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SO-101 AIロボット制作|模倣学習からSim2Realまで備品・機材を完全整理【2026年】

最終更新:
※本記事は継続的に最新情報へアップデートしています。

SO-101の組み立てを終えた翌日、動作確認しようとしてUSBシリアルアダプタが手元にないことに気づく——これが最初の躓きです。

そして、ようやく接続できたと思ったら、今度はSO-101 Pro版に同梱されていた電源の電流不足で、フォロワーアームがまともに動かない。これが、弊社の実機制作中に判明した二度目の躓きでした。

本記事は、その躓きを事前に回避するための備品整理です。アームと主要部品が揃っている前提で、模倣学習(フェーズ①)からSim2Real(フェーズ②)まで、フェーズ別に必要な備品を目的・用途・注意点つきで整理します。

✅ 先に結論
  • 模倣学習(フェーズ①)の最小追加調達:USBシリアルアダプタ/外部電源/GPU PC/Webカメラ×2/照明×2が核心です。アームとサーボが揃っていても、電源容量が不足するとフォロワーアームは正常に動作しません。
  • SO-101 Pro版は付属電源に注意:弊社検証では、フォロワーアーム側の12V/2A電源では安定動作しない問題が確認されました。Pro版を「そのまま安定動作する完成セット」と考えず、12V系サーボ6台に見合った外部電源・配線・安全部品を別途設計する必要があります。
  • 初期検証では通常SO-101+独自電源も有力:高トルクのPro版を選ぶより、まずは通常SO-101を選び、電源・配線・安全部品を自分で適切に揃える方が、模倣学習の立ち上げではトラブルを抑えやすい場合があります。
  • ラズパイは今フェーズ不要:SO-101はUSBシリアルアダプタでGPU PCに直結して動作します。ラズパイはSim2Real後のエッジデプロイフェーズで検討すれば十分です。
  • 照明は最重要の見落とし備品:環境光が安定しないと学習精度が大きく低下します。固定光源の確保はデモ収集前に完了させます。

この記事の著者・監修者 ケニー狩野(Kenny Kano)

Arpable 編集部(Arpable Tech Team)
株式会社アープに所属するテクノロジーリサーチチーム。人工知能の社会実装をミッションとし、最新の技術動向と実用的なノウハウを発信している。
役職(株)アープ取締役。Society 5.0振興協会・AI社会実装推進委員長。中小企業診断士、PMP。著書『リアル・イノベーション・マインド』 ▶ 詳細はこちら
SO-101実践シリーズにおける本記事の位置づけ

この記事の結論:フェーズ別に備品を分けて考える

模倣学習とSim2Realは必要な備品の性格が大きく異なる。今すぐ動かすフェーズと、将来の拡張フェーズを分けて整理することが、無駄な先行投資を避ける最短ルートである。

SO-101プロジェクトにおける備品調達で最初に判断すべきことは、「いま動かすために何が必要か」と「将来のSim2Realに何が必要か」を混同しないことである。

模倣学習(Behavior Cloning)フェーズでは、実機アームとGPU PCをUSB接続してデモデータを収集する。高価なシミュレーション環境やエッジデバイスは、最初のデモ収集段階では必須ではありません。一方、Sim2RealフェーズではIsaac Lab上で大規模な合成データを生成するため、ストレージ・メモリの要件が桁違いに増える。

本記事では、以下の前提で備品リストを整理する。

  • リーダーアーム・フォロワーアーム:組み立て済み
  • サーボモーター:キャリブレーション・設定済み
  • ラズパイ・Jetson:フェーズ②以降で検討

なぜ備品の整理が学習精度に直結するのか

「とりあえず動いた」状態からでは学習精度は上がらない。照明・固定・カメラ位置という物理的な再現性こそが、模倣学習データの品質を決定する根本要因である。

模倣学習の精度は、アルゴリズムの優劣よりもデモデータの品質に依存する割合が高い。そしてデータ品質を決めるのは以下の3要素である。

  1. 照明の一定性:デモごとに照明が変わると、カメラが捉える色・陰影が変化し、モデルは同一タスクを別タスクとして学習してしまう。
  2. 位置の再現性:アームの設置位置・タスク物体の配置がデモごとにズレると、学習データの一貫性が失われる。方眼シートとクランプはこのための備品である。
  3. 視覚入力の安定性:カメラの固定位置・台数・解像度は全デモを通じて統一する必要がある。

