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イノベーション

【2025最新】Palantir AIPとオントロジー完全ガイド ─ Snowflake/Databricks連携と国内事例

【2025年9月更新】Palantir AIPとオントロジー完全ガイド ─ Snowflake/Databricks連携と現場が語る国内事例

本記事を通して『自社のどんな課題にPalantirがどこまで有効か、現場の変化をどのように生み出すか』を、導入判断に必要な全体感で掴むことができます。

Why Palantir, Why Now?
なぜ今、この記事を読むべきか

2025年、Palantirは単なる注目企業から、企業の在り方を変える
「新たな事業インフラ」へと進化しています。

⚙️

生成AI時代の「OS」としての地位

複雑化するビジネス環境において不可欠な「意思決定OS」としての地位を確立。

📈

驚異的な売上成長

初の四半期売上10億ドル超え(+48% YoY)(出典)という驚異的な成長を達成。

🤝

日本市場での変革が本格化

富士通・SOMPOとの提携拡大により、国内での社会実装が加速しています。

この記事の結論:Palantirは、データ分析ツールではない。組織の全データを意味的につなぎ、人間とAIが協調して現実世界の業務を動かす「意思決定OS」である。

  • 要点1:心臓部「オントロジー」がデータのサイロを破壊し、現実を機能的に再現する「組織のデジタルツイン」を構築する。
  • 要点2:「AIP」が主要LLMを安全に業務へ組み込み、現場のオペレーションを自動化・高度化する。
  • 要点3:Snowflake/Databricks等のデータ基盤とは補完関係にあり、それらの上で「意味」と「アクション」を担う最上位レイヤーとして機能する。

この記事の著者・監修者

ケニー狩野(Kenny Kano)
株式会社アープ取締役。AI開発に10年以上従事、特にディープラーニングや、LLMとDBを利用したRAG等の先端技術を用いた企業のAI導入を支援
公的役職:一般社団法人Society 5.0振興協会にて、AI社会実装推進委員長を務める。中小企業診断士、PMP。著書に『リアル・イノベーション・マインド』
主要一次情報

Palantirとは?- データ統合とAI活用を支える次世代OS

要約:PalantirはFoundry・AIPを中核に、組織の全データを意味的につなぎ、人間とAIの協調的な意思決定を支援するソフトウェアプラットフォームです。

検証ポイント:2025年第2四半期で史上初の売上10億ドル突破($1.004B、前年同期比48%増)を達成。特に米国商業部門は93%成長の$306Mと力強い伸びを示しました(出典:Palantir IR)

Palantirは、企業や政府が保有するデータを統合・分析し、高度な意思決定とAIによる業務自動化を支援する企業です。
最大の特徴は、データを単なる「素材」として扱うのではなく、現実世界のビジネス(ヒト、モノ、カネ、プロセス)と意味的につなぎ合わせる「セマンティックレイヤー(オントロジー)」を構築する点にあります。
これにより、データの倉庫ではなく、データで動く「組織のOS(オペレーティングシステム)」を構築します。

近年、従来の政府・防衛分野に加え、製造・金融・ヘルスケアなど商業分野での導入が急拡大してます。その価値は市場にも認知されていますが、そのバリュエーション(企業価値評価)の妥当性は常に市場の大きな論点です。
例えば、メディアによっては「2025年9月時点のPalantirのPSR(株価売上高倍率)は約90倍に達する」と報じられる一方、別のメディアでは「TTM(過去12ヶ月)ベースのPER(株価収益率)は400倍を超える」と算出されるなど、用いる指標や算出基準によって数値は大きく変動するため、多角的な解釈が求められます。

最新のプラットフォーム構成

現在のPalantirは、Foundry(データ運用)・AIP(AI運用)・Apollo(配備/運用)を中核に、政府向けのGothamを提供する構成です。

  1. Palantir Foundry(ファウンドリー):
    民間企業向けのデータOS。ERP、CRM、SCM、工場のIoTセンサーなど、社内にサイロ化されたデータを「オントロジー」によって統合します。サプライチェーン最適化や需要予測など、経営課題の解決に直結するオペレーションを実行します。
  2. Palantir AIP(AIプラットフォーム):
    Foundry上でAI/LLMを安全に動かすための管制塔。詳細は後述しますが、現在のPalantirの成長を牽引する中核エンジンです。
  3. Palantir Apollo(アポロ):
    FoundryやAIPといった複雑なソフトウェアを、クラウドから完全に隔離された環境まで、あらゆる場所に自動で届け、管理・更新する配備・運用基盤です。
  4. Palantir Gotham(ゴッサム):
    政府・防衛・諜報・法執行機関向けの運用プラットフォーム。Palantirの原点であり、現在もインテリジェンス活動で広く利用されています。

