
- カメラ・センサー:AIが現実世界の文脈を理解する目
- ウェアラブルやグラス:人間と一緒に移動するAIインターフェース
- ChatGPT・AIモデル:複数のデバイスを横断する知能
OpenAIはAIを「質問に答えるチャット」から、現実の状況を理解し、ユーザーに代わって判断・行動する存在へ進化させようとしています。
これは、AIが計画・判断・ツール利用まで担うAIエージェントの実装ともつながる流れです。
さらに、ロボットのように物理世界へ直接作用するAIについては、Physical AIとは?次世代AI技術を徹底解説で整理しています。
Humane AI PinとRabbit r1は、なぜ重要なのか
OpenAIの最大の敵はAppleだけではない。「それならスマホでいい」というAI専用デバイス市場がすでに突きつけた厳しい現実である。
「画面を減らしてAIと自然に会話する」という発想自体は、OpenAIが初めてではありません。
代表例がHumane AI Pinです。
AI Pinは大きな期待を集めましたが、価格、応答速度、バッテリー、発熱、機能面などについて厳しい評価を受けました。
Humaneは2025年2月にコンシューマー向けAI Pinの販売終了を発表し、同月末にはクラウドを必要とする主要機能も停止しています。
HPはその後、約1億1,600万ドルでHumaneのAI技術、300件を超える特許・特許出願、人材など主要資産を取得しました。
Humaneは前年、7億5,000万〜10億ドル規模での売却を模索していたと報じられており、この落差はAI専用デバイス市場の厳しさを象徴しています。
Rabbit r1もAI専用端末として大きな注目を集めましたが、同じ問いを市場に残しました。
「結局、スマホで十分なのではないか。」
| 壁 | ユーザーが感じる問題 | OpenAIに必要な答え |
|---|---|---|
| 速度 | 返事が遅ければスマホ操作の方が早い | 会話として違和感のない応答速度 |
| 用途 | 「スマホでできる」で終わる | 専用端末だから可能な常時的・文脈的体験 |
| バッテリー | 常時利用するほど電力を消費する | 実用的な駆動時間と端末・クラウド間の処理分担 |
| プライバシー | カメラとマイクが常に身近にある不安 | 分かりやすい状態表示と信頼できるデータ設計 |
| 価格 | AIのためだけに追加端末を買う必要がある | 価格を上回る明確な利用価値 |
| ※Arpable編集部整理。Humaneのサービス終了とHPによる主要資産取得は公式発表・主要報道を参照。 | ||
OpenAIにはChatGPTという強力なソフトウェア基盤があります。そしてJony Iveには、複雑な技術を「触ってみたい製品」へ変えてきた経験があります。
それでも成功は保証されません。
どれほどAIモデルが賢くても、ユーザーに「それならスマホを取り出した方が早い」と思われた瞬間、専用端末を持つ理由は薄れます。
OpenAIに問われているのはAIの知能ではなく、「画面を介さない方が圧倒的に心地よい」と感じさせる体験を作れるかです。
発売日はいつ?価格はいくらになるのか
当初の2026年投入観測は後退し、現在は2027年発売が有力である。価格も300〜400ドル程度のプレミアム帯との報道が出ている。
現行記事では「2026年発売予定」としていましたが、この情報は更新が必要です。
2026年に明らかになった裁判関連資料では、OpenAIの最初のAIハードウェアについて、2027年2月末より前には出荷しない旨の説明が示されました。
その後の報道でも、実際の製品投入時期は概ね2027年とされています。
したがって2026年8月時点では、
「2026年中に何らかの発表が行われる可能性はあるものの、一般消費者が購入できる時期は2027年が有力」
と整理するのが妥当です。
価格は300〜400ドル?