備品の揃え方は、後続の学習工程の成否を左右する。逆に言えば、この3要素さえ押さえれば、アルゴリズムの改良より先に学習精度は上がる。

フェーズ①:模倣学習に必要な備品(今すぐ調達)

アームとサーボが揃っている前提で、模倣学習を開始するために追加で必要な備品を優先度順に整理する。

🔴 最優先:これがないと動かない

⚠️ SO-101 Pro版の付属電源不足に注意

SO-101 Pro版では、同梱電源の電流容量が不足し、フォロワーアームが正常に動作しないケースがある。

弊社で実機検証したところ、SO-101 Proキットのフォロワーアーム側に同梱されていた電源は DC 12V / 2A でした。販売構成によってはリーダー側・フォロワー側で異なる電源が同梱される場合がありますが、少なくとも実際に6台のサーボを駆動するフォロワー側に2A電源を使う構成では、電流容量に注意が必要です。

STS3215は無負荷時でも1台あたり約180mA、ストール時には1台あたり最大2.7A程度の電流を必要とします。6台をデイジーチェーン接続した場合、無負荷だけでも合計約1.1A、負荷が重なれば理論上は最大16.2A近くまで到達し得る計算です。実際の電流値は、タスク内容、姿勢、同時駆動する関節数、動作パターンによって変わります。

そのため、フォロワー側の12V / 2A電源では、複数モーターが同時に動作した瞬間に電源容量が不足し、保護回路が作動して出力が停止するリスクがあります。この構成は、実使用時の電流要求に対して電源容量の余裕が小さく、安定動作を前提にするには注意が必要です。

これは「Pro版が必ず使えない」という意味ではありません。同梱電源のまま安定動作する完成セットだと考えず、12V系サーボ6台に見合った外部電源・配線・安全部品を別途設計する必要がある、というのが弊社の実機制作から得た結論です。

🔌 弊社で検討・購入した電源まわりの構成例

  • LETOUR スイッチング電源:直流安定化電源 12V / 30A / 360W。過負荷・過電圧遮断、安全保護回路、放熱ファン付き。購入ページ
  • サンワサプライ 電源コード:2P・ストレートコネクタ、2m。購入ページ
  • MELODAY AC/DCアダプター延長ケーブル:5.5mm × 2.1mm DCパワーケーブル。購入ページ

※上記は弊社の検討・購入例であり、すべてのSO-101構成での動作を保証するものではありません。12V / 30A級電源を使う場合は、電源本体だけでなく、DCケーブル、コネクタ、端子台、ヒューズ、極性、絶縁、放熱まで含めて安全設計してください。

重要なのは、「12V/30Aを買えば解決」という話ではありません。30A電源は通常時に30Aを押し込む装置ではありませんが、短絡や過負荷時には大きな電流を供給できてしまいます。SO-101 Pro版で外部電源を使う場合は、電源容量だけでなく、線径、コネクタ定格、端子保護、ヒューズ、極性、放熱までを含めて確認してください。

初めてSO-101で模倣学習を始める場合は、Pro版を「そのまま安定動作する完成セット」と考えるより、通常SO-101を選び、電源・配線・安全部品を自分で適切に揃える方が、トラブルを抑えやすい可能性があります。