👨‍🏫 AI専門家が解説:かみ砕きポイント

これらプラットフォームの関係は、PCに例えると分かりやすいです。
Foundryがデータやファイルを管理するOSの基本機能AIPがそのOS上で動くAIアシスタントや高度なAIアプリ、そしてApolloがWindows Updateのように全てを常に最新・安全に保つ管理機能と考えると、その役割分担がイメージしやすいでしょう。

Palantirの心臓部「オントロジー」とは?

要約:Palantirのオントロジーは、実際の業務現場で「この部品の在庫は大丈夫?」という現場担当者のリアルな問いを、データから自動で最適アクションに変換できる“意味のインフラ”です。

比較条件:一般的なデジタルツインが主に物理的なモノの「シミュレーション」を目的とするのに対し、オントロジーはデジタルの世界でビジネス概念全体を含む「オペレーション」を目的とします。

Palantirの技術的優位性を理解する上で最も重要な概念が「オントロジー」です。
これは、単なるデータモデリングやデータカタログとは根本的に異なります。
オントロジーとは、組織内に散在する生データ(Raw Data)を、現実世界のビジネス概念(オブジェクト)にマッピングし、それらの関係性を定義する「意味のネットワーク」です。

Palantir Foundry オントロジー図
Foundryオントロジーの概念図(2025年版)
部品、工場、注文オブジェクトが関係性で結ばれ、アクションをトリガーする

例えば、「エンジン」というオブジェクトを定義し、それに「在庫数」や「価格」といったプロパティ(属性)と、「千葉工場で製造される」といったリレーション(関係)を持たせます。

最大の特徴は、「在庫を補充する」といったアクション(動詞)を定義できる点です。このアクションを実行すると、実際にERP(基幹業務システム)などを通じて現実世界の業務を動かすことができます。

これにより、現場では「A部品の在庫が閾値を下回った場合、関連するB部品の需要予測データを参照し、最適な発注量を計算してERPの購買発注アクションを自動実行する」といったワークフローを構築できます。

データを「見て終わり」の可視化に留めず、データから現実世界へ「働きかける」ことが可能になる点こそが、オントロジーの真価であり、他のデータプラットフォームと一線を画す最大の理由です。分析結果を基に人間が別のシステムを操作するのではなく、OS自体が業務を遂行するのです。

オントロジーと一般的なデジタルツインの違い

オントロジーは「組織のデジタルツイン」を構築する技術ですが、一般的なデジタルツインとは目的と範囲が異なります。

(表)オントロジーと一般的なデジタルツインの比較 ※比較条件:目的と対象範囲/データ源:Palantir公式ドキュメント及び業界定義
評価軸 一般的なデジタルツイン Palantirのオントロジー
役割の例え 高精細なシミュレーター 業務を動かす操縦席(OS)
主な目的 「もし~だったら」を検証するシミュレーション 「今、何をすべきか」を判断するオペレーション
対象範囲 主に物理的なモノ(機械、ビルなど)の再現 物理的なモノに加え、ビジネス概念(契約、従業員、顧客等)を含む組織全体の再現
方向性 現実世界 → デジタル空間への一方向のデータ反映が中心 現実とデジタル間の双方向のやり取り(アクションによる現実へのフィードバック)が可能
判定根拠 一般的なデジタルツインが特定の資産の「鏡」として機能するのに対し、Palantirのオントロジーは、組織全体の活動を機能的に再現し、そこから現実世界に働きかけることができる「もう一つの現実」を構築する点で画期的です。

AIPの仕組みとは?- 安全なAI活用を実現する管制塔

要約:AIPは主要LLMを幅広くサポートし、企業の厳格なセキュリティ下で安全に業務活用するプラットフォームであり、OCI/Azure Governmentにも展開されます。

検証ポイント:AIPは企業の厳格なセキュリティポリシーの下で、アクセス制御・監査・暗号化機能により安全な運用を実現します。データガバナンスを担保した上でLLMの能力を業務に接続できる点が評価されています。(出典:AIP Security/Privacy