価格についても正式発表はありません。
初期には200〜300ドル程度との観測もありましたが、その後の報道では300〜400ドル程度になる可能性が伝えられています。
仮にこの価格帯になれば、一般的な小型スマートスピーカーと比較してかなり高価です。
OpenAIは「ChatGPTが話せるスピーカー」以上の価値を示さなければなりません。
最大の製品課題は「常に見聞きするAI」を信頼できるか
カメラとマイクで生活文脈を理解するほどAIは便利になる。一方、その能力そのものがプライバシー面の最大の壁になる。
画面なしAIの魅力は、人間が逐一操作しなくても周囲を理解できることです。
しかし、その利便性を実現するには、カメラ、マイク、センサーを生活空間の近くに置く必要があります。
ここに大きな矛盾があります。
何も見聞きしなければ、AIは文脈を理解できない。
しかし、常に見聞きしているように感じれば、人間は安心して置けない。
したがって製品化では、単なるプライバシーポリシーだけでなく、
- いつカメラやマイクが有効なのか
- 何を端末内で処理するのか
- 何をクラウドへ送るのか
- 何を記憶するのか
- ユーザーが削除・停止できるのか
- 周囲にいる第三者のデータをどう扱うのか
といったことを、誰にでも理解できる形で示す必要があります。
AIデバイスでは、プライバシー設計そのものがユーザーインターフェースになるでしょう。
Appleとの訴訟はOpenAIのAIデバイスを止めるのか
2026年7月のApple提訴はハードウェア計画の新たな不確実要因である。ただし現在は係争中であり、Apple側の主張が確定事実になったわけではない。
2026年7月10日、AppleはOpenAIと元Apple社員2名を相手取り、企業秘密の不正利用を主張して米連邦裁判所へ提訴しました。
Appleの訴状はかなり具体的です。
元AppleエンジニアのChang Liu氏が退職後も社内システムへアクセスし、機密ハードウェア文書を取得した疑い、元iPhone/Apple Watch製品設計担当幹部のTang Tan氏がAppleのサプライヤー情報などを利用した疑い、さらにApple独自とする金属表面処理技術がOpenAI側の開発で使われたとの主張まで含まれています。
つまり、単なる「Apple人材が大量にOpenAIへ移った」という人材流出の話ではありません。
ハードウェアの設計・製造に関わる具体的な技術情報そのものが持ち出されたのではないか、というのがApple側の主張です。
一方、OpenAIはこれらの主張に反論し、Appleが保護対象となる企業秘密を十分に特定していないなどとして、訴訟の却下を求めています。
事態は8月に入り、さらに緊迫しました。
Appleは8月3日、企業秘密へのアクセスや利用などを制限する予備的差止命令を求めました。これに対しOpenAI側は直後に訴訟の却下を申し立て、徹底抗戦の姿勢を示しています。
ここで重要なのは、Apple側の主張を確定事実として扱わないことです。
現在は係争中であり、企業秘密の不正利用が司法判断によって確定したわけではありません。
しかし、今後の差止審理の結果次第では、開発資料・人員・技術利用などに制約が及び、製品開発のスケジュールへ影響するリスクがあります。
2026年秋に予定されている審理は、OpenAIハードウェア計画を読むうえで重要なチェックポイントになります。
AppleとOpenAIは「提携相手」から「競争相手」になったのか
両社の関係は、単純な敵対関係ではありません。
AppleはApple Intelligenceの一部としてChatGPTとの連携を導入してきました。Apple IntelligenceについてはApple Intelligenceの技術・機能解説で整理しています。
つまり、AIモデルのレイヤーでは両社は協力関係にあります。
一方でOpenAIが独自ハードウェアを持てば、人間がAIへ最初にアクセスする「入口」を巡って競合する可能性が出てきます。
AIモデルでは協力し、AIへの入口では競争する。
これが、2026年時点のAppleとOpenAIの関係を理解するうえで重要な構図です。
Apple側から見れば、人間とAIの対話がスマートフォンのガラス画面を必ずしも必要としなくなることは、長期的に無視できない変化です。
AppleのAI戦略全体については、Apple IntelligenceがAppleの事業・競争力へ与える影響も参照してください。
「io」の名前はどうなった?iyOとの商標問題
ioは買収した会社の名前として歴史に残るが、OpenAIはAIハードウェアの最終製品ブランドとして別の名称を使う可能性が高い。
もう一つ混同しやすいのが「io」という名前です。
AIオーディオ企業iyOは、OpenAIやio Productsなどを相手取り、名称を巡る商標訴訟を起こしました。
OpenAI側はその後、今後発売するAIハードウェアについて「io」という名称を製品ブランドとして使用しない方向を示しています。
2026年7月には両者が和解へ向けた基本合意に達したと裁判所へ報告しており、詳細な条件は公開されていません。
したがって今後は、
- io Products=Jony Iveらが設立しOpenAIに統合された会社
- OpenAIの新しいAIデバイス=正式名称はまだ未発表