備品 目的・用途 推奨スペック 推奨型番 価格目安
USBシリアルアダプタ PCとFeetechサーボを接続する通信アダプタ。これがないとアームへの指令送受信が一切できない CH343G / FT232RLチップ搭載、USB-A to TTL Waveshare CH343G USB-UART Board ¥1,500前後
外部電源
(SO-101 Pro版)
STS3215サーボ6台へ安定して12Vを供給するための電源。弊社検証では、フォロワー側付属の12V/2A電源では電流不足による動作不良が発生した DC 12V / 10A以上を目安。余裕を持つ場合は12V / 30A級も選択肢。ただし配線・コネクタ・ヒューズの定格確認が必須 弊社検討例:LETOUR 12V 30A スイッチング電源、またはPSE取得済み12V/10A ACアダプタ ¥2,000〜¥4,000前後
スイッチ付き電源タップ アーム暴走・誤動作時にワンタッチで全電源を遮断する安全装置 個別スイッチ付き・接地3ピン・4〜6口 エレコム T-ST02-2620BK ¥2,500前後
GPU搭載PC デモ録画・モデル学習・推論の中枢。WSL2・仮想環境は検証コストが高いため、本記事では専用Ubuntuマシンを前提とする。最低ラインはRTX 3060クラスでも開始できるが、SO-101で動画ベースの模倣学習を継続運用するなら以下が実務的な推奨値 RTX 4070以上・VRAM 12GB以上・RAM 32GB以上・Ubuntu 22.04(推奨値) RTX 4070 Ti搭載デスクトップ or ノートPC ¥200,000
前後
NVMe SSD デモ動画・モデル・チェックポイントの高速保存。HDDでは学習速度のボトルネックになる PCIe Gen4・読み書き5,000MB/s以上・512GB〜1TB Samsung 990 Pro 1TB ¥15,000
前後

🟡 次に優先:データ収集の品質に直結

備品 目的・用途 推奨スペック 推奨型番 価格目安
Webカメラ × 2台 アーム動作の視覚入力録画。俯瞰1台+正面1台で死角をカバー。LeRobotの標準構成は2台前提 1080p / 30fps以上・USB3.0・自動露出OFF可能 Logicool C920s ¥8,000×2台
カメラスタンド × 2台 カメラを固定位置に安定設置。デモ間のカメラ位置ズレは学習データの一貫性を破壊する 高さ30〜80cm調整可能・クランプ式 Ulanzi MT-08 ¥3,000×2台
セルフパワーUSBハブ カメラ2台+アーム2本をPC同時接続するための分岐装置。バスパワーでは電力不足になる USB3.0・4口以上・ACアダプタ付きセルフパワー Anker A7516 ¥3,500前後
照明ライト × 2台 最重要の見落とし備品。作業エリアの照明を固定し、環境光変化による認識精度の低下を防ぐ。固定光源なしでは高い学習精度は期待できない 色温度調整可能・フリッカーフリー・LEDパネル型 Neewer 660 LEDビデオライト ¥6,000×2台
ポジショニングシート
(方眼紙A3)
アームの設置位置・タスク物体の置き場所をデモごとに統一する基準シート。位置再現性が学習精度に直結する A3サイズ・5mm方眼・厚手(耐久性) コクヨ方眼紙A3 / LeRobot公式PDF印刷版(GitHub配布) ¥500前後
単色背景板 カメラ映像の背景を均一にして物体認識ノイズを排除する。白または黒の単色が推奨 A1〜A2サイズ・白または黒・非反射素材 ケント紙A1(白)/ 布製撮影バックグラウンド(黒) ¥500前後