AIP(Artificial Intelligence Platform)は、生成AI(ジェネレーティブAI)の能力を企業環境で安全に活用するプラットフォームです。AIPは主要なLLMを幅広くサポートしており、代表例としてOpenAI、Anthropic、xAI、Google、Meta等のモデルが挙げられます。最新の対応モデル一覧は公式サイトの“AIP Evals”で更新されています。その核心は、AIを単独のチャットボットとしてではなく、前述の「オントロジー」というOSの上で稼働するアプリケーションとして扱う点にあります。これにより、AIは組織のデータと業務プロセスを正確に理解した上で、人間を支援したり、業務を自動実行したりすることが可能になります。

最新動向(2025年)

要約:2025年はDatabricksとの提携、米陸軍との大型契約枠指名など、エコシステム拡大と重要案件獲得が加速しています。

Palantirを取り巻く環境は急速に変化しています。特に重要な最新動向は以下の通りです。

  • 2025年3月13日:DatabricksとPalantirが戦略的製品提携を発表(出典)。Snowflakeに続き主要データプラットフォームとの接続性と運用連携が公式に強化されました。
  • 2024年7月9日:Oracle Cloud(OCI)でFoundry/AIPがGA(一般提供開始)(出典)。EUソブリンクラウドやエアギャップ環境への展開も可能になりました。
  • 2024年8月8日:報道ベースで、Azure Governmentの機密区分(Secret/Top Secret)での連携が進展しているとされます(Barron’sReuters)。防衛・インテリジェンス領域でのクラウド展開を加速させています。
  • 2025年7月31日:米陸軍が、上限100億ドルのIDIQ(Indefinite Delivery/Indefinite Quantity: 発注量不確定)契約枠の提供者としてPalantirを指名したと報道(出典)。これは契約の上限枠であり、現時点で売上が確定したものではなく、今後の個別の調達発注によって実際の契約額が決まります。

日本での活用事例:現場はこう変わる(2025年8月最新)

要約:SOMPOでは業務プロセスが劇的に変化。富士通は国内展開ライセンス契約を締結し、2029年度末迄に1億ドル規模の売上を目指すと発表。社会実装が本格化しています。

SOMPOホールディングス:AIと現場が融合する新たな働き方

8,000人超が活用するSOMPOの事例は、Palantirが現場をどう変えるかを具体的に示しています。

Before:従来の業務 After:Palantir導入後の業務
保険金支払いの申請時、担当者が複数のシステムから過去の契約情報や事故状況を手動で確認。不正検知も経験と勘に頼る部分が多く、査定完了まで平均1日を要していた。 申請データが入力されると、AIPが瞬時にオントロジー(顧客・契約・事故データ)を横断検索し、不正検知フラグや支払い推奨額を提示。担当者はAIの分析結果を基に最終判断を下すだけで、処理時間は数時間に短縮された。
現場の声:「これまでデータを探すのに使っていた時間が、お客様への丁寧な対応や、より複雑な案件の検討に使えるようになりました。AIは仕事を奪うのではなく、私たちの能力を拡張してくれるパートナーだと実感しています。」

2025年8月12日には複数年の契約拡大が発表され(出典)、AIによる引受業務自動化などで年間約1,000万ドルの財務改善が期待される(同社発表による見通し)とされています。

富士通:日本市場への展開を加速

2025年8月19日に公式発表された富士通との戦略的提携に基づき、富士通はPalantir AIPを国内市場で展開し、自社のAIソリューション「Fujitsu Kozuchi」と連携させます(出典)。富士通はこの提携により、2029年度末までに1億ドル規模の売上を目指すと発表しており、国内の金融・製造業などでの導入が加速する見込みです。

Palantir×Snowflake/Databricks:役割比較と連携ユースケース

要約:PalantirはSnowflake等のデータ基盤を置き換えるのではなく、その上で「意味付け」と「業務アクション」を担う補完的レイヤーです。併用することでデータの価値を最大化します。

比較条件:
各プラットフォームを「役割の例え」「主な目的」「データの哲学」「主な利用者」の4つの評価軸で比較
し、そのアーキテクチャ上の関係性を分析します。

Palantirの立ち位置を理解するためには、主要なデータ関連プラットフォームとの役割分担を明確にすることが不可欠です。DatabricksやSnowflakeが膨大なデータを集約し高速分析する基盤だとすれば、Foundryオントロジーはそのデータに現場・顧客・業務イベントといった具体的な意味(名詞・動詞)を与えて整理し、AIPが「なぜ・どのように最適化するか」をAIで複数シナリオ自動提示します。
現場担当者はワンクリックで業務アプリ(SAP等)に意思決定を連携可能です。