と分けて理解する必要があります。
SweetpeaやGumdropは正式名称なのか
開発コードネームとして「Sweetpea」「Gumdrop」など複数の名称が報じられています。
しかし、イヤホン型、ペン型、現在報じられているスマートスピーカー型との対応関係は、報道によって一致していません。
そのため本記事では、「Sweetpea=ドーナツ型スマートスピーカー」とは断定しません。
正式名称と各開発ラインの関係については、OpenAIによる発表を待つ必要があります。
OpenAIが本当に欲しいのはハードウェアではなく「入口」である
OpenAIの本当の狙いは端末販売だけではない。AIモデルからユーザー体験までを一体設計できる独自プラットフォームを持つことである。
なぜ、ソフトウェア企業であるOpenAIが65億ドル規模の投資をしてまでハードウェアへ進むのでしょうか。
理由の一つは、AIの能力とユーザー体験を同時に設計できることです。
現在、ChatGPTの多くはiPhone、Androidスマートフォン、Windows PC、Mac、Webブラウザなど、他社が設計した環境の上で動いています。
しかし自社ハードウェアを持てば、
- マイクをどう配置するか
- カメラで何を認識するか
- AIがいつ話しかけるか
- 何を記憶するか
- ユーザーへどう意思表示するか
- AIモデルと端末処理をどう分担するか
まで、一つの製品思想として設計できます。
スマートフォン時代にAppleが強かった理由の一つも、ハード、OS、チップ、サービス、ユーザー体験を一体として設計できたことにあります。
OpenAIが本当に欲しいのは「AIスピーカー市場」ではなく、人間とAIが最初に出会う場所そのものだと考えると、この65億ドルの投資の意味が見えてきます。
このAIデバイスをどう捉えるべきか
ドーナツ型という外観に注目しすぎると本質を見失う。注目すべきは「AIがOSやアプリより前面に出る」構造転換である。
OpenAIの新デバイスを「高性能なAlexa」と見ると、本質を捉えにくくなります。
従来のコンピューターでは、まずOSがあり、その上にアプリがあり、ユーザーがアプリを選び操作します。
AIネイティブなデバイスでは、この順序が変わる可能性があります。
人間が目的を話す → AIが状況を理解する → 必要なサービスや機能を選ぶ → 結果だけを返す。
こうなれば、人間が「どのアプリを開くか」を考える機会そのものが減ります。
これはスマートフォンを物理的に消すというより、スマートフォンが担ってきた「デジタル世界への入口」という役割をAIが引き受ける可能性を意味します。
OpenAIとJony Iveの挑戦が重要なのは、このためです。
2027年までに確認すべき5つのポイント
成功を決めるのは外観ではない。用途、応答速度、プライバシー、価格、そして「スマホより楽か」という五つの現実的条件である。
製品が正式発表されたとき、Arpableでは次の5点を確認すべきだと考えています。
- 「何に使う端末か」を一言で説明できるか
単にChatGPT Voiceを別の筐体へ入れただけでは、専用端末を買う理由になりません。 - 人間との会話が十分に速いか
数秒の待ち時間が積み重なるだけでも、日常会話では大きなストレスになります。 - カメラ・マイクの状態が直感的に分かるか
常時型AIでは、プライバシーを設定画面の奥に隠すことはできません。 - 300〜400ドルを払う価値があるか
スマートスピーカーとして見れば高価です。新カテゴリーとして納得できる体験が必要です。 - スマホを取り出すより本当に簡単か
これが最大の判断基準です。
「これならスマホでいい」と思われた瞬間、この製品の存在理由は消えます。
逆に、ユーザーが端末の存在を意識しないままAIの恩恵を受けられるなら、スマートフォン以来のインターフェース転換になる可能性があります。
一次情報からどこまで言えるか
OpenAIが公式に確認しているのはIveとの協業とデバイス事業への進出であり、ドーナツ型・価格・最終仕様などは依然として報道情報である。
| 情報 | 扱い |
|---|---|
| io ProductsチームがOpenAIへ統合 | OpenAI公式確認済み |
| Jony Ive / LoveFromがOpenAIのデザインに深く関与 | OpenAI公式確認済み |
| 複数のAIデバイスを開発 | OpenAI幹部発言・主要報道 |
| 第一弾が画面なしスマートスピーカー | 主要報道 |
| ドーナツ型、可動部品、300〜400ドル程度 | 報道ベース・未確定 |
| Sweetpea等のコードネームと製品の対応 | 未確認。断定しない |
| ※2026年8月16日時点。製品仕様は開発中に変更される可能性がある。 | |
今後、OpenAIによる正式発表が出た場合には、報道情報から確定情報へ順次更新する必要があります。
まとめ:ChatGPTは「アプリ」の外へ出ようとしている
OpenAIとJony Iveの挑戦の本質は新しいガジェットではない。AIと人間をつなぐ次の標準インターフェースを作れるかという実験である。
2025年、OpenAIによるio Products買収は「Jony Iveと何かを作る」というニュースでした。
2026年8月、その「何か」の輪郭がようやく見え始めています。