🟢 運用・保守

備品 目的・用途 推奨スペック 推奨型番 価格目安
予備サーボ(STS3215)
× 3個
デモ収集中のサーボ故障に備えたストック。破損時に即交換して作業継続するため。※交換後は再キャリブレーション必要 Feetech STS3215純正 Feetech STS3215(秋月電子等で入手) ¥3,000×3個
強力クランプ × 2個 アームを作業台にガッチリ固定する。クランプなしでは振動がデータに混入する 開口50mm以上・金属製 秋月電子 [105315] ¥500×2個
タスク用小物
(複数セット)
ロボットに学習させるタスクの対象物。破損・紛失時の継続性確保と同一条件での複数デモ収集のため 作業内容に合わせた形状・重量 LEGOデュプロブロック(初期検証に最適) ¥2,000前後
有線LANケーブル HuggingFace Hubへの大容量データ・モデルのアップロード用。数GB〜数十GBになるためWi-Fiより安定した有線接続が必要 Cat6以上・3〜5m エレコム LD-GPT/BU30(Cat6) ¥800前後
結束バンド・ケーブルクリップ 複数ケーブルを整理・固定し、アーム動作への干渉を防ぐ マジックテープ式・再利用可能 VELCRO ワンラップ ¥1,000前後
養生テープ 作業台へのポジショニングマーキング補助、カメラスタンド・背景板の仮固定 弱粘着・幅15〜25mm・カラー複数色 ニトムズ J3000 ¥500前後

💻 ソフトウェア・アカウント(無償)

項目 目的・用途 推奨バージョン 入手先
Ubuntu LeRobot公式サポートOS。CUDA・ドライバの安定動作に必要。WSL2・仮想環境は非推奨 22.04 LTS ubuntu.com
LeRobot デモ収集・模倣学習・推論を一貫して行うHuggingFace製メインフレームワーク 最新版(GitHub) github.com/huggingface/lerobot
HuggingFace Hubアカウント 収集したデータセット・学習済みモデルのクラウド保存・バージョン管理 無料プランで可 huggingface.co
Git / GitHub コード・設定ファイルのバージョン管理。チーム間での設定共有にも使用 Git 2.x以上 git-scm.com
CUDAドライバ GPU学習・推論に必須のNVIDIA公式ドライバ CUDA 12.x developer.nvidia.com

💰 フェーズ①の追加調達コスト概算

  • PC除く追加調達:6〜9万円前後(カメラ・照明・外部電源・電源コード・保守小物)
  • GPU PC(RTX 4070 Ti):¥200,000前後
  • カメラ・照明・スタンド周辺:¥35,000前後
  • USBシリアル・外部電源・電源コード・延長ケーブル・ハブ類:¥12,000〜18,000前後
  • 保守・小物類:¥15,000前後
  • 合計目安:26〜33万円前後(PC込み)

この構成で、SO-101による最初の模倣学習デモまで最短1〜2週間の立ち上げが現実的なラインになる。

フェーズ②:Sim2Realに必要な追加備品(模倣学習が安定してから)