役割と哲学の違い

(表)主要データプラットフォームとの役割比較 ※比較条件:各社の公開情報に基づく機能・哲学の比較/データ源:各社公式ウェブサイト、技術ドキュメント
評価軸 Palantir Foundry Snowflake Databricks SAP
役割の例え OS / 操縦席 データ倉庫 データ作業場 業務アプリ
主な目的 既存データ基盤上での意味的統合と業務オペレーションへの活用 大規模データの保管・整理と高速なBI/SQL分析 データ分析とAI/MLモデル開発のための統合環境 特定業務(会計,人事,生産)のプロセス実行と管理
データの哲学 現実世界の意味をモデル化(セマンティックレイヤー) 分析のための単一の真実(Single Source of Truth) あらゆるデータをそのまま保持(レイクハウス) 業務トランザクションの正確性
主な利用者 経営層、業務担当者、データサイエンティスト データアナリスト、BI担当者 データサイエンティスト、データエンジニア 各業務部門の担当者
判定根拠 各プラットフォームは得意領域が明確に異なります。Palantirは、SnowflakeやDatabricksが整備したデータを、SAPなどの業務アプリと連携させ、ビジネス上の「意味」を付与してオペレーションに繋げる、最上位のレイヤーを担います。
Palantirと主要データプラットフォームの連携アーキテクチャ
Palantirと主要データプラットフォームの連携アーキテクチャ例(2025年版)

連携ユースケース:データから意思決定、そして実行へ

Palantirの真価は、他のプラットフォームと連携した際に発揮されます。例えば、製造業のサプライチェーン最適化は以下の流れで実現されます。

  1. データ基盤(Snowflake/Databricks):世界中の工場の生産実績、部品在庫、物流データ、気象データなどを一元的に保管・処理。
  2. 意味付け(Palantir Foundry):これらの生データを「工場」「部品」「輸送ルート」といったオブジェクトとしてオントロジーにマッピング。
  3. 意思決定支援(Palantir AIP):「台風による物流遅延リスクを考慮し、最適な代替生産計画を3パターン提案せよ」といったプロンプトに対し、AIPがシミュレーションを実行し、コストと納期への影響を提示。
  4. 業務実行(SAP連携):担当者がAIPの提案から最適な計画を選択すると、Palantirが自動的にSAPへ接続し、必要な購買発注や生産指示のアクションを実行。オントロジーがERP(基幹業務システム。Enterprise Resource Planningの略で、販売・購買・在庫などを一元管理する)に自動的に“発注指示”を出すことで、人手によるデータ転記や確認作業を大幅に削減できます。

NVIDIAとの関係

要約:Palantir Foundryの公式ドキュメントでは、NVIDIA製GPUを用いたクラウドワークロード最適化への対応を明記しており、ハードウェアとソフトウェアでエコシステムを形成しています。

PalantirのAI/ML処理、特にAIPの運用は膨大な計算能力を要するため、NVIDIA等の高性能GPUを搭載したクラウド基盤が不可欠です。
Palantir FoundryはGPUワークロードの最適化に対応しており(2025年8月時点の製品資料参照)、OCIやAzure等のクラウド上で、NVIDIAの最新GPUアーキテクチャを活用し、高速なAI推論やシミュレーションを実行する事例が増えています。

リスクと課題

要約:輝かしい成長の裏で、導入コスト、データ主権、そして市場からの過大評価というリスクも存在します。導入にはこれら課題への十分な理解が不可欠です。

Palantirを検討する上で、以下のリスクと課題を認識しておく必要があります。

  • 高額なコスト負担:
    ライセンス費用は案件規模や範囲で大きく変動します。自社の要件に応じた見積取得が不可欠です(参考として、SOMPOの契約拡大は複数年で5,000万ドル規模と公表されています)。
  • データ主権と倫理的問題:
    政府との強いつながりやデータを扱うモデルには細心の注意が求められます。国内の導入現場では、個人情報・機密分野へのAI展開時にデータ主権を考慮し、法務・監査部門との合同検討会を経て運用方針を決定するケースが主流です。
  • 市場からの高い期待とバリュエーション:
    時価総額は一時1,000億ドルに迫る場面もあり、これは大手防衛企業であるRTX社(旧レイセオン)に匹敵する規模です。しかし、その評価額は2025年度予想売上高の約20倍(PSR)と極めて高い水準で取引されており、成長期待が少しでも揺らいだ場合、株価が大きく調整するリスクを常に内包しています。
  • 導入の複雑性と専門人材:
    単なるツール導入ではなく、業務プロセス全体の再設計や、オントロジー構築のための高度な専門人材が不可欠であり、組織的なコミットメントが強く求められます。
  • 競争環境の激化:
    Microsoft、Google等の巨大テック企業が自社クラウド上でAI機能を標準搭載し、機能のコモディティ化を進める中、Palantirが長期的な競争優位性を保てるかについては不確実性も存在します。