画面を持たず、持ち運べ、話を聞き、周囲を見て、人間の文脈を理解するAI。
その外観は「ドーナツ型スマートスピーカー」といわれています。
しかし、形は本質ではありません。
iPhoneが電話機にタッチスクリーンを付けただけの製品ではなかったように、OpenAIが目指すものも、ChatGPTをスピーカーに入れただけでは成功しないでしょう。
問われているのは、たった一つのことです。
「AIが十分に賢くなった世界で、私たちは本当に一日中ガラス画面を触り続ける必要があるのか」
もしOpenAIとJony Iveがその問いに納得できる答えを出せれば、ChatGPTは「使うアプリ」から、生活空間に存在する「コンピューター」へ変わります。
逆に、その答えが「スマホでもできる」なら、OpenAIも先行デバイスと同じ壁に突き当たります。
2027年に問われるのは、ドーナツ型のAIデバイスが何台売れるかではありません。私たちが長年触り続けてきた「ガラス画面」の向こう側に、AIが本当に新しいコンピューティングの入口を作れるのか――その答えが、初めて製品として試されます。
専門用語まとめ
- アンビエント・コンピューティング
- コンピューターを意識的に操作するのではなく、センサーやAIが生活環境に溶け込み、必要なとき自然に支援する考え方。
- コンテキストアウェア(文脈認識)
- ユーザーの発言だけでなく、場所、周囲の物、過去の行動などを踏まえてAIが状況を理解する仕組み。
- Family of Devices
- 単一端末ではなく、異なる形の複数デバイスを共通のAI基盤でつなぐOpenAIのハードウェア構想。
- 垂直統合
- AIモデルやソフトウェアだけでなく、ハードウェアやユーザー体験まで同じ企業・陣営で一体設計する戦略。
参考文献 / 出典
一次情報
- OpenAI – A letter from Sam & Jony
- Humane – Ai Pin Consumers FAQ
- HP – HP Accelerates AI Software Investments to Transform the Future of Work
二次情報
- Reuters – OpenAI buys iPhone designer Ive’s hardware startup
- Reuters – OpenAI developing AI devices including smart speaker
- Reuters – OpenAI’s first hardware device will be a speaker
- Reuters – Apple sues OpenAI alleging misappropriation of trade secrets
- Reuters – Apple seeks preliminary injunction against OpenAI
- Reuters – OpenAI asks judge to dismiss Apple’s trade secrets case
- The Verge – Jony Ive’s first OpenAI gadget is reportedly a doughnut-shaped smart speaker
- The Verge – OpenAI president says it’s building a family of devices
- Bloomberg Law – OpenAI, io settle iyO trademark lawsuit following injunction
- TechCrunch – Humane reportedly seeks buyer
- TechCrunch – HP buys Humane assets for $116M
次に読むならこの3本
補足Q&A
Q1.
OpenAIのAIハードウェアはいつ発売されますか?
A1.
2026年8月時点では2027年が有力ですが、正式な発売日はまだ発表されていません。
裁判関連資料では2027年2月末より前には出荷しないとの説明があり、その後の報道でも2027年投入が有力視されています。
Q2.
OpenAIの新デバイスは本当にドーナツ型なのですか?
A2.
主要報道ではドーナツ型の小型スマートスピーカーとされていますが、OpenAIによる正式発表ではありません。
画面なし、バッテリー駆動、カメラやセンサー、動く部品を備えるとの情報もありますが、最終製品では変更される可能性があります。
Q3.
OpenAIは独自スマートフォンを発売するのですか?
A3.
2026年8月時点でOpenAI製スマートフォンは正式発表されていません。
第一弾として有力なのは画面なしスマートスピーカーです。一方、OpenAIは単一製品ではなく複数のAIデバイスを開発しているため、将来的に異なるフォームファクタへ展開する可能性があります。
更新履歴
- 2026年8月16日:2026年最新情報と検索意図を反映し全面改稿。AIデバイスの形状・発売時期、Jony Ive、Humane比較、Apple訴訟、Family of Devicesを追加
- 2025年11月26日:記事内容を更新
- 2025年5月22日:OpenAIによるio Products買収を受け初版公開