Isaac Labを使ったSim2Realフェーズでは、合成データ生成・並列学習・エッジデプロイに備え、ハードウェアとソフトウェアの両面で増強が必要になる。

⚠️ フェーズ②はフェーズ①が安定してから着手すること。Sim2Realの成功はフェーズ①で蓄積した実機デモデータの質が前提となる。

🔴 ハードウェア追加・増強

備品 目的・用途 推奨スペック 推奨型番 価格目安
GPUアップグレード Isaac Labの大規模並列学習を回すためのGPU増強。RTX 4070クラスでも試行はできるが、本格運用ではVRAMが限界になるケースが多い RTX 4080以上・VRAM 16GB以上を目安 RTX 5080搭載PC or GPU単体換装 ¥150,000〜250,000
RAM増設(64GB推奨) ROS2複数ノード+物理シミュレーション同時実行。32GBでも検証は可能だが、タスクが重くなるとFPS低下やメモリ不足が起きやすい DDR5・64GB(32GB×2) Crucial DDR5 64GB Kit ¥25,000前後
SSD増設(2TB以上) Isaac Labでフォトリアリスティックな環境を作り、マルチビュー画像・深度・マスクまで含めて合成すると、1シーンあたりのデータ量は実写より簡単に1桁増えます。Omniverseのアセットとシミュレーションログだけで数百GB、タスクバリエーションを増やすと合成データは1〜3TB規模に膨らむことも珍しくありません。そのため2TB SSDは「最初から埋まる前提の作業領域」として確保しておき、あとから増設するよりトータルコストとダウンタイムを抑える設計をおすすめします。 PCIe Gen4・NVMe・2TB以上・読み書き5,000MB/s以上 Samsung 990 Pro 2TB ¥25,000前後
Raspberry Pi 5
(8GB版)
学習済みモデルをロボットに搭載してエッジ推論・自律動作させるためのオンボードコンピュータ。フェーズ①では不要 8GB版必須(4GB版はAI推論とロギングの同時実行でメモリ不足になる) 秋月電子 [130282] ¥25,190前後
Pi 5用電源アダプタ(27W) Raspberry Pi 5への安定給電。5V/5A供給が必須。標準的なUSB充電器では動作不安定になる 27W・USB-C・5V/5A 秋月電子 [118451] ¥2,310前後
Raspberry Piカメラモジュール V3 ロボット本体に搭載するCSI接続カメラ。エッジ推論・自律動作フェーズで使用。Webカメラとは別に用意する Pi Camera Module V3・CSI接続 秋月電子 [OBTS42](またはエレショップ) ¥5,940前後
Jetson Orin Nano Super
(将来)
ラズパイでは処理しきれない高度なAIモデルの推論エンジン。Sim2Realで育てた上位モデルを実機デプロイする際のアップグレード先 8GB・デベロッパーキット Jetson Orin Nano Super Dev Kit ¥52,800前後

💻 ソフトウェア追加(無償)

項目 目的・用途 推奨バージョン 入手先・備考
Ubuntu 22.04 LTS Isaac Sim 5.x系はUbuntu 22.04を正式サポートの中心に据えています。Ubuntu 24.04については、Isaac Labや周辺ライブラリの対応状況を確認しながら慎重に選ぶ必要があります。SO-101のSim2Real実験では、まずUbuntu 22.04を安定推奨とします。 22.04 LTS(安定推奨) ubuntu.com
Isaac Sim 5.1系 NVIDIA Omniverse上で動くロボット向け3Dシミュレータ本体。高精度な物理演算・センサーシミュレーションを担当 5.1系(pip導入)※6.0はGA版未公開のため現時点では5.1推奨 pypi.nvidia.com(pipインストール)
Isaac Lab Isaac Sim上で強化学習・模倣学習を行う学習フレームワーク。SO-101のデジタルツインを並列で大量学習させる 最新版 github.com/isaac-sim/IsaacLab
Python 3.11仮想環境 Isaac Sim 5.x系の動作要件に合わせるための仮想環境。Isaac Labのバージョンにより要件が変わるため、公式手順を確認する 3.11推奨(Isaac Sim 5.x系に合わせる) python.org
ROS 2 複数センサー・ノードの非同期通信制御。Sim2Realでの実機連携に使用 Humble / Jazzy ros.org
URDFデータ(SO-101) Isaac Sim上でSO-101のデジタルツインを構築するための実機物理モデル定義ファイル SO-101公式URDF HuggingFace / GitHubで取得

💰 フェーズ②の追加調達コスト概算

  • GPU増強(RTX 5080):¥150,000〜250,000
  • RAM増設(64GB):¥25,000前後
  • SSD増設(2TB):¥25,000前後
  • Raspberry Pi 5(8GB)+電源+カメラ:¥33,000前後
  • Jetson Orin Nano Super(将来):¥52,800前後
  • 合計目安(Jetson除く):25〜35万円前後