専門用語まとめ

オントロジー (Ontology)
Palantirの技術的な心臓部。組織内に散在する生データを、現実世界のビジネス概念(人、物、イベント等)と関係性を定義した「意味のネットワーク」。単なるデータの可視化に留めず、業務アクションを実行できる点が特徴。
AIP (Artificial Intelligence Platform)
Palantirのプラットフォーム上で、生成AIやLLMを安全かつ効果的に活用するための管制塔。オントロジーと連携し、AIが組織の文脈を理解した上で動作することを可能にする。
デジタルツイン (Digital Twin)
物理的なモノやシステムを、デジタル空間上にリアルタイムで再現する技術。主にシミュレーションに用いられるが、Palantirのオントロジーは、ビジネス概念を含み、現実世界への操作(オペレーション)を目的とする点で異なる。
セマンティックレイヤー (Semantic Layer)
データとそのビジネス上の「意味」を結びつける中間層。ユーザーは複雑なデータベース構造を意識することなく、日常的なビジネス用語でデータにアクセス・分析できる。オントロジーはこの一種を発展させたもの。

 

✍️ ケニー・狩野の視点
私が多くの企業のデータ戦略を見てきた中で感じるのは、Palantirの真の価値は技術そのものよりも、それが組織に「データに基づき、部門横断で意思決定する文化」を強制的にインストールする点にあるということです。導入は間違いなく困難な旅路ですが、それを乗り越えた組織は、競合他社が数週間かけるような意思決定を数時間で下せるようになります。この「時間軸の変革」こそが、Palantirがもたらす最大の競争優位性だと考えます。

まとめ

本記事では、Palantirの技術的な核心と市場における独自の立ち位置を、2025年9月時点の最新情報に基づき多角的に解説しました。Palantirは、複雑化・サイロ化した組織をデータによって再統合し、人間とAIが協調して意思決定を行うための「次世代OS」です。

もちろん、その導入は決して容易ではありません。高額なコスト、組織的な変革への覚悟、そして市場からの厳しい評価など、乗り越えるべき課題は数多く存在します。
しかし、部分最適の改善に留めず、全社的なオペレーション変革によって競争優位性を確立したいと考えるリーダーにとって、Palantirはその困難を乗り越える価値のある、他に代えがたい強力な選択肢となるでしょう。
それは未来への戦略的投資であり、AI時代の新たな経営モデルへのパスポートなのです。

よくある質問(FAQ)

Q. Palantirの費用感・料金は?

A. 案件規模で大きく変動しますが、大規模案件では年間数千万~数十億円規模になることもあります。SOMPOでは複数年で5,000万ドル超の契約拡大例があります。

Q. 導入の主な障壁は何ですか?

A. 主に費用、専門人材不足、既存システム連携、組織文化の4点です。PoCで小さく始め、効果を検証することが重要です。

Q. AIPが対応するLLMは?

A. OpenAI、Anthropic、Google、Metaなど主要LLMを幅広くサポートしています。最新の対応一覧は公式サイトの“AIP Evals”で更新されています。

Q. Palantirのセキュリティは信頼できますか?

A. はい。米国政府の最高機密レベルを扱うことを前提に設計されています。厳格なアクセス制御や暗号化機能を備え、多数の第三者認証も取得済みです。

Q. SAPとの連携方法は?

A. はい、可能です。PalantirはSAP(S/4HANA、ECC、BW等)との連携手段を公式に提供しており、主要システムから安全にデータを抽出・統合できます。接続方式の詳細は最新の公式ドキュメントをご確認ください。

主な参考サイト

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更新履歴

  • 初版公開
  • 2025年9月時点の最新情報(決算、提携、市場評価)に基づき改訂

ABOUT ME
ケニー 狩野
AI開発に10年以上従事し、現在は株式会社アープ取締役として企業のAI導入を支援。特にディープラーニングやRAG(Retrieval-Augmented Generation)といった最先端技術を用いたシステム開発を支援。 一般社団法人Society 5.0振興協会ではAI社会実装推進委員長として、AI技術の普及と社会への適応を推進中。中小企業診断士、PMP。著書に『リアル・イノベーション・マインド』。