全備品チェックリスト:フェーズ別サマリー

模倣学習スタートからSim2Real完遂まで、全備品を2フェーズで整理したサマリーである。調達前のチェックリストとして活用できる。

【フェーズ①:模倣学習】今すぐ調達

▼ 最優先(動作に必須)
□ USBシリアルアダプタ(Waveshare CH343G)
□ 外部電源 DC12V / 10A以上(SO-101 Pro版はフォロワー側12V/2A電源の容量不足に注意)
□ 電源コード・DC延長ケーブル(線径・コネクタ定格・極性を確認)
□ 必要に応じてヒューズ・端子台・絶縁カバーを用意
□ スイッチ付き電源タップ(エレコム T-ST02)
□ GPU搭載PC(RTX 4070クラス以上・RAM 32GB・Ubuntu 22.04)
□ NVMe SSD 1TB(Samsung 990 Pro)

▼ データ収集品質
□ Webカメラ × 2台(Logicool C920s)
□ カメラスタンド × 2台(Ulanzi MT-08)
□ セルフパワーUSBハブ(Anker A7516)
□ 照明ライト × 2台(Neewer 660 LED)★見落とし注意
□ ポジショニングシート A3方眼紙
□ 単色背景板(白または黒)

▼ 運用・保守
□ 予備サーボ STS3215 × 3個
□ 強力クランプ × 2個
□ タスク用小物(複数セット)
□ 有線LANケーブル Cat6
□ 結束バンド・ケーブルクリップ
□ 養生テープ

▼ ソフトウェア(無償)
□ Ubuntu 22.04 LTS
□ LeRobot(HuggingFace)
□ HuggingFace Hubアカウント
□ Git / GitHub
□ CUDAドライバ 12.x

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【フェーズ②:Sim2Real】模倣学習安定後に着手

▼ ハードウェア追加・増強
□ GPU増強(RTX 4080 / 5080・VRAM 16GB以上)
□ RAM増設 64GB(DDR5)
□ SSD増設 2TB以上(Samsung 990 Pro 2TB)★Isaac Lab必須
□ Raspberry Pi 5(8GB版)
□ Pi 5用電源アダプタ(27W)
□ Raspberry Piカメラモジュール V3
□ Jetson Orin Nano Super(将来フェーズ)

▼ ソフトウェア追加(無償)
□ Ubuntu 22.04 LTS(Isaac Lab運用では22.04を安定推奨。24.04は環境要件を確認して選択)
□ Isaac Sim 5.1系(pip経由)
□ Isaac Lab(GitHub)
□ Python 3.11仮想環境(3.10・3.12は非対応)
□ ROS 2(Humble / Jazzy)
□ SO-101 URDFデータ

まとめ:備品の揃え方が学習成果を決める

模倣学習の成否は、アルゴリズムの選択よりも物理的な実験環境の再現性に大きく左右されます。備品リストは「消耗品の調達表」ではなく「実験精度の設計書」です。

SO-101プロジェクトで何度も痛感したのは、「アルゴリズムを変える前に、環境を変えよ」という単純な事実でした。今回、弊社の実機制作では、SO-101 Pro版のフォロワー側に同梱されていた12V/2A電源ではアームの動作が安定しないという重要な知見も得られました。

模倣学習の成否は、華やかなモデル名よりも、どれだけ同じ条件でデモを取り続けられるかに左右されます。だからこの備品リストは、単なる買い物リストではなく、SO-101の学習精度を決める実験設計書として書いています。

本記事で整理した備品は、以下の三つの判断基準に基づいています。

  1. フェーズを混同しない:模倣学習フェーズとSim2Realフェーズでは必要なものが根本的に異なります。今すぐ必要ではないものへの先行投資は避けます。
  2. 物理的な再現性を最優先にする照明・固定・カメラ位置の3要素が学習データの品質を決定します。これらへの投資はアルゴリズム改善より先に行います。
  3. Sim2Realはストレージが命:Isaac Labの合成データ生成は実写収録と桁違いのデータ量になります。SSD 2TB以上をフェーズ②開始前に確保しておくことは、後から増設するよりも安全で実務的な選択です。

まずはフェーズ①の備品を揃え、50〜100エピソードのデモ収集と最初の学習サイクルを完了させるところまでを、チームの最初のマイルストーンに置いてみてください。電源容量を見直した翌日、ロボットアームが初めて滑らかに動く——その瞬間のために、この備品リストを書いています。

参考文献 / 出典

よくある質問(FAQ)

Q. SO-101 Pro版は付属電源のまま使えますか?

A. 弊社の実機検証では、フォロワーアーム側の12V/2A電源では動作が安定しませんでした。

SO-101 Pro版のフォロワーアームには、12V系のFeetech STS3215サーボが6台搭載されています。無負荷でも合計約1.1Aを消費し、負荷が重なると理論上は最大16.2A近くまで到達し得ます。実際の電流値はタスクや動作パターンに依存しますが、2A電源では余裕が小さい構成です。

そのため、SO-101 Pro版ではサーボ仕様に見合った12V外部電源を別途検討することをおすすめします。ただし、大容量電源を使う場合は、電源本体だけでなく、ケーブル、コネクタ、端子台、ヒューズ、極性、放熱まで含めて安全に設計してください。

Q. ラズパイはフェーズ①から必要ですか?

A. 不要です。

SO-101はUSBシリアルアダプタでGPU PCに直結して動作します。ラズパイはSim2Real完了後、学習済みモデルをロボットにオンボード搭載して自律動作させるフェーズで検討すれば十分です。

Q. Webカメラは1台でも始められますか?

A. 1台でも開始できますが、本記事では2台構成を推奨します。

俯瞰1台+正面1台にすると死角を減らせます。1台構成は初期検証としては現実的ですが、タスクが少し複雑になると撮り直しやコード調整が必要になる可能性があります。

Q. SSDは最低何GBあれば模倣学習を始められますか?

A. フェーズ①の模倣学習のみであれば512GB〜1TBが現実的な最小構成です。

256GBでも開始は可能ですが、デモ数が増えると不足します。Isaac Labを使うフェーズ②まで見据えるなら、2TB以上を早めに確保する方が安全です。

Q. Isaac LabにはUbuntu 22.04と24.04のどちらが必要ですか?

A. SO-101のSim2Real実験では、まずUbuntu 22.04を安定推奨とします。

Isaac Sim 5.x系はUbuntu 22.04を正式サポートの中心に据えています。Ubuntu 24.04については、Isaac Labや周辺ライブラリの対応状況を確認しながら慎重に選ぶ必要があります。既に22.04環境を構築済みであれば、そのまま継続する方がトラブルを減らしやすいです。

Q. 照明はどんなものでも良いですか?

A. フリッカーフリーかつ色温度が固定または調整可能なLEDパネル型を推奨します。

蛍光灯・デスクライト・窓からの自然光は環境光の変化が大きく、デモごとに画像の色調が変わりやすくなります。撮影用LEDを2台固定配置することが効果的です。

更新履歴

  • 2026年6月15日:SO-101 Pro版の付属電源不足に関する弊社実機検証結果、外部電源の考え方、FAQ、内部リンクを追加。
  • 2026年5月28日:初稿公開。
ABOUT ME
ケニー 狩野
ケニー狩野(Kenny Kano)は、AI社会実装・技術経営・ITコンサルティングを専門とする経営者・監修者。株式会社ベーネテック代表、株式会社アープ取締役、一般社団法人Society 5.0振興協会 AI社会実装推進委員長。早稲田大学大学院理工学研究科修了後、キヤノンで国内外の開発や中国・インド・オーストラリアを含むオフショア案件を牽引。独立後はAI社会実装支援に従事し、Arpableで人工知能・先端技術分野の記事を約2年間で約300本監修。中小企業診断士、PMP、ITコーディネータ。著書『リアル・イノベーション・マインド』。実務と経営を橋渡しする